波乱の1月から2月に入り、原油価格の底入れもあり、世界的に株価が上昇。日経平均株価も18,000円台を7年ぶりに回復した一方で、為替市場でのドル・円相場はレンジ内にブロックされた格好になっています。日本の株式相場の為替相場離れでしょうか。


 2月月初に発表された1月の米国雇用統計は、予想を大幅に上回る雇用者増でした。また、これまで懸念されていた労働参加率、賃金上昇率の改善も示された のに加えて、昨年11月と12月の雇用者数も大幅に上方修正されるという驚きの数字となり、市場での関心は改めて、米国の金融当局がいつゼロ金利を解除す るのかに向けられつつあります。

 米国債10年物の利回りは、1月に一時1.6%台まで低下しましたが、直近(2月17日)で2.13%、金融政策の変更予測を反映すると言われる2年物 も0.4%台から0.6%まで反転しました。利上げ観測に加えて、ウクライナ停戦合意やギリシャ懸念の緩和も質への逃避を緩めて、米国債利回りの上昇に寄 与していると見られます。


 一方、日本の国債市場でも2月月初の国債入札が不調だったのを機に国債利回りが上昇。1月には一時0.19%台という史上最低水準をつけましたが、今週 初には一気に0.43%まで利回りが上昇。マイナス金利を続けていた2年物の金利もプラス圏(直近で0.03%)に上昇してきました。因みに、国債利回り の上昇を機に、金融株が買われだしたのはご存じの通りです。金利の反転は、経済の健全化を示しているのか?今後注目されます。

 米国金利の上昇の一方で、この日本の金利反転もドル円相場の上値を抑える背景の一つだと思います。


 先週は一時ドル円が120円台中盤まで急激に上昇し、レンジを上方にブレイクか?という場面もありましたが、日銀幹部からあったとされる「日銀内部で追 加緩和は日本経済にむしろ逆効果との議論が浮上」との報道で一気に118円台に戻し、議論の真偽は不明のまま、その後の相場は方向感を見定めにくい動きが 続いています。

 昨日と本日開催された日銀政策決定会合では、予想通り目新しい決定事項は発表されませんでしたが、先週の報道の真偽について問われるでしょう黒田総裁の 反応次第では相場を動かす要因にもなるでしょう。きっぱりした否定はなく、うやむやということであれば、今後も市場の勘繰りが残る結果になるでしょう。


 1月に続き、2月に入ってからも世界的に金融緩和が続いています。2月3日にはオーストラリアが0.25%の利下げ、経済成長率とインフレ率の予想を下 方修正しました。また、スウェーデンは13日に政策金利をマイナス金利に下げ、国債買い入れによる量的緩和に踏み切りました。悪化するデフレに対応するた め今後も追加緩和の可能性を残しています。

 今年に入ってから10数か国の中央銀行が大なり小なりの規模の緩和に動いたので、もはや金融緩和での自国通貨安作戦にも限界があり、このあたりも、円独歩安の威力が低下している背景があります。

 当面のドル円相場は、117円~120円を中心にボックス圏で動くものと考えています。


 春節、旧正月休みに入る中国の人民元対ドル相場も、昨年秋までの堅調さから反落して元安傾向が続いています。中国も昨年11月に金利を下げ、今月4日に は預金準備率を下げています。昨年10月には対米ドルで一時6.11割れまで上昇した元も、直近では6.26まで下落しており、中国経済刺激のための当局 による元安誘導とみられています。

 一方で、急激な人民元安は中国企業が持つ1兆ドル以上とされるドル債務の返済コスト増になるとも言われます。また、元の通貨としての国際化が言われる昨 今でもあり、貿易黒字国でもある中国のファンダメンタルズを考えると、中期的な元安にも限界があるのではないかと思います。今後の推移に注目していきたい ところです。因みに、対円では、昨年末から18円後半から19円前半の範囲内での動きが続いています。


 今後の注目として、18日夜に米国で発表される1月に金融政策決定会合(FOMC)議事録、特に金融政策変更に対する国際問題という項目の具体的な議論内容。ドル独歩高に対する懸念が論じられれば、相場への影響が大きい
でしょう。また、来週予定されるイエレン議長の議会証言にも注目です。ギリシャの問題は、債権団との対立を回避するとの楽観論が優勢ですが、中期的には問題の火種に変わりはなく今後も目が離せません。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

*2月18日14時執筆
 本号の情報は2月17日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。

式町 みどり拝

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)