2月28日付で、「バフェットからの手紙」(バークシャーの年次報告書)の2014年版が公開されました。
http://www.berkshirehathaway.com/letters/letters.html
 バフェット自身が執筆するほぼ唯一の資料ということで「バフェット流」を学ぶためには必要不可欠なものですが、例年どおりバークシャーとS&P500の運用成績比較表から始まります。
 昨年(2013年版)では、過去4年間(2011年は引き分け)バークシャーの成績がS&Pを上回ることができなかったことに触れ、「2013年も米国 株の強気が続けば、5年連続でS&Pの成績がバークシャーの成績を上回るという(不名誉な)記録が創られるであろう」とバフェット自身が予想していまし た。そして、実際に米国株の強気相場が続いたため、バフェットの予想が的中してまったのです。

 バフェットがバークシャーの経営を握ってから過去49年の間にS&Pの成績がバークシャーを上回ったのはたった10回で、大部分はバークシャーが上回っているわけですから、5年連続でバークシャーが敗れる(2011年はほぼ引き分け)というのは前代未聞のことです。

 しかし、昨年(2013年版)も議論されているとおり、バークシャーの「本質的価値」はこの比較で使われている「簿価」をかなり上回っており、実質的にはバークシャー優位の状況が続いていると、バフェットも私も考えてい
ます。

 ただし、以前はそのような色々なハンディキャップをはねのけてS&Pに圧勝していたバークシャーの運用成績が、低下傾向にあるのは明らかです。理由は明白です。バークシャーの資産規模があまりにも大きくなりすぎているのです。
 例えば1000万円を30%増やして1300万にする方法はたくさんありますが、10兆円を30%増やして13兆円にする方法はそう簡単に見つからない ということです。むしろこれだけの巨額の資金で20%近い運用利回りを維持しているバフェットの手腕は驚嘆に値するでしょう。

 また、(過去10回)S&Pがバークシャーの成績を上回っているときには、ほぼ例外なく市場価格(S&P)が15%以上上昇していることに注目しなければなりません。つまり、S&Pがバークシャーの成績を上回っているのはかなりの強気相場の時だけなのです。

 リーマンショックで大きな打撃をうけ、その後には東日本大震災・福島原発事故が続き、ようやくアベノミクスで息を吹き返した日本にいるとなかなか実感で きませんが、2009年以降米国市場は活況を呈し、2011年以外は15%以上市場価格が上昇しているのです。2008年、リーマンショックで世界中がパ ニックに陥っている中で、積極果敢に投資を行ったバフェットの正しさが改めて確認できます。

 逆に言えば、5年間もS&Pの成績がバークシャーを上回っているということは、「米国市場が過熱」している可能性がかなりあるということです。リーマン ショック前の2007年から2013年までの比較ではバークシャーの成績がS&Pを上回っていますが、これはリーマンショックの時に、バークシャーの持ち 株の下落率が極めて低かったことが主な原因です。つまり、バークシャー(バフェット)は守りに強く、それゆえに巨万の富を稼ぐことができたのです。ですか ら、市場が過熱しているときには一歩距離を置き、市場価格の上昇を傍観しているのですが、長期的に見ればそれがかえって運用成績を上げることにつながるの です。
 ですから、5年も続けてS&Pがバークシャーの成績を上回っているということは、市場の過熱を示すと考えて間違いありません。

 私自身、以前から中国や韓国の崩壊の可能性をしてきましたが、既にウクライナの崩壊は現実のものとなり、天安門への車両突入や昆明の無差別殺傷事件は中国の未来を暗示しています。

 もちろん、バフェットは米国の長期的な将来に極めて楽観的ですし、私も日本の将来(特に東京オリンピック後の2025年頃まで)には超強気です、しか し、株価というのは一直線に上昇するものでは無く、蛇行を繰り返します。「バフェット流」の本質も「いつ何かはわからないが、必ずやってくる危機に備え る」ことです。

 私も日本株のロングポジションに変わりはありませんが「未曽有の買チャンス」がやってきたときに備えて、少しだけ現金ポジションを積み増しました。

(OH)

<既刊>
「バフェットからの手紙」に学ぶ(2013)昇龍社<アマゾン・キンドル版>大原浩(2013年版と2014年版は共通項が多いので、2014年版を読むときにも役立ちます)

☆「バフェットからの手紙」に学ぶ(2014)昇龍社は現在発刊準備中です。
 今しばらくお待ちください。

☆産業新潮
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 4月号から「バフェットに学ぶ投資と経営の成功法則」というタイトルの連載を開始予定です。

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(上巻)+(下巻)
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(戦う経営者・ビジネスマン・投資家のバイブル)大原浩著:発行:昇龍社
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*ブログ「大原浩の金融・経済地動説」http://www.actiblog.com/ohara/

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)