先週、米国債マーケットでは、長期、超長期を中心に利回りが大きく下がり、リセッションの前触れとされてきた2年~10年金利差逆転現象がついに起き、超長期の30年債は過去最低水準の1.97%台という2%割れを更新しました。
下がり続けてきた債券利回りが、さらに下がったのは、中国の経済指標が悪かったのがきっかけではありますが、市場の基調は今年に入ってからずっと強気(債券買い)続きでした。
この日は、特に、2年VS10年が逆イールドを示現したことで、市場はリスクオフの流れに。
以前、このコラムでも記したと思いますが、2年VS10年利回りの格差が、2年高10年低になると、約16.8カ月後にリセッションになることと多いと言われてきました。
昨年の秋から冬にかけての株式下落の背景にも長短金利逆転が言われ、3カ月物VS5年、10年金利等の逆転は、しばしば起こってきました。
2年VS10年逆転は、2006年中旬、2000年前期、1989年中旬、また、それ以前にも見られたことがありました。殆どのケースで、債券市場が先行きの景気に対して警鐘を鳴らしていたと理解できることが多かったようにも記憶しています。
先週14日に、逆転現象が見られた2年VS10年利回り格差は、その後は順イールドに戻り、ほぼ0.05%程度の格差での推移していますが、これまでの平均的な格差と比べ、かなり縮小状態ではあります。
債券市場では、米国のみならず、世界的に長期、超長期の利回りの低下が続き、債券バブル?とも思える昨今。逆転現象は、短期金利下げ催促がありつつも、経済指標等の現状から大幅な利下げの根拠がないことにより短期金利高止まりが原因なのか、長期金利が過剰に先行きに悲観的過ぎるのか。今後、FRBは早急に大幅な利下げに走るのか。債券市場、FRBの動向に関心が集まります。
そんな中で、本日21日にはFRBが利下げを決定した7月のFOMCの議事録公表、また23日には恒例のジャクソンホールでのパウエル議長の講演が予定されています。特に、23日の講演で、パウエル議長から、どのようなメッセージが送られ、市場はどう解釈して動くのか、一番の注目材料です。
因みに、9月のFOMCでの利下げに対する直近の市場予想では88%程度が0.25%、0.5%の利下げも12%。FRB政策金利のフォワードレートは、来年の今頃は1%程度となっています。
米国以外でも、景気後退が懸念されているドイツの10年国債利回りもマイナス0.7%程度まで下落。ユーロ圏主要国で10年債が1%以上なのは、イタリア、ギリシャくらい。財政支出にも動くか?とも言われる注目のドイツの直近のPMI速報は22日に発表され、数字次第では更なる金利低下が進む可能性があります。
債券利回り低下といえば、欧州でオーストリアの100年債利回りが1.2%というのが報じられ話題になっています。
世界的な長・超長期金利水準も人類未踏の領域に入ってきた感があり、もし、これがバブルとして崩れた場合、何が起こるのか。債券市場の声に、よく耳を傾けておきたいところです。
最後になってしまいましたが、為替相場です。
8月に入ってからの主要通貨の対ドル相場動向は、リスクオフ時の日本円、スイスフラン買い、その他、一部欧州通貨が上昇しましたが、どれも大きな上昇にはならず、準主要通貨や新興国通貨の多くが対米ドルで下げました。
米ドルの対バスケット通貨相場である、ドル指数は基本的にレンジ内で各種移動平均の上に位置しています。
ドル円相場は、105円を大きく割らずといって、107円から上へ行くには力不足を感じさせる相場です。9月に行われる日米欧の金融政策決定への思惑、米中貿易協議などの材料を見ながらになりそうです。
為替相場で、最も話題になったのは、何といっても、人民元の7.00割れ元安です。
米中貿易問題が浮上して以来、元安は進んでは来ていましたが、大きな節目と見られてきた7.00の突破には驚きでした。米中貿易問題が続く限り、市場期待によるオフショアでの人民元安センチメントは続くと思われます。
ただ、一方で、米中貿易では中国の貿易黒字は巨額であり、その需給でみればドル売り元買いが発生しますので、ここから一方的に大きく人民元安が急速に進んでいくとも思いにくく、9月から再開される米中の貿易協議の動向を注視していく必要があると思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※8月21日東京時間15時執筆
本号の情報は8月21日東京市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)