5月相場の乱高下でこの先の展開にようやく強弱感が生まれてきました。メディアが株高を軽々しく伝えるので株高が当たり前のような錯覚に陥ってきた投資家に改めて株式のリスク感覚が多少でも生まれてきたことで、一方的な株価上昇の潮流が止まるものと考えられます。

 強気の声では「アベノミクス効果で景気が本格的に上向き、企業業績の拡大が期待できる。成長戦略に沿った銘柄を中心に株価上昇は続くだろう、ここでの押し目は格好の投資チャンスに違いない。」

 一方では「株価は明らかに上がり過ぎだった。昨年の10月の8488円から日経平均株価は5月の高値15942円まで87%も上昇し、ファーストリテイ リングなど指数の変動に影響しやすい銘柄が異常に上昇するなど、ヘッジファンドなどプロが仕掛けての株価上昇は波乱の幕開けとなる。13500円台までの 調整は押し目買いを誘うことになるが、中途半端な下げでは留まらず、なおも日柄をかけて下値を模索する余地がありそうだ。」といった弱気の声も聞かれま す。

 株式相場は強気と弱気の戦い。このどちらかが優位に立つことで上げ相場、下げ相場が演出されます。5月22日までは強気に分があり優位に立ちましたが、 我慢を続けてきた弱気にもようやく機会が訪れたようです。アベノミクスの綻びを指摘する政治家も現れ始めたのはその後押しになるでしょうし、世の中そう簡 単には、一方に偏ることはないし、いつまでも上がる株などはなく、多少の調整は歓迎ぐらいに余裕をもって見ておきたいものです。

 株式投資は売りでも利益を上げられるし、オプションを活用すれば少額投資で大きく利益を得ることもできるのですから、そうした術を持つ投資家はそうした仕掛けをいつの間にかやっていても不思議ではありません。

 日経平均が1万6000円になるとご託宣の外資系のエコノミストがいましたが、実際にほぼそこまで到達した後の急落は何か意図的なものを感じてしまいます。

 オプションではプット(売る権利)の価格が急騰したようですが皆さんも一度そうした動きをチェックされても良いでしょう。指数が簡単に上がる動きの際は 気をつけないとなりません。ヘッジファンドなどの仕掛けは相場を一気に逆の動きにしてしまう可能性をもっていると考えられます。

 もうひとつ今回の調整を示唆していたインデックスは小型株指数の一つであるJASDAQ指数です。日経平均は終値ベースでは5月22日、ザラ場ベースで は23日に高値をつけましたが、JASDAQ指数は5月14日に高値をつけて、既に調整の動きになっていた点です。過去もよくあるパターンなのですが、急 騰した小型株の指数が頭打ちして主力株の指数がなおも上がり続けて一気に高値を取りにいくパターンは気をつけないとなりません。

 持ち株が上がらないのに日経平均だけが上がっている現象が今回は見られた筈です。今回の調整相場は短期の値幅調整で終わる可能性と値幅調整が中途半端で日柄調整が続く可能性とが想定されますが、6月相場では両方をにらんでおく必要があります。

 値幅調整という点では一気に調整ムードが台頭した結果、5月の高値から既に15%程度の下落を見せた日経平均ですがまだ下値目途となる13週線 (13300円前後)を下回ってはおらず、上向き基調に変化はありません。まずはこの辺りまでの調整を下値目途として取り組む投資家が多いと考えられま す。ここから一気に13週線を割り込み26週線(12000円)程度までの水準にまで売り込まれるには余程のネガティブ要因(1ドル=95円程度への円高 進展)がないと難しいかと思います。

 6月の株式相場が基本的に調整相場だとすればインデックス連動型の主力銘柄よりも個別材料株への関心が高まると考えられます。

 5月はゼロだったIPO銘柄が6月は5社ノミネートされており、その中には創薬ベンチャー2社(ぺプチドリーム、リプロセル)が含まれており、その比較企業が改めて人気化する可能性があります。
 7月も既にサントリー食品がノミネートしており、全体相場が基本的に調整ムードとなる中でIPO市場への関心が相対的に高まるものと期待されます。

(炎)

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