今年の株式市場の特徴としては取引所によるPBR1倍割れ銘柄への改善要求や、バフェット氏が日本株を買い増すとの思惑が広がったことでバリュー銘柄の選別買いが見られるようになりました。
話しは逸れますが、バフェット氏がバリュー投資家であると短絡的に決めつけることも出来ません。特にこの20年ほどはバリュー銘柄への投資は多くありませんから、この辺りは誤解の無いようきちんと研究しておくべきと思います。
増配や自社株買いを増強するなどで株主還元に積極的な対応をする企業が増えており、それらの企業は株式市場できちんと評価されるようになってきました。収益の安定した企業がDOE(いわゆる安定配当)を発表するなど良い傾向になっています。
但し、株主還元の拡大は重要であるものの、やはり株価を決めるのは事業収益の伸びであるはずで、昨年来の資源・エネルギー高による交易条件の悪化と、円安がどれほど輸出企業の事業収益に影響するのかも見ておきたいところです。
リーマンショック以降の円高局面において企業の海外投資(移転)が加速した為、現在では輸出型製造業の円安メリットが大きく減っている一方、昨年のエネルギー資源関連の輸入額は円安の影響も含めて前年度(2021年)から約15兆円、約70%も増加しているために企業にとっては相当の負担となっています。
故に化石燃料を多く使う化学・素材などの製造業は海外企業との価格競争も含めて利益を大幅に落としている企業が多く、且つ稼働率が上がっても利益が出辛い状況となっている模様です。
輸入額が多い内需企業はもとより、日本最大の輸出品目である自動車関連についても利益率の増加が抑えられ、脱炭素化による各国の対応にも影響されています。
一方で、製品価格の値上げに成功した企業は利益増加の恩恵を受けており、値上げ出来る製品群を持つ企業の強さが見られます。半導体製造にかかる企業などでは良い業績予想を出す企業が増えています。
さて上述の環境下でもあり、これから暫く資源高が続くことを踏まえれば今年後半の企業収益の伸びは限定的となることも視野に入れておく必要がありそうと考えます。
先日までで大半の3月期決算企業及び四半期決算の開示は済みましたが、今年度の業績予想は抑制的な予想と楽観的な予想の2極化が見られます。日本企業特有の控えめな期初予想もありますが、資源価格や為替を含めウクライナ戦争や主要国間の政治的な分断など、先行きを読み辛い要因が多過ぎることにもよるのでしょう。
余談ですが、親子上場をしている企業群の中には支配株主(親会社)のメリットを優先してか、少数株主を軽視するIRも多々見られました。取引所がこれらを放置するのであれば財界に忖度した(ガバナンスの無い)取引所運営をしていることになります。
主要国の市場金利は高止まりしそうですから難しい局面が続きそうです。今の経済環境では市場金利の動向を注視しつつ、高いと感じたときには様子見するくらいの腹積もりでも良いのかもしれません。旨い話には一層の注意が必要となります。と言うより「旨い話=詐欺」と頭に刷り込んでおくべきですね。
さて、毎度のSELL IN MAY(5月に売り逃げろ)の時期ですが、今年はどうなるのか。「5月に売って9月に買え」を考える際に、年前半は景気悪化で下落し、年後半は景気回復や金利低下で株価は上がると言った意見が年初に多かった背景なども検証したいところです。
今のところ日経平均は年初から昨日までで約17%上昇しています。
米国の場合には過去データからは明らかに5月からより9月からの投資効率が良いのですが、日本株も米国市場の写真相場と捉えれば同様の可能性があります。
注意点は投機ファンドの動向で、この連休中に印象的な記事がありました。
米金融当局が金融株の株価操作の可能性を注視したとの報道が出た途端に、それまで売り込まれていた地銀株が急騰したとの記事です。
コロナを発端とした主要国の資金供給によって投機資金が巨大化している様子が分かりますし、日本でも株価操作と疑りたくなる事例が増えています。
3月16日に約27,000円だった日経平均株価は昨日までの2ヶ月間で30,000円を超え、約11.4%も値上がりました。騰落レシオも長く過熱状態にあります。
強い相場が続いていますが、気を付けたいところです。
余談ですが、少子化対策予算の財源に保険料を充てるとの記事がありました。増税論議や一般会計の見直し論議も無く、票に影響が少ないと思われるところから取ると言うだけの情けない結末。しかも曖昧な説明しかありません。
物価高による消費税収が増えることへの言及もありません。来年度の予算編成まで話題にしたくないのか?何せ全てにビジョンが感じられない。 もう、この日和見政府(政治)には言葉を失います。
(街のコンサルタント)
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