日本には数多くのモノづくり企業があります。そうしたモノづくり企業が日本経済の発展を支えてきたと言っても過言ではありません。

 株式市場にも多くの世界的なモノづくり企業が上場し、存在感を高めています。日本ではトヨタ(7203)がその筆頭と言えますが、同社はその実力のゆえに注目をされ、日本を代表する企業、クルマというモノづくり企業の最先端を走っていると考えられます。
 今期予想経常利益は1兆8900億円で既に時価総額は20兆円を突破しています。時価5810円は会社公表の今期予想EPS432.5円に対してPER13.4倍で、市場平均を下回っています。

 こうしたモノづくり企業の評価はまちまちですが、基本的には経常利益水準で決まると考えています。経常利益の10倍水準はおよそPER20倍に相当します。同社の場合は税率の関係で当期利益が経常利益に比べて高い水準になっています。
 また、優秀なアナリストがウォッチしていて分析の結果、市場コンセンサス(数名のアナリスト予想の平均値)では予想経常利益が2兆3889億円となっており、この10倍であれば23兆円が妥当な時価総額水準となります。

 円安が更に続くという期待もあってコンセンサス予想が形成されているとすれば会社側の予想がまだ妥当なのかも知れませんが、現在起きている調整相場は為替の円高への揺り戻しを勘案してのものとなっている可能性があります。

 トップ企業ならPER20倍ということで言えば、トヨタの評価は妥当かと考えられます。ただ、PBR(純資産倍率)、BPS(1株純資産)というモノサシで考えるとトヨタのPBRは1.5倍となっており、これは市場平均1.3倍を上回っています。

 トヨタのようなビッグカンパニーは市場平均とともに素直に変動しますが、やや小ぶりの企業では市場平均を上回ることも下回ることもあり、時に市場平均以上の成果を得られる機会もあります。

 トヨタと同様にノーリツ鋼機(7744)を見ておきますが、同社はもともとは写真の現像装置の会社でれっきとしたモノづくり企業です。会社側もそのことは相当に意識しています。取得した特許も多数あります。
 ただ、アナログからデジタルへ移行し写真現像へのニーズが縮小する中で大きく事業規模が縮小し、一時は200億円もの赤字を計上するに至りました。一方 では高収益時代に得たキャッシュが豊富でその活用を模索してきました。結果としてモノづくりとはまた異なる異業種のビジネス(中高年齢層への通販ビジネ ス)へのM&Aを推進し、前期後半から一気に収益が黒字化してきました。今期はM&A先の業績がフルに寄与。新たに医療機器分野の企業もM&Aを行い、そ れも業績に貢献してくる見込みです。

 本日の株価は691円。PERは22.4倍、時価総額は250億円の水準で市場平均からすれば上回っていますが、PBRは0.43倍で大きく下回ってい ます。同社は今期売上550億円に対して営業利益は27.5億円、経常利益は21億円との見通しを出していますが、IFISの株予測ではコンセンサス予想 は出ていません(つまりアナリストがカバーしていません)。
 もし同社をカバーしている私以外のアナリストが分析すればわかるでしょうが、各M&A企業の業績を合計したら恐らくもう少し上に今期の業績はいくと推察されます。期初は慎重に出して期中に上方修正ができるようにとの配慮が働いているものと考えられます。

 農業、医療機器、予防医学などテーマ性に乗る銘柄でもあり、ここでの調整抜けだしかつてあった株価水準に踊り出るとの期待が再び高まることを夢見ている投資家も多いのではないでしょうか?

 昨年11月の283円から一気に5月には987円まで700円幅で3.5倍にまで値上がりしての調整です。ようやくじっくりと評価できるタイミングが近づいているようにも思われます。

(炎)

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