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セラミックス:日本が誇る職人芸の世界7
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セラミックス:日本が誇る職人芸の世界7

2020-06-17 00:15



    【コージェライトDPF、大型ハニカム】


     ガソリンエンジン用に5億個以上の実績を背景に日本ガイシがコージェライトでもDPFに参入してきた。
     特徴は低熱膨張、耐熱衝撃性でSiCの様に分割して製造し接着する必要がない代わりに、SiCと同様に片側の穴の目封じが必要だ。焼成温度は1200~1300度CとSiCより低く、コージェライトは低コストで製造可能。 DPF市場拡大見込みに加え、ガソリンエンジンでのパティキュレートフィルター搭載が視野に入ってきた(5年以上前のレポートですので、当時GPFは量産されていません)。


     燃費を稼ぐために圧縮比を上昇させるとノッキングが生じやすくなることを記載したが、これを防ぐ方法としてシリンダー内に燃料を噴射する直接燃料噴射方式(一般に直噴という)が増加している。
     吸気・圧縮・爆発・排気の4工程からなるピストンエンジンは排気後に空気とガソリンの混合気を吸引し圧縮させるが、直噴では空気のみを吸引し、圧縮後に直接燃料を噴射する。燃料は高圧にしているものの冷たく、シリンダーに直接噴射することで気化熱がシリンダー内の熱を奪うことでノッキングを防止する効果を狙っている。
     つまり通常の吸気管に燃料を噴射するポート噴射に比べ圧縮比を高く設定することが可能で、直噴では高圧縮比、熱効率向上、低燃費が得られる。しかしながら世の中の科学・自然現象に於いては必ずメリットの反対側としてデメリットがある。

     それがパティキュレートだ。
     ポート噴射では吸気管に燃料を吹くため吸気管からシリンダー、そしてシリンダー内でのピストンの上下運動を経て、点火プラグで着火するまでの距離や時間が長いため燃料と空気が一様に混ざる確率が高い。
     しかし直噴ではピストンの圧縮工程で点火プラグに着火する直前の短い時間内に燃料を吹くため空気と一様に混ざるとは言えない。そこで燃料を高圧にして噴射したり、ピエゾにしたり、噴射穴を細かく加工したりと工夫がされている。

     高燃費を狙う設計からピストン径は短く、ストロークは長めの所謂ロングストローク型が主流になった。また小排気量エンジンではピストン直径が短いため、噴射した際にシリンダー内壁に燃料が付着することで未燃焼となってしまうことがある。
     おまけにダウンサイジングと称して排気量を下げながらターボを搭載。エンジンを熱から守るために本来必要とされる以上の燃料を噴射することで、排気バルブや温度センサーを保護する燃料冷却が行われている。

     こうしたことからポート階射に比べ直噴、特にターボ搭載エンジンはパティキュレートの排出個数が多いのが実情だ。


     つまりPM2.5と言う言葉が一般的になった。
     目に見えないパティキュレートが相当浮遊しているということだ。
     目に見えるパティキュレートは空中での浮遊時間が短く、一度路面に落ちると再浮遊は少なく、仮に人が吸引したとしても鼻や喉の粘膜に留まる。
     しかしながらPM2.5以下だと鼻や喉を通り抜けて肺の奥まで吸引され、そのパティキュレートは長期間肺中に留まってしまう。目で見える粒子は確実に減ったが、見えない粒子は増加した訳だ。


     日本は森林保護で杉を植林したため遥々日光から東京まで花粉がやってくる。
     ちなみに原発事故ではチェルノブイリから日本までセシウムが風に乗って到来したとアイソトープ(放射性同位元素)技術者から聞いており、花粉が良く飛ぶのも頷ける。

     しかし花粉発生は今に始まったことではないが、最近ではアレルギー性鼻炎や花粉症患者が急増している。
     杉を植林した時点での年度での本数を調べると、1960年代以降に花粉を多く発生させる樹齢30年以上の杉林が多くなったからとの報告がなされているが、花粉を吸引しても直ぐ発症する訳ではなく、ストレス反応は環境汚染物質が何らかの要因となっている可能性について各研究機関から報告が相次いでいる。


     数年前にVWによる違法プログラムによる実走行時のNOx問題が大きく報じられたが、直噴ガソリンエンジンのパティキュレート問題は相当前から技術者なら容易にわかっていたことであり、2013年12月には国立環境研究所から直噴ガソリンエンジンのPMが異常に多いことが発表されている。
     欧州1社、日系1社の直噴ガソリンエンジンとポート噴射の1台、合計3台を比較したものである。内容は以下の通りだ。

     なお当該車両については直噴が2011年式、ポート噴射は2007年式と公表しており、ポート噴射車両は不明だが、直噴はVWとマツダのスカイアクティブであることが容易に理解されている。

    [測定方法]

     国立環境研究所内の施設に於いて、都市内を加減速を模擬として公のモードであるJC08モードでテストし、以下を計測排出される微粒子の個数と粒径分布、粒子重量の測定、化学組成(炭素成分、元素、イオン、有機成分)、国産直噴エンジンについては粒子径別に捕囚と組成分布。

    [結果]

     ポート噴射に対して国産直噴エンジンの粒子個数は10倍以上欧州直噴エンジンは国産直噴に比べ粒子個数は約5倍でポート噴射の50倍以上であった。
     欧州直噴エンジンは2017年に規制される欧州規制を上回り、2014年に規制される数値付近の数値。
     但し、どのエンジンもディーゼルで問題となった30nm付近のナノ粒子の排出は少なかった。

     粒子の主成分は炭素つまりススであり、ポート噴射では粒子重量の約7割、国産直噴で約8割、欧州直噴では約9割を占めている。
     有機炭素(炭化水素)や炭化元素に対して含有する潤滑油の比は10~30%であり、大半がガソリンの未燃焼、燃焼生成物、熱分解物質ということになる。


    (イノベーションリサーチ 山田順一)


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)
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