これまで急激に続いてきた米国のインフレ鈍化(消費者物価指数よりも生産者物価の低下)を背景に米国の株式相場が急上昇してきたことを背景に日経平均も2万8500円台まで戻ってきた。上げピッチからすれば3万円台乗せも近いとの観測が出てきそうだが、果たして今後の相場展開はどうなるのだろうか。
お盆休みながら株式相場は案外強いとの印象で今後の動向に関心が高まる状況なので今回は少し現状の日本株の位置づけを確認しておきたい。
日経225は現在、PER12.9倍、PBR1.17倍、配当利回り2.42%の水準にある。
これに対してプライム市場(1838銘柄)はPER13.8倍、PBR1.2倍、配当利回り2.31%でほぼ日経225と同じ水準にあると言える。
また、スタンダード市場(1451銘柄)はPER15.1倍、PBR0.93倍、配当利回り2.18%、グロース市場(482銘柄)は109.7倍、PBR3.9倍、配当利回り0.31%の水準。
時価総額はプライムが718兆円、スタンダードが22.2兆円、グロースが6.7兆円の水準となっている。3つの市場を合わせた日本株の時価総額はおよそ750兆円に回復してきたことになる。
ほぼ発表を終えた上場企業の4-6月期決算は26%の減益となったが、これはソフトバンクG(9984)のややイレギュラーな3.1兆円もの赤字が影響しており、これを除くと為替の円安メリットを享受した企業もあり、決してネガティブな内容ではなかったように思われる。
海運や鉄鋼などの市況産業の業績堅調も目につくほか、エネルギー関連産業などの業績も堅調で企業ごとに二極化が目につくものの、コロナ禍の影響を受けた企業においても徐々に回復への動きを示そうとしている。引き続き半導体不足がネックとなっていることは否定できないが個別にはコロナや円安、物価高の影響をはねのけて業績の向上が続く企業も見出せる。
戻り相場の展開を鮮明にしてきた全体相場は今後も世界経済が引き続き不透明な中、とりわけ米国経済の金利動向、新興国危機(スリランカなど経済苦境の低所得国など15か国の長期金利が10%を超えてきたことでIMFの支援残高が2019年末比5割増)による世界経済の波乱、その根源とも言える中国の景気動向が気になる点となっている。
こうした中で日本のおよそ3800の銘柄には指標面でまだまだ割安感のある銘柄が見出せる。問題は銘柄に偏りが見られ投資家が自信をもってそうした割安感のある銘柄に積極的に投資してこないことにある。
現在PBR1倍以下の銘柄はおよそ1900銘柄もあり、半分は解散価値を下回っている計算となる。この中で更に0.5倍以下となるとおよそ700もの銘柄が存在する。
特に低PBRが顕著なのは金融、とりわけ地銀などの銀行セクターで700のうちのおよそ10%ほどの数を占める銀行株(持ち株会社も含む)が極端に低いPBRの状態のままとなっている。果たして不特定多数の預金者に雀の涙程度の利息で預金してもらって、国債などの有価証券投資や融資事業で稼いだ利益から比較的高い配当を投資家に分配している銀行だが、お金が潤沢に調達できるだけに低評価に留まっている状態のまま株式市場に上場している意味があるのかははなはだ疑問ではある。
また、PER面ではPER10倍以下の銘柄が1000以上もあり、海運株など5倍以下も100銘柄ほど存在している。
**参考 PER10倍以下分布数**
4倍以下39銘柄、4から5倍60銘柄、5から6倍142銘柄、6から7倍194銘柄、7から8倍203銘柄、8から10倍436銘柄
更には配当利回りでみると商船三井や日本郵船などの配当利回り13%台銘柄を筆頭に6%以上が31銘柄存在しているほか3%以上の銘柄が1200銘柄以上も存在しており、配当金目当ての投資が実行されやすい市場環境にある点が注目される。
**参考 予想配当利回り3%以上の分布数**
6%以上32銘柄 5から6%96銘柄、4.5から5%153銘柄、4.0から4.5%228銘柄、3.5から4.0%328銘柄、3.0から3.5%380銘柄
このように3つの尺度で割安感のある銘柄があってもなかなか株価は上昇しないという現実はあるのだが、企業側からは自己株買いの実施、アグレッシブな中期計画の提示などが見られる。いつの間にか割安感のある銘柄が大口株主に買われているケースも出てきた。ここではこうした状況下にある株式市場に改めて関心をもって見守ることにしたい。
(炎)
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