皆様こんにちは、投資家Sと申します。
 2021年1月から億の近道 火曜版に「投資家Sの今週の注目銘柄」を掲載頂いております。

 本連載は、創業(1964年)半世紀を超える投資日報社が、毎週月曜・木曜に発行を行っております、”投資日報 α”(月曜版)に掲載しております。


 先週迄で2月・8月決算企業の決算発表がほぼ終了しました。
 この時期の決算発表は小売り企業が多いのが特徴ですが、今期見通しにかなりの差が出ております。
 筆者は、前年度は外出自粛による特需に沸いた、食品スーパー株に注目しております。今期は減益予想の会社が多いですが、日本のダラダラと続くコロナ対策を見る限りでは、アフターコロナは遅れて、案外ともう1年くらい好業績が続くのではと思っております。7月以降に発表される決算に注目です。

 今回は、2021年4月中旬までに掲載を行った、2銘柄についてご紹介させて頂きます。


■ビーグリー【3981】



 電子コミックの配信サービス「まんが王国」の運営を手掛けるビーグリー【3981】は、2013年設立、2017年に株式上場を行って4年が経過した。

 電子コミックサイトはここ数年成長が著しい。昨年はコロナ禍での巣篭り需要を取り込み売上高・営業利益共に過去最高を更新。同社は12月決算となる為今期1Qが終了しているが、売上高予想は前期比59.0%増の196億円、営業利益は最高益予想となる13.5億円となっている。

 今期の大幅な増収・増益はまんが王国の成長だけでなく、昨年10月に買収を行った「ぶんか社」グループの連結化による、コンテンツセグメントが通期で収益貢献する事によって、大幅に収益が伸びる事となる。
 ぶんか社は女性向けのコミックを得意として、代表作としては綾瀬はるか主演でテレビドラマになった「義母と娘のブルース」がある。

 一般的には、プラットフォーマーは良いビジネスの代表として語られるが、電子コミックは参入に資格や免許が必要無い為、参入障壁は無いに等しい。プラットフォーム間での優劣は、取り扱いを行うコンテンツの有無が勝敗を分ける事になる。
 ビーグリーは、自社グループ内にコンテンツ供給を行う出版社を抱えた事によって、自社プラットフォームへの独自コンテンツを拡充する事が出来、有利なポジションを得られる可能性が高い。

 さらに同社は、ゲーム開発も数年前から始めており、今年の1~3月期にアニメファンの中で話題となっていた「無職転生」のスマートフォン向けゲームを3月下旬にリリースしており、ダウンロード数は既に50万件を突破した模様である。
 2月に行われた決算説明会では、上記のゲームは「一定の収益貢献が見込める程度の計画」となっており、今後ユーザー課金が進んで行けば、さらなる収益の上積みに期待が出来る。

 一方で、懸念材料もいくつかある。
 ぶんか社買収によって発生した多額ののれんと、直近の出来高と比べて多い信用取引の買い残となる。のれんについては、ぶんか社は黒字の会社である為、のれん償却後でも一定の利益貢献が見込める。信用買い残は、足元で再び増加傾向となっているが、3月上旬に付けた1,278円の安値で整理は付いた可能性が高く、反転上昇が期待出来る。

 ビーグリーの社名は、「進化論」のチャールズ・ダーウィンが世界航海に使用した船の名「Beagle」号に由来している。発見と進歩を求め続ける同社は、株式市場でも新たな価値を提供してくれる可能性があると-筆者は考えている。

(投資日報α 2021年4月5日号 掲載)



■SREホールディングス【2980】


 不動産仲介と取引データを活用した不動産価格査定ツールの提供を行っているSREホールディングス(以下、SREHD)【2980】は、2014年設立、2019年12月に東証マザーズ市場に上場、昨年12月にわずか1年で東証1部に鞍替え上場を行っている。

 同社の旧社名はソニー不動産であった為、テクノロジーを活用した不動産屋という見方をしている市場参加者は多いが、実態は全く違っており、成長著しい“AI企業”が本来の姿である。

 同社の強みは、ソニーが保有している豊富なAIライブラリーを用いて、様々な分野に向けてツールを提供出来る事であり、主力の不動産向けのクラウドサービスだけでなく、金融・電力・旅行業界向けのAIコンサルティングも実施している。
 AIクラウド&コンサル事業の利益率は非常に高く、2021年第3四半期までの同事業の営業利益率は74%となっており、超高収益事業となっている。

 直近30年間の日本の株式市場では、ソフトバンクグループ【9984】が常に市場の中心に居たが、同社の孫社長は決算説明会で「AI市場は最も肥沃な大地」と述べており、ここ数年はAI関連企業に的を絞って投資を行っている。
 SREHDの大株主には、ソフトバンクグループ傘下のZホールディングス【4689】が名を連ねており、AI企業の目利きとして日本で最も優れていると考えられる孫社長が、同社にお墨付きを与えていると言っても過言では無い。

 株価は、昨年3月のコロナショック時に付けた1,359円の安値から3.5倍以上となる5,000円近辺まで上昇しているが、現在の時価総額はまだ770億円程度。
 株式市場では、AI企業に対する評価は非常に高く、同社と売上高がほぼ同水準のAI企業PKSHA Technology【3993】の時価総額は970億円となっており、先月30日にマザーズ市場に上場したAppier Group【4180】は、今期赤字予想となっているが、時価総額は2,100億円を超える水準となっている。

 SREHDに対する市場参加者の見方が、不動産テックからAIカンパニーに変わるだけで、上昇余地が生まれて来る事となり、上値余地は充分にあると考えている。

 同社については、個別株分析レポート”100バガーを探せ”で詳細に分析を行っている。本記事を読んで興味を持たれた読者は、レポートと動画をご覧下さい。
【初回レポート解説動画】https://youtu.be/9ncGLu1yLVs
【西山社長への取材書き起こしを含む解説動画】https://youtu.be/k0tsQrJShEc

(投資日報α 2021年4月12日号 掲載)


(投資家S)


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  トレース合同会社 社長
  株式会社投資日報社 専務取締役
  大学卒業後、2004年から証券会社にてFXの仕事に従事。
  以後、14年間に渡り、営業・企画・トレーディングの最前線で活躍。
  リーマン・ショック・ユーロ危機・Brexit等々の並居る大相場の中、
  裏方として市場の最前線で指揮を取り、FXの表も裏も知り尽くす。
  2018年秋、11年間勤めたマネックス証券を退社して、
  暗号資産(仮想通貨)の交換業者となる、株式会社ディーカレットの立ち上げメンバーに加わる。
  2020年5月に、相場道を究める為に同社を退職。
  個人投資家として株式投資を行いながら、投資に掛ける時間が限られる兼業投資家の方に有益な情報を届ける為、株式について日夜分析を行っている。
  日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト(CMTA)
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