既存ビジネスが時代の変化で停滞する中で、業績が低迷。株価の低迷を余儀なくされる中で、突破口を見出す企業側の努力を読み取ることで投資家は大きなリターンを上げることができるのではないか・・。
私の活動もそうした企業を密かに研究して、しかるべきタイミングに備えているということをお伝えしておきたいと思います。そのタイミングは既存事業に代 わるだけの成長事業に具体的に取り組み始めたことを企業側から宣言した時や、持てるキャッシュなどの資産を成長のために活用し始めたことが明確になった時 です。
もちろん、株価が既に上がった状況にある銘柄も業績動向や事業の方向性次第では大きく居所が変わる可能性もありますので、両にらみであることは言うまでもありません。
株価が歴史的な安値圏にある銘柄やPBRが5倍を切っていて、キャッシュリッチな銘柄などもそうした大化けの候補になることがあります。いくら業績が悪く継続疑義がかかるような企業でも存続のために努力する姿があり、それなりの資産があれば業容の変化が想定されます。
上場企業自体が価値のある昨今、社歴の長い企業、知的財産が豊富な企業、財務内容が良好な企業、新規事業への注力が見られる企業など様々な状況の企業が投資家のリスクマネーを待っています。
さて、かつての優良企業も変化に対応できないと衰退の道を辿ることになります。株式市場にはおよそ3600社が上場しており、それぞれに成長を目指していますが、産業の潮流はかつての優良企業を赤字続きの企業に陥らせるほど厳しいものがあります。
企業を応援する株主は結果として配当とキャピタルゲインを得ることになりますが、赤字が続く企業に対する評価は低いものです。それでも企業は生き残りを賭けて手を打たないとなりません。
とりわけキャッシュリッチな老舗企業は時流の変化に伴うビジネスの苦境に対応して新規事業に手を伸ばしたり、経営改革に着手しないとなりません。キャッシュを活かして積極的にM&Aを行うことも選択肢の一つですが、保守的にキャッシュを維持することも選択の一つです。
ビジネスはその時代ごとに盛衰があり、ゴーイングコンサーンである企業は時流に沿うように経営資源を仕向けながら収益を確保しようと懸命な努力を重ねています。
人、物、金の経営の3要素を組合せて成長を図ろうとする日本企業の多くはそれに技術やサービスなどの無形資産が付随して経営を下支えしています。
アベノミクスで環境が良くなっている時こそ事業改革にはチャンスですが、キャッシュリッチな老舗企業においては今後の生き残りを賭けた経営戦略に迫られている姿があります。
かつて本メルマガでも取り上げたことのあるノーリツ鋼機(7744)の場合は保有している豊富なキャッシュをM&Aに振り向け、復活を果たそうとしてい ます。1951年に創業者である西本貫一氏が「写真印画自動水洗機」を開発。その後1976年に「QSS-1型」を開発し、ミニラボの原点を世に誕生させ て以来、同社グループは写真処理分野で確固たる地位を築きグローバルに展開することで、世界中で写真文化の発展に貢献。今ではミニラボシステムのトップ メーカーとして広く認知されていますが、時代は大きく変化し写真のプリントはPCやカメラ付携帯電話の普及によって家庭用プリンターでのプリントが主流に なってしまいましたのでDPE店向けの業務用現像機の需要が減退。稼ぎ頭だったアナログ現像機は縮小し業績の赤字が続いてきたことに対応して同社はこれま で蓄積してきたキャッシュをM&Aや医療機器などの新規事業に振り向けて生き残りを図ろうとしています。
このことが評価され2012年の安値283円から2013年5月に987円まで株価は3倍になったことは記憶に新しいかと思います。株価が300円前後 で開かれた決算説明会に出席した私は買いの評価を下しました。M&Aで「いきいき」という中高年向け通販会社を買収したとの話を聞いたからです。
「いきいき」にはあるファンドの再生案件で、同社がM&Aする数年前に、神楽坂にある本社を訪問したこともあり、その関係で同社のことを知っていたので す。この時は、「いきいき」が中高年向けに業績好調だとの話を別ルートで聞いていましたのでピンときたのです。キャッシュリッチなノーリツ鋼機が業績好調 ないきいきを買ったことは、事業の再生につながるだろうと・・。
企業というのは良い時と悪い時が極端に見られます。経営者の視野が狭いと市場の限度やビジネスの成長の見方に狂いが生じても簡単には対応ができないとい うことです。投資家はその点、駄目だと思えばより成長が見込めるビジネスに取り組んでいる企業に乗り移れば良いのですから案外楽です。
そのノーリツ鋼機の業績は好調だったいきいきの業績が停滞し早くも今期減益を余儀なくされていることから、このところ伸び悩み気味でしたが、またテイボー社という新たな医療機器、材料メーカーのM&Aによって蘇りつつあります。
生き残りを賭けた積極的なM&Aが同社の経営陣の施策となっていますが、ただ、それによって有利子負債が増加し、財務内容は悪化しつつあるように思われ ます。収益性の向上を早期に実現させてかつての経常利益100億円台をクリアしていくことが課題であるかと見られます。そうなってはじめて時価総額は 1000億円台まで拡大することになるものと期待されます。
ノーリツ鋼機が持てるキャッシュを事業拡大のために積極的にM&Aを駆使して有効活用しようとしているのに対し、多くの企業は保守的な対応が見られます。キャッシュは持てる資産の最後の砦となるので、保守的な体質の企業では臆病な対応とならざるを得ないことになります。
ノーリツ鋼機の場合は先代の跡を継いだ現経営陣(娘ムコ)が若いことで、積極的な対応を取るに至っているものと推察されますが、創業者がまだ経営に携 わっていると時流に取り残されてしまうことも考えられます。今、話題の大塚家具もそうですが、若手経営者にバトンタッチして早期に経営改革に踏み切った方 が投資家の受けは良く期待は高まると見られます。必ずしも若手だからうまくいくとは限りませんが、持てる資産を有効活用し思い切った有効な施策を打つこと が赤字で苦境続きの経営者には求められているように思えます。
(炎)
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