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企業価値への投資
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企業価値への投資

2014-02-04 23:01
    株価の評価はいくつかの要素で決定します。基本的には過去から現在までの収益推移の下で、基本的なバリュエーションが市場のコンセンサスとして決定し、事業内容、同業他社との比較などから株価の変動レンジが決まります。

     マクロの経済は市場全体のPERの数値を決定づける要素ですが、個別銘柄であれば事業の方向性、それに対する信頼性などが決定要素となると考えられます。

     一株当たりの利益(EPS)に対してどの程度の評価をするかについては成長性が関わります。一方で、過去の蓄積結果社内に存在する金融資産と有利子負債、人的資産、土地や設備などの資産全体に対しての評価が時価総額を決定する第2の要素となります。
     企業は事業活動で得た利益のいくらかを次年度以降の活動資源として蓄積して成長に向けた布石を打つのが一般的です。通常、利益は株主のものであり、その一定部分は配当金として株主に還元されるべきものです。

     その配当金が固定的に配分されるのか業績に連動して配分されるかによって株価の評価に影響してくるという議論があります。

     ただ、この点は評価が難しく配当金が増加しても企業価値が上がるということにはならないというかつて盛んに議論されたMM理論※というものもあり、なかなかそう簡単には結論づけられません。

    ※MM理論とは:
     完全市場を仮定(効率的市場仮説)すれば、企業の資本構成および配当政策は企業価値に影響を与えないという定理であり、またMM理論は完全市場(効率的 市場仮説:EMH)を前提とする理論であることから、完全市場でない現実の市場においては、資本構成や配当政策は企業価値に影響を与えるとされる。
    (ウィキペディアより)

     過去の株式市場の歴史を紐解くと戦後のおよそ30年間は多くの上場企業が固定した配当を長年にわたり安定して続けていました。例えば50円額面の鉄鋼 メーカーでは年5円、電力会社は額面500円に対して50円といった類です。鉄鋼株は1カイ2ヤリといって50円前後での小幅な値動きが続きました。
     その代わり、流動性は高く多くの個人投資家が投資対象としていました。電力株も配当目当てでの投資が大半を占めていたと考えられます。公共的な企業は業績が安定していて配当も安定していると考えられたためです。

     一方で成長性が高いと見られたソニーや松下(現在のパナソニック)に代表される電機株は成長株投資の代表的なセクターでした。モータリゼーションがス タートした昭和40年代以降はトヨタに代表される自動車株も成長株とされましたが、産業的には欧米企業との競争にさらされてきました。
     成長株の評価は鉄鋼株や電力株とは異なった評価がなされたのですが、利益の成長に伴って配当金も増加、無償割り当て増資なども活発化し発行済み株式が増加し時価総額も拡大していきました。

     このように、利益の拡大につれて社内にその多くは蓄積していくことで国際的な競争に勝てる多くの企業が誕生してきたという経緯があります。かつては50 円額面時代に株主割当てによる発行株式数の増加、自己資本充実策が取られてきましたが、現在はそれが時価発行となり株式分割により株主の所有株数の増加、 1単位当たりの投資金額の縮減で流動性を増す施策が取られています。

     多くの企業は稼いだお金の一定割合を株主に還元し投資家は、その配当金を消費に回したり、再投資の原資とします。資本主義国は株式市場というインフラをうまく活用できれば経済を好循環させることができると私は考えています。

     投資家の投じたお金の何倍もの評価が個々の企業にされることで全体市場の時価総額も拡大していきます。値上がり益には今年から20%ものキャピタルゲイ ン課税が課され、配当金も同様の税金が課せられるようになったことは実は結構、個人投資家にとっては痛いところです。もともとの税率に戻っただけなのです が、10%が20%となると売却した際に残る手元のキャッシュが減ってしまいますので売りも買いも慎重にならざるを得なくなります。
     新年に入って株式市場はやや停滞気味ですが、どうもこうした税率アップが投資家の心理を若干萎縮させているようにも思われます。ただ、現金のまま所有しているよりは企業への投資価値が高い間は株式相場は堅調に推移するという考え方は変わりがありません。
     毎年1口座100万円のNISAマネーも待機し、株価を下支えしてくれるという期待もあり、企業業績の向上、増配期待、値上がり期待が高い間は株式への投資意欲は高止まりしたままとなるでしょう。

     話が多少それてしまった感がありますが、株価を決める要素の中で、配当金にスポットを当てると配当利回りが投資リスクに見合って高いとNISA口座を活 用するような個人投資家は投資対象としやすくなります。こうした局面下で業績に連動した配当政策を表明し始めた企業が見出せますが、そうした企業への評価 はどうなっていくでしょうか。

     当然、企業がそうした表明をする場合、短期にしろ中長期にしろ業績に対する自信が必要です。業績向上に向けた施策とともに配当金もそれに連動して増減さ せるという業績連動型の配当政策を打ち出した企業に投資することは投資家にとっては投資した企業と苦楽を共にするという意味合いでもあります。
     リスクテイクしてリターンを上げる投資家はキャピタルゲインが得られない場合は配当金が増える期待がよりどころとなります。

     そうした企業への投資が投資家本来の姿なのかも知れません。

     利益成長の企業価値、内部蓄積した資産への企業価値への投資の結果もたらされる配当金の行方を睨みながら億の近道に集う個人投資家の皆さんの資産が着実に増殖していくことを切に願っています。

    (炎)

    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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