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発行済み株式数が膨らんだ結果、需給が悪化し株価が低迷。こうした事例が相次ぐ中でその需給悪を改善するために多くの企業は自己株買いを実行することになる。
過去において発行した株式を一旦買い戻すことを自己株買いと称し多くの企業が日常茶飯事的に行っている。特にキャッシュリッチな会社で市場での評価が低いと経営者が判断した場合に打ち出される施策である。
1兆円の自己株買い策を打ち出したソフトバンクGの孫社長がその代表である。1万円以上の株価が今は5000円前後。どのタイミングで自己株買いを行っているのかは不明だが、下振れ局面での下支えになっているものと拝察される。
これに限らずトヨタ(7203)も一旦5月で終えた自己株買いを6月17日から再び実施するとの話。
時価総額が大きい日本を代表する株価意識の強い企業の施策が自己株買い。
株価を堅調に推移させて継続的な評価の維持、向上を図ろうとする企業にとってはごく当たり前の施策と言えるだろう。
大企業だけではない。
好財務の中堅建設会社であるテノックス(1905)は先週、上限20万株、同1.7億円の自己株買いを来年2月末まで実施すると発表した。同時に保有する自己株のうち15万株を消却すると発表。キャッシュ96億円を保有する同社にとっては1.7億円(平均買い付け予定単価850円)は微々たる金額なのかも知れませんが、投資家、株主にとってはやや遅きに失した小規模な施策なのかも知れませんが、やらないよりやった方が良い。
問題は来年2月までの株価がどうなっているのかが不明なこと。
自己株買いをするのならそうしたマクロの経済動向まで予想して実行してもらいたいが、まったくそうした施策を打ち出さない企業と比べれば礼賛されるだろう。多くのキャッシュリッチな企業に積極的にリスクテイクしてきた投資家も意に反して株価への反応が一向にない株式の現状に打つ手があるとしたら企業側の対応力に尽きるのだろう。
同社の場合は保有する自己株の一部を消却するとの発表も行っているが実質筆頭株主である光通信の見えざるプレッシャーを意識しての施策なのか、興味深い。
直近ではアクティビストと言われる物言う株主が自己株買いを要求してくる事例も増加。キャッシュの蓄積が進む一方で株価への反応がない場合の有効な対応策となる自己株買いがここに来て活発化している状況が株価を下支えしてくれているとの見方もできる。
自己株買いや保有する自己株の積極的な消却は大いに評価したいが、残念なことにテノックスの場合は株価は発表後にほとんど動きが見出せないまま推移している。それだけ相場環境が悪いという状況でもあるのだろうが、本来なら投資家各位が評価して買いの手をいれる局面なのに入ってこない現実を百戦錬磨の企業側が読み取った結果の自己株買いであり、あまり有頂天になる必要はないのかも知れません。
(炎)
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