今週(7月14日~7月18日)の東京株式市場は、日経平均株価で51円、率にして0.3%のわずかな上昇となりました。
 週前半は堅調な米国株の動きを受けて買われたものの、後半はウクライナ情勢、中東情勢の緊迫化など地政学的リスクの高まりを受けて調整しました。基本的 には、5月以降の上昇を受けた調整局面にあると考えますが、局地紛争の連続など海外情勢が厳しいにもかかわらず、底堅い動きと評価出来ましょう。

 総合商社の株価動向をみますと、鉄鋼原料(鉄鉱石、原料炭)の市況低迷にもかかわらず、堅調な推移が続いています。鉄鋼原料の取引価格は、スポット価格 を参考に四半期ごとに決定されますが、鉄鉱石は6月にスポット価格が1年9カ月ぶりに1トン当たり90ドルを割り込んだことなどを反映し、14年7~9月 期の豪州産粉鉱石の取引価格は99ドルに決まりました。直前の4~6月期の118ドルからは約16%の下落です。
 一方、原料炭の14年7~9月期の取引価格は、4~6月期と同水準の120ドルとなりましたが、これは10年度以降、取引価格が四半期ごとに決定されるようになってからの最低水準です。

 市況低迷の主な要因ですが、資源メジャーが主要産地であるオーストラリアでの増産を進めるなか、中国では、需要減少により港頭在庫が増加していることに 加え、中国政府が銅、鉄鉱石などの在庫を担保にした金融取引への監視を強めるとの観測も、市況の下落につながったようです。

 鉄鋼原料の持分権益量では、鉄鉱石で三井物産が首位、石炭では三菱商事が首位であり、両社において鉄鋼原料の市況下落の影響が相対的に大きいといえます が、両社の株価が同業他社、TOPIXをいずれも凌駕しておりの比較においても堅調に推移しています。鉄鋼原料の市況下落の影響は株価にはそれほど表れて おりません。これは、両社が自社株買いなど株主還元の強化を打ち出した点が大きく影響しています。

 8月初旬には、総合商社各社の15年3月期第1四半期の決算発表が本格化しますが、鉄鋼原料の市況下落の影響に加え、タイをはじめ一部新興国の政局混迷などによる景気減速の影響、前年同期に業績に貢献した円安が一服した影響などに注目したいと思います。
 ただ、当面は、三井物産、三菱商事を中心に、株主還元強化を評価する株価の上昇は継続するとみています。

(水島寒月)

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