JUGEMテーマ:株・投資
※このコラムは、2005年9月13日に掲載されたものです。
■原則その1 投資タイミングについて
■本決算短信の表紙からわかること
★本決算の短信
~決算期末日から1-2ヵ月後に、本決算の短信がリリースされます。
本決算の短信には、通期の業績動向が記載されています。短信のリリースは、決算発表日と呼ばれています。本決算の発表日は、投資家が1年で最も注目している日です。
短信のリリースが、あらゆる決算情報の中で最も迅速です。情報の正確性や量は、有価証券報告書が短信に勝ります。有価証券報告書は監査法人の監査を通っているために、リリースが短信よりも1-2ヶ月遅れてしまいます。速報性の高い短信をベースに投資家は売買判断を施し、その後の有価証券報告書をじっくりと分析することによって、投資判断の是非を確かめるというのが一般的なファンダメンタルズ投資の流れです。
特に本決算の短信の表紙は、会社予想の業績見通しが記載されており、投資家の注目が集まる最重要ページなのです。
企業が決算を発表するのは年に4回あります。その4回の発表の中で最も重要な決算が本決算です。日本企業には3月決算が多いのですが、3月決算の場合、決算発表シーズンは4月の下旬~5月の末日までの間です。
さて、本決算とは一年間の業績を振り返るものです。テレビ番組でも年末になると今年を振り返る特集が数多く放映されます。決算も3ヶ月ごとに四半期決算が発表されますが、本決算に比べると四半期決算は簡易的なものです。
12ヶ月の業績を振り返る本決算こそが企業にとっての一大イベントなのです。なぜ本決算が重要かといえば、それは、本決算は、わたしたち投資家に、売買タイミングの材料を四半期決算よりも沢山提供してくれるからです。
本決算では、過去の業績を踏まえたうえで、今年の業績の見通しが企業側から発表されます。近年は予想を発表しない企業もありますが、その場合も、なんらかの業績の見通しに対するガイダンスやヒントが、企業トップから、あるいはIRから発信されます。
決算発表には決算短信という便利なものが発行されます。決算短信は20枚程度の決算の概況ですが、表紙に最重要の情報が満載されています。表紙1枚を見るだけで、投資家は随分と助かるのです。
本決算短信の表紙から、投資タイミングがわかります。
★短信表紙と売買タイミング
短信表紙から売買タイミングの評価に用いる情報は以下の通りです。
(1)前期経常利益の額
(2)前期の経常利益の増益率(前期比の利益成長率、利益の伸び率)
(3)今期(本決算)の経常利益の会社予想
増益率とは、利益の伸び率のことをいいます。利益には3つの種類があり、それぞれ営業利益、経常利益、純利益があります。株価にとっては営業利益が大切な指標ですが、残念ながら会社側は、営業利益の予想を短信では公表しません。経常利益の予想は発表されます。そこで、経常利益の伸び、つまり経常増益率に注目することにしました。
ここでみなさんに独自に算出していただかなくてはならない数値があります。
短信では、今期の経常利益の増益率は自分で算出する必要があるのです。
さっそく、経常増益率を算出してみましょう。
今期の会社計画の経常増益率=[今期(本決算)の経常利益の会社予想÷前期の経常利益-1]×100(%)
となります。
たとえば、前期100億円の経常利益。今期の会社予想が120億円であれば、
今期の会社計画の経常増益率=[今期(本決算)の経常利益の会社予想120億円÷前期の経常利益100億円-1]×100(%)=増益率20%
となります。
★増収と増益
株価動向を説明するのは最大の要因は、増収率ではなく増益率です。
増収は売上げの伸びです。増収率は売上げの成長率のことです。たしかに、増収率も重要な要素のひとつですが、どちらかといえば、増益率の方が株価動向にとっては、インパクトがあるのです。
企業の仕事は稼ぐことにあります。稼いでこそ、株主への還元もあるのです。
ですから、増収率は参考程度にとどめて、増益率を基準に投資のタイミングを計ることが肝心です。
純利益ベースの増益率も大切な要素ですが、一時的な特別損益の影響を受けやすいのが難点です。その点、経常利益ベースの増益率は、企業の経常的な経済活動を反映しているため、株価への説明力が高いのです。
★売買タイミングの判断の基になるのは、「増益率の変化の度合い」
増益率の変化の大きさでサプライズの強さが決まります。
増益率の絶対水準ではなく、増益率の変化というところがミソなのです。
増益の逆は何でしょうか。減益です。利益が前の年に比べて減ることを減益といいますが、同様に、利益の減る具合、利益が減った割合を減益率といいます。
減益率20%といったり、2割減益といったりします。経常利益が100億円の企業が2割減益になったとすれば、経常利益は80億円に減少したという意味です。
株価を動かすサプライズは、利益の変化率の大きさです。
たとえば、毎年30%程度の増益率を達成している企業があるとしましょう。
その企業が、今年も30%の増益率を予定しているなら、サプライズはありません。市場参加者からみれば、この企業の30%増益は、いつものことね、となるからです。
しかし、前期まで数年連続して減益を記録してきた企業が、今年数年ぶりに20%の増益率を予定することが判明したとすれば、それはサプライズとなりえます。市場はこの企業のことを衰退企業だと断じていたかもしれません。衰退企業というレッテルを貼られている企業の株価は低迷しているはずです。ただでさえ、安値で放置されていますから、少しのよいニュースでも株価は上昇するのです。
(山本潤)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)