引き続き円安が進展し間もなく1ドル=150円の世界に突入する状況にありますが、株式市場は一定のリズムで上下変動を繰り返しながら年末に向かおうとしています。
こうした中で中小型高配当利回り銘柄を中心に個別株には較的底堅い展開が見られますので皆様の運用成果も着実に向上しつつあるかと思われます。
日経平均やTOPIXに代表される令和4年の株式指数は年初から調整と反転上昇を繰り返し現在の水準を維持しています。
一方でマザーズ指数は年初の1000ポイント前後の水準からまだ28%ほど下落した水準にあり、高値水準から見れば低迷状態が続いています。
ただ、6月のボトムである607ポイントからは上昇傾向にある言えます。
今年のIPO銘柄も銘柄にもよりますが、そうした中小型株指数低迷の影響を受け概ね頭重い展開が見られます。
さて、年初からこの間に起きたイベントでは引き続きのコロナ禍、感染拡大に加え、ロシアによるウクライナ侵攻がエネルギー価格の上昇をもたらし、景気向上の下での需要増が続いたことによる米国での急激な物価上昇、それに対応した政策金利の相次ぐ大幅な引き上げが為替相場に急激な円安をもたらしてきたと言えます。
株式市場では既に為替相場の行き過ぎを指摘する声も聞かれる一方で、雇用統計の好調さもあり米金利上昇の潮流から、なおも円安が継続せざるを得ないとの見方もあります。
米消費者物価は8%以上となおも高水準が続き11月には0.75%以上の利上げが予想されます。一方ではOPECの減産にも関わらず原油価格の下落傾向がこのところ見られ、物価上昇は徐々に鎮静化していくものと見られますので、この状況が一旦は落ち着くとの見方もできます。
円安トレンドをもたらしてきた米国の政策金利引き上げペースが鈍化するタイミングは年明け以降となりそうですが、そうなればこのところの円安も反転する可能性が出てきます。
こうした株式相場の展開の中で活躍銘柄、すなわち株価の上昇トレンドが大なり小なり見られる銘柄もあればまったく不人気で投資家や既存株主から見放され放置され続けてきた銘柄もあり、皆様の運用成果もその保有銘柄の活躍度合いで異なっているものと拝察致しております。
市場で放置されている株のことを筆者は昔話に出てくる「3年寝太郎」に因んで「3年寝太郎株」と呼んでいますが、こうした寝ていた株が一旦目を覚ませば大活躍することになるという期待を込めた呼び方です。
ここまで高値をつけてから長期にわたり右肩下がりのトレンドを描いてきた銘柄は数多く見出せます。そうした銘柄の特徴は様々にありますが、概ね以下のような特徴があります。
1)財務内容は比較的良好でバリュー価値はあるのに成長性がないと見られ株 価のトレンドに力強さが感じられない。
2)過去において業績を下方修正するなど投資家の期待を裏切ったことがあり 不人気な状態である。
3)やや割高感があり多くの投資家の関心を呼びにくい。
4)業績が停滞気味
などですが、これら以外にも放置されている理由は個々の銘柄ごとに存在しているかと思われます。
放置された銘柄には関心が集まらない。この結果株価は低迷したままの悪循環が続く。結果としてPBRが0.5倍、下手をすれば0.3倍台となってきたり、PERが10倍以下、極端には4倍以下となったり、配当利回りが5%以上、海運株のように10%以上となったりと指標面での魅力を高めている銘柄も出ていることはご存知の通りです。
果たしてこうした状況はいつまで続くのでしょうか。
こうした状況をファンドは着目し集めていてもおかしくはないかと思います。特に時価総額が経常利益の6,7倍以下に留まっているバリュー銘柄はその投資対象になりそうです。恐らく水面下では投資対象になっているものと考えられます。
個人投資家の皆さんがなかなか上がらないからとしびれを切らして売っている銘柄こそある目的をもって投資するファンドにとっては宝の山になっているのかも知れません。華やかで人気のある銘柄もかつては不人気だったという経緯を思い出して頂きながら、現在は不人気な放置銘柄にも多少関心を持って頂き、その復活の可能性を探りながら運用成果の向上に努めて頂きたいと思います。
【参考:プライム市場の放置銘柄】
1.新東工業(6339)時価693円 時価総額370億円
配当利回り4.0% PBR0.35倍 PER11.7倍
今期業績を下方修正した点がネガティブながら2019年12月の1116円高値から2年10カ月の調整を経てそろそろ上昇への期待が底流に流れる。
設備投資関連銘柄。
今期予想経常利益49億円、実質無借金経営。キャッシュリッチ銘柄。
2.メディカルシステムネットワーク(4350)時価407円
予想経常利益37億円(EBITDA62億円)に対する時価総額123億円は低評価。有利子負債280億円(現預金77億円)が時価総額を高められない背景となっていると推察。ただ、今後有利子負債の削減を計画。
2021年4月の高値944円をピークに1年6カ月間の調整トレンドを継続中で株価は高値から半値以下に調整。
毎年の薬価引き上げで業績停滞中だが水面下で推進中の調剤ネット加盟店支援サービスの展開が収益向上に貢献する見込みで来期は増収増益に転じる見通し。
日本で最も多くの調剤薬局とのネットワークを構築しており、第6次中期計画では2026年月期に売上高1400億円、営業利益65億円、医薬品ネットワーク加盟件数12000件(業界シェア20%)を目指す。
単なる調剤薬局チェーンではなく医薬品サプライチェーンマネジメント企業として存在感を増すと期待。
そうしたビジネススケールを持った企業の時価総額が130億円以下で留まっているこの時期こそ投資のチャンスと言えそう。
3.アセンテック(3565) 時価513円 時価総額69億円
仮想デスクトップのソリューション提供企業でテレワーク関連。
2018年から2020年にかけてが業績成長期待が高まり株価上昇。
2017年4月の上場以来、前期まで毎期増収増益を継続してきたが今期の業績は半導体不足や円安の影響もあり停滞。
この結果、株価は2020年10月を高値に2年間の調整中。
無借金経営で自己株買い実施中ながら株価の下落トレンドは止まらない状態。
PER15倍の水準。
4.マツオカC(3611)時価925円 時価総額91億円
ユニクロ向けなどにバングラデシュやミャンマー、ベトナムなどでアパレルOEM生産。
2017年12月のIPO後一貫して下落歩調。
円高時に有効だった中国等のリスクの高い海外生産のメリットが円安傾向で薄れたこともあり株価は調整の一途。
時価総額91億円(予想経常利益12億円、2021.3期同実績40億円)
保有キャッシュは157億円。有利子負債は130億円。
2018年1月高値5290円から8月5日安値893円まで株価は4年8カ月で83%下落。40円配当。
日本政策投資銀行と資本業務提携。その新株予約権の行使価格は934円。
5.GMOペパボ(3633)時価1858円 時価総額98億円
2008年12月IPO。GMOインターネットの子会社。
ホスティング事業、EC支援事業、ハンドメイド事業、金融支援事業、その他事業で売上は構成。
コロナ禍で伸びていたグッズ作成支援の「スズリ」がコロナ収束傾向で反動減。フリマアプリと合わせ想定外の苦戦が伝えられる中で株価は大きく下落傾向を辿ってきた。
今期予想経常利益11.56億円に対して2Q2.58億円と進捗率が低く四季報は通期9億円に下方修正。
業績の急成長がやや停滞してきたため2021年3月高値8750円から10月3日安値1705円まで80%もの大幅な調整を見せている。
今下期から来期にかけての再成長に期待。
NFT関連でもあり、安値からは反転傾向が見られそろそろ見直しの可能性も感じられる。
6.協立エアテック(5997)時価459円 年初来安値454円
福岡に本社を置くダンパーなどの空調機器関連メーカー。
2018年高値から4年間の冬眠状態で時折の上昇を見せながらも概ね右肩下がりの展開が続く。
今12月期予想経常利益5.6億円に対して時価総額22億円は割安。
実績PBR0.29倍。
工場用地建物設備だけでも40億円はある企業。
38億円の金融資産(短期借入金20億円)を勘案してもこの時価水準は不人気が醸し出したややイレギュラーな状況と言えそう。
(炎)
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