「アナリストよ、
歴史家のように記述し、
科学者のように分析し、
芸術家のように共感し、
哲学者のように思考せよ。」
2015年に東大生と京大生を相手にアナリスト業務について講演したことがありました。その講演内容をメモってくれた東大生のA君がいました。
8年前のものですが、懐かしく想い紹介します。
■7■アナリストとしての準備
理論を学ぶ前に、アナリストがやるべき「準備体操」とでもいうべき前段がある。
それは、「よい目を持つこと」、そして、「眼を養うこと」だ。
世の中をありのままに見よう。そして、遠い過去にも、遠い未来にも思いを馳せよう。感じよう。
ありのままの世の中はなんと美しいことか。人間はなんとすばらしいことか。
曇りなき眼で世の中を見て多くのことに感動する。
そうした「よい目」を持つことはよい投資家になるための必要条件だと思う。
人は偏見を持ち、時には激しい思い込みをしてしまう。
間違った認識を改める機会は少ない。
だから、わたしも含めて、ほとんどの人は、公平な目で素直に世の中を見ることができていない。
それは人の宿命なのかもしれない。
■8■時代不変量(=本質)を見出すには、どうしても長時間の推移をみる必要がある
商品の時間軸をさかのぼる作業を行い何が本質かを見る。
アナリストは企業が提供する商品を評価するのが仕事の一部である。
その商品が産まれた時代背景について調べる。
商品のよい点や悪い点、他にない特徴や他と似た特徴を理解する。
投資家にできることはまずは企業の提供する商品について、よき観察者となることであろう。
また、アナリストであれば、商品を歴史的に遡ることを必ず行うべきだ。
自家用車なら、レクサスの前、クラウンの前、その前と歴史を徐々に遡っていくのだ。
自家用車という乗り物の本質を時代とともに遡れば、平安時代の牛車まで到達してもよい。それは必要なことであっても、決して無駄なことではない。
なぜなら、そうすることで、「時代」が見えるからだ。
時代が見えれば、時代を超えて残ってきた本質が見えるはずだ。
まずは、本質のみを見よ。
■9■本質を見る。都合良く変わるものよりも、ずっと変わらないものを探すべき
一般に、アナリストは、短期の変化を好む。
それも、企業が短期間に「都合よく変化すること」を期待する。
または、自分の時間軸で都合良く変化するものを追いかける。
そのアプローチは文字通り、「都合がよすぎる」。自己の時間軸ではなく、時代の時間軸で物事を見るべきだ。
変化するものではなく、むしろ、時代を超えて変化しないものを見よ。
なぜなら、本質とは時代を超えて変化しないものだ。
すぐに変わるもの(業績の急回復等)を追いかけるのではなく、人類にとっての時代不変量である「崇高な価値」を見出すように心がけよう。
それゆえ、アナリストは感性を備えよ。時代の風を感じる情緒を備えてほしい。
(つづく)
(NPO法人イノベーターズ・フォーラム理事 山本 潤)
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