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■相川伸夫ピックアップ銘柄フォロー(動きがあった物だけ抜粋)
※5月21日(金)執筆時点
・東京エレクトロンデバイス(2760)18年4月6日配信
株価1970円⇒5980円(+204%)
・中央自動車工業(8117)20年10月9日配信
株価2020円⇒2945円(+28%)
東京エレクトロンデバイスはずっと応援を続けている企業の一つですが3月以降半導体需要の高まりも重なって1か月ちょっとで4000円⇒6000円まで大きく上昇しました。
同社は配当性向が40%で固定させているのが過去の実績でも明らかであり、今回の3月決算で今期の業績も特別利益込みで配当金も大きく上がりますます買いが入った形です。
昨年9月にフォローアップ記事を執筆してからわずか9か月で2倍にまで評価が高まりました。
・相川伸夫の東京エレクトロンデバイス フォロー取材報告(2020年9月28日配信)
http://okuchika.net/?eid=9475
同社の新中計では2025年に向けてまだまだ成長をしていく絵を描いています。それを考えるとまだまだこの株価は道半ばといえるでしょう。
ただ、懸念点があるのは今期1Qに固定資産の譲渡および取得によって1,888百万円の特別利益があり、通期業績と配当金(特益を含む配当性向40%で計画)を大きく押し上げていることです。
同社の今期純利益は44億円(EPS436円)の見通しですが、経常利益51億円から例年の感覚で純利益を計算すれば34億円程度(EPS338円)です。半導体需要は活況そのものなので来期の業績も特益があった今期をさらに超える可能性も否めませんが、過熱感には注意したいと個人的には思うところです。
とはいえ、同社はまだまだ半導体商社からメーカー機能を持った商社に生まれ変わり、さらにはアジュールなどでの稼ぎも上げていく成長企業ですので長期で応援していきたいですね!
中央自動車工業は昨年の10月にピックアップ記事を書かせて頂いた銘柄です。
・相川伸夫のピックアップ記事 中央自動車工業(8117)
http://okuchika.net/?eid=9506
こちらも2022年3月期の見通しはかなり上振れた数字を開示してきました!気持ちいいくらいに読みが当たったので素直にうれしいですね(笑)
同社は2017年~の業績修正ではコロナのあった20年3月期を除いて期初予想を上方修正で着地しています。今期は半導体不足の影響やコロナ影響もくすぶる中なので新車販売台数の数字が例年以上に読みにくい状況です。
この状態にもかかわらず過去最高益となる期初予想を出してきたのは好感できます。
また、今月5月28日に決算説明会を開催します。同社はこれまで説明会は開催していないですし、決算説明資料も開示してきていませんでした。
類似企業であるkeeper技研の時価総額は597億円でPER33であり、中央自動車工業は時価総額589億円でPER12と市場評価には3倍弱の差が存在します。
3倍弱の評価の差が出ている原因はIRの開示姿勢にあると私は考えています。
Keeper技研はBtoCのビジネスかつ、月次の数字であったりYouTubeでも見る機会が多いです。会社のIR資料もきっちり公開されており、経営者も拡大していく姿勢を投資家に見せています。
一方で中央自動車工業はBtoBで同じカーコーティングのビジネスでありながらそのほとんどの数字はアンノウンのものとなっています。推測でしか同社の中身は語れません。
その中央自動車工業が今回は決算説明会を初めて?(近年は開催していない)行うということは何かしらのIR姿勢の変化の表れだと思われます。個人的には決算説明資料にコーティングのセグメントなどが新規に開示されたりしたら面白いのにと思ってはいます(笑)
同社の経営戦略ありきでのIRなのでどんな考えがあるかはもちろんわかりませんが、なんにしてもIR姿勢が変わってくるだけで市場評価の差は狭まっていくと考えています。
中央自動車工業は好財務・好業績の優良企業であることに間違いがありませんし、何よりまだまだ成長する余地があると私は試算しています。今後の動向に注目です!
※ピックアップ銘柄は買い推奨ではありません。
私の目で面白い、アツイ要素がある!という理由で記事を執筆した企業の経過観察です。
銘柄には大化け狙いと堅実成長狙いの銘柄が混じっており、銘柄数もかなり増えたので全てを列挙することはやめることにしました。
■新規ピックアップ銘柄 ギガプライズ(3830)
丸順に引き続き地方市場での銘柄でギガプライズを新規にピックアップすることに決めました。
同社への取材は2019年からこれまでに3度代表取締役の梁瀬社長に取材させていただいており、これまで以上に同社の魅力が高まってきた半面、株価的に割安と感じる局面まで低下してきたことからこの度ピックアップすることにしました。
選定理由をはじめ、同社のビジネスや置かれている市場について簡単ではありますが解説していきたいと思います。
▼選定理由
1.安定成長が見込める(ISP導入したマンションからのストック収入)
⇒ネット回線はスイッチングコストが高く解約率は極めて低い。
2.名証→東証に昇格することで機関投資家含め注目度が上がる
⇒現在は名証セントレックス単独上場であり、来年以降での市場再編の流れを考えても名証に残り続ける価値は薄い
3.中長期的に配当性向アップで利回りは拡大していく可能性
⇒事業的に配当性向を上げられるビジネス
▼ギガプライズは全戸一括型マンションISPが売上・利益のほとんどを占める企業
2021年1月の調査によると日本国民の92%以上の人がスマホを持つような時代になりました(NTTドコモ モバイル社会研究所:引用)
子供が初めてスマホを手にするのは小学6年生までに4割、中学3年生までに7割強、高校3年生までには96%以上の子供がスマホを所有するようになっています。
父母子供二人の4人家族の場合、子供が中学生になる頃にはほとんどの家庭でスマホの数=家族の人数になります。
インターネット検索やYouTubeやTikTok、各種SNSやゲームなどなど。使えば使うほど『データ使用量(GB)』がかかり、請求金額が上昇し家計を圧迫します。最近ではドラマや映画、アニメや情報番組もスマホで通勤・通学中に手軽に見れるコンテンツの増加したことに加え、画像・通信速度の質が向上したことでさらにデータ使用量は上がっています。
それに伴う家計の圧迫(4人分のデータ使用量の増加)を抑えるために各家庭で導入されるのがネット回線(最近の主流は超高速光回線)であり、無線LANのWi-Fiは今や生活必需品です。
参考までにMM総研の2021年02月09日発表の記事によると一か月のデータ使用量の平均はモバイルデータ+Wi-Fiで約25GBほどだそうです。
Wi-Fiでデータを使用する場合は月額定額(5000円程度)で使いたい放題なので家族4人がモバイルデータのみで25GB使用する場合よりもWi-Fiを使って家庭内で使うデータ使用量を削減するほうが圧倒的に節約になります。この流れが光回線の普及が今でもジワジワ増加している背景になります。
日本の世帯数は約5360万世帯ほどであり、このうち約3700万世帯は何かしらのネット回線を契約しています(総務省発表:電気通信事業分野における市場検証(令和元年度)。
年次レポート https://www.soumu.go.jp/main_content/000707584.pdf
約3700万世帯の内、約3400万世帯は毎月のネット料金を直接(クレジットや口座振替等)契約企業に支払っていますが、約300万世帯ほどの方々は月額料金を直接払っていません。
この方々は『インターネット無料』等と宣伝文句のあるマンションに入居している方々であり、マンション自体がネット回線契約をしているので共益費や家賃で間接的に徴収される仕組みになっています。
前置きが長くなりましたが、マンション(大家・管理会社)に全戸一括でISP(インターネットサービスプロパイダー)導入をする企業の一社がギガプライズです。
▼売上は導入戸数で積みあがる
ギガプライズは現在、OEM含めると全戸一括型マンションISP導入戸数で業界2位の企業です。売上にはイニシャル売上とランニング売上の二種類が存在します。
・イニシャル売上
⇒マンションに光回線を引いてきて宅内工事をするマンション側が支払う導入コスト。工事の内容やサイズによってムラが大きく、2万円~5万円/戸、
・ランニング売上
⇒導入戸数に応じた毎月マンションの入居者に請求するネット料金であり、ストック売上。月額約1000円/戸程度の金額。
2021年3月期の売上はイニシャル:ランニング=4.5:5.5程度ランニング戸数が増えれば増えるほど売上も増加し、利益も増えていくビジネスモデル
▼全戸一括型マンションISP導入戸数は右肩上がりで増加傾向は続くと予想
・MM総研:全戸一括型マンションISPシェア調査」(2020年3月末)
https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=449
業界一位はアルテリアネットワークス(2018年につなぐネットコミュニケーションズとグループ会社化したことで大きく伸ばした)であり、ギガプライズは2015年の時点ではOEM供給含め業界5位でしたが、2020年3月期時点で2位まで導入戸数を拡大してきました。おそらくは来期の2022年3月期には業界1位になると私は推測しています
マンションISPがまだまだ伸びると推測する根拠はいろいろありますがすべてを説明すると長くなるので一番の理由だけ説明します。
▼賃貸向けマンションの空室率改善には『インターネット無料』が絶大な効果を持つ
日本の空き家問題が叫ばれていますが、今後もこの空き家は増加の一途をたどると推測されています。
空き家になるのは主に少子高齢化で相続者のいない戸建ての空き家が増加することと、築年数の古くなった賃貸マンションの空室です。
日本人口は今後も減少し続けると推測(2060年には8674万人:総務省)されていますが、一方で世帯の構成人数の減少によって人口減少の速度に比べて世帯数の減少は比較的緩やか(単身世帯や二人世帯の増加)だと推計されています。
2018年時点での総住宅戸数は6240万戸ほどですが、2033年には総住宅戸数は7126万戸だと推計されています(空き家はその内2166万戸で半分は戸建ての空き家で残りは賃貸マンションの空き家と推測)。
データによると築年数が10年未満のマンションの空室率は低く(満室が60%程度)築年数が20年を超えると空室率が顕著な上昇(満室は30%程度)をします。
こうした空室率改善には家賃を下げる以外にも様々な手を打つ必要があります。ただでさえ人口が減少していく以上、不動産経営をする場合にはいかに入居者に好まれる物件にするかが重要です。
全国賃貸住宅新聞によるアンケート結果によると5年連続で『インターネット無料』であれば「周辺相場より家賃が高くても入居する」という回答結果が出ています。
個人的な話で、6月に引っ越しをするのですが、NURO光を契約しようとしたら6か月待ちで、コミュファ10ギガを契約しようとしたら2か月待ちです。結果しばらくはネット難民が確定(元々のビッグローブ光の契約を移転で1か月で工事できることに)してしまいました。
マンションに賃貸で入居するにしても2人以上の世帯であれば今時Wi-Fiが使いたいのが普通だと思います。それを個別契約で申し込むと工事代金で3万円程度+月額5000円程度+工事は早くて1か月、遅いと2か月以上待たされます。
全戸一括型マンションISが入ってるマンションであれば家賃か共益費に含まれますが月額1000円程と非常に安価です(1000円の原価に上乗せをするかどうかは大家&管理会社次第)。また、マンションが契約している回線であれば即日入居を決めてもすぐにネットが使える利便性の高さもあります。
現在賃貸マンションは市場に1684万戸(2018年時点)ほど存在しています。2021年時点で1750万戸ほどと言った所でしょうか?このうち全戸型マンションISPが入ってるのは200万戸程度と推測されます。
結果約1500万戸ほどの賃貸マンションがインターネット無料ではありません。今後の空室率改善対策のためにもISP導入の追い風は吹くと考えています。
▼ギガプライズの強み
1)SPES
ギガプライズがメインにしているターゲットゾーンは小規模(8戸以上20戸未満)の物件です。最近だと年間での導入戸数の増加分は新築物件と既存物件の両方で半々に近い水準とのことです。先ほど述べた築年数が経過した賃貸物件には導入余地がまだまだあると私は考えています。
ただし、一般的に全戸一括型マンションISPの工事は宅外まで光回線を引っ張って来て工事をしてからマンションの一室ずつ宅内工事が必須になります。
賃貸物件での工事の場合、入居者との日程調整を合わせなければならず、工事が複数日にまたがってしまうことが一般的です。この場合、導入コストも高く付き、工事日程も余分にかかってしまう点がネックになります。
しかし、これを克服する技術がSPESです。
『ギガプライズは、NECネッツエスアイ、Broadcomと連携し、SPE(Single-Pair Ethernet)技術を活用した、既存電話線を用いてインターネット接続が可能となる世界初の集合住宅向けISPサービス、「SPES」を“オープンイノベーション”により、共同開発しました( https://www.gigaprize.co.jp/service/spes.html )』
現時点では他社は既存物件でISPを導入する際には宅内工事が必要ですが、ギガプライズではSPESで問題がないマンションに対しては宅内工事が不要です。
2)管理戸数ランキングのTOP5の内3社がメイン顧客
OEM供給ではギガプライズは入居者に認知されることは少ないです。
契約時にD.U―NET等のように得意先のブランドで入居者は契約をして、ギガプライズは実務を担当します。このOEM供給でギガプライズは導入戸数をこれまでも大きく伸ばしてきました。ギガプライズのメイン顧客は全国賃貸住宅新聞 2020年管理戸数ランキングにおいて、
・大東建託(業界1位 113万戸)
・積水ハウスグループ(業界2位 63万戸)
・大和リビング(業界4位 58万戸)
の三社が現在のメイン顧客になります。
3社とも営業力を生かして毎年管理戸数の積み上げも順調に増加。空室率改善の目的で既存物件にISPを入れたり、新築で分譲・賃貸マンションを建てる際にあらかじめISPを入れる仕事を受注しています。ここ数年の伸びの大部分は大和であることは有価証券報告書から伺い知ることができます。
ちなみに新築物件での工事ではPWINSを基本導入します。
「D-Link」と連携し、簡単にWi-Fi機器の取り換えが可能となる世界初のDOC式Wi-Fiアクセスポイント、「PWINS」を共同開発いたしました。2020年4月末より販売開始。
https://www.gigaprize.co.jp/pwins/
3)メイン顧客の囲い込みをコスト以外に送客と直接お客になる方法で関係強化する
2)で述べた3社がギガプライズにとってのメイン顧客になりますが、競合は当然存在します。ギガプライズの顧客のマンションは一般庶民向けの最もボリュームのあるゾーンに当たります。なので家賃も6万円とか8万円等の手頃なものが多いです。コスト競争になると利益率も低下しがちですが、それ以外の価値を顧客に提供することで安定受注を獲得しています。
それを成しえているのが不動産事業です。
前年まではイオンハウジングの不動産仲介で客付けをしていたのですが赤字が出ていました。現在、その時以上に仕組みとしてもよくなったのは社宅代行事業になります。
イオンの社員の社宅代行はギガプライズが任されており、間接的に大東・積水・大和向けに3000件程度の送客をしていることになります。3月のIRでもゲオの社宅代行も請け負うことになったとのことだったのでさらに間接的な形で送客で支援ができるようになるでしょう。
これに加え、利益の還元&関係性強化の一環として大東・大和・積水で不動産を購入していくとの計画を伺いました。
このような搦め手での経営戦略が面白いと感じています。
▼上場競合企業
・アルテリア
業界一位のアルテリアは基本的には高価格なマンション向けです。
イメージとしては家賃が20万円以上の賃貸マンションや8000万円等の大型の高価な分譲マンション等に多く導入される高品質な回線を売りにしています。
アルテリアは分譲マンションが得意な企業で、2021年3月期の開示された資料によると分譲マンションが約59万戸で賃貸マンションが約20万戸です。2020年6月に2020年6月にファイブエーという小規模の賃貸物件向けのISPサービスを打ち出し、これまでより参入する規模の拡大を目指しています。
・ファイバーゲート
こちらはターゲットがギガプライズとかぶっています。とはいえ、既存物件でISP未導入のマンションはたくさんあるのでまだ当分の内はそこまでの影響はないのではないか?と考えています。
▼非上場競合企業
・ファミリーネットワーク
⇒アルテリアの競合で高品質な大型分譲マンションが強い
・キッズウェイ
⇒ギガプライズ競合のところ。中部がメインとのこと
・イーブロード
⇒ギガプライズ競合のところ。近年伸びが横ばい傾向
▼リスク
1.新築着工件数が大きく減る
2.既存物件の導入がコロナで営業活動停滞
⇒ギガプラ側の営業停滞&デベロッパー側の営業停滞
3.5Gを中心とした無線通信電波の強度が極めて高くなる&大幅なコストダウンで通信費が安くなる
⇒宅内の電話線が無くなって携帯電話に変わったのと同じ流れ
4.競合との品質競争・価格競争に負ける
5.現在はIPV6のデータ通信料は通信回線分で固定で契約できているが、これが変動になってしまった場合にコストが上振れる可能性
等のリスクがあげられると思います。
とりわけ3については補足が必要かと思うので追記します。
-光回線そのものが消滅するという懸念-
・5G等が普及すればそもそも光回線の工事という非効率なことをしなくても良くなる=マンションISP事業の未来は無い?という考えも出てきます。
⇒大手の懐事情に視点を移してみると、現状3400万世帯は個別にソフトバンク光やフレッツ光などの契約をしており、月額5000円程度を支払っています。これは売上総額にすると2兆円規模にも昇り、大手同士で奪い合う形ではあるもののドル箱の事業であるといえます。
⇒今後5G等の通信インフラの成長によって光回線の価格は下落すると思われます。しかし、急激な価格低下は大手にとって自爆になりかねません。
⇒結果、月額1000円と非常に安価なマンションISPのニーズは根強く続き、向こう10年程度は全戸型マンションISP市場は成長するのではないか?と私は推測します。それまでにISPだけではないあたらしいビジネスの柱を見つけることが長期経営計画になってくると思われます。その一つがスマートポール事業のようにも感じます。
▼まとめ
テキストベースだけですべて書き伝えようとするとかなりの文字量になるのでここら辺で締めたいと思います。
ポイントになるのは
1.マンションISPはまだまだ伸びる。特に賃貸向けの既存物件
2.賃貸向けで業界TOPにがっちり食い込んでおり、かつSPESで急拡大も狙える
3.非常に安定したビジネスなので配当性向も徐々に切りあげることが可能かつ、業績のブレも少ないからPERも高くなりやすい
ということになります。
執筆している最中ですが梁瀬代表から佐藤代表に代わるとの発表が出されました!おそらくは大きく変化が起こると思うので、取材がまた出来たらフォローアップしていきたいと思います。
それではまた!
『全力全開全力前進!!!』
(相川伸夫)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)