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世界の債券市場で再び、長期金利の上昇が目立ってきました。動きの中心になっているのは、年内利上げの観測が高まってきた米国と、QE開始後に金利急低下 があった欧州金利、特にドイツ金利の急反発です。双方の長期金利は、相互に影響し合い、変動率を高め、株式市場や為替市場に影響を与えています。
6月5日に発表された米国の5月雇用統計が、予想範囲の上限に近い強い数字だったため、米債10年物利回りは、2.30台から2.40%へと上昇。
一方、ドイツ国債10年物は、4月につけた最低水準0.07%から5月初旬には0.8%台まで急反発。その後は低下したものの、先週行われた欧州中銀理 事会後の会見で、ドラギ総裁の「(金利の)ボラティリティには慣れておく必要がある」発言が、金利上昇容認と市場から解釈され、直近では0.94%まで上 昇。1%台乗せもあるのでは?との声も出ています。
この水準は、量的緩和策が発表される以前、昨年秋の水準です。ドイツ金利の上昇が米国金利上昇を上回っているため、米独金利差が大きく縮小しました。
通貨ユーロは主に、米欧の金利差や、ギリシャ問題の進展の如何により上下する展開です。6月月初からのユーロの対ドル相場のレンジは、1.08後半~1.13後半で、5月の大きなレンジを抜けず、やや神経質な動きが続いています。
一方、長期金利の上昇は、金融相場を囃して大きく上昇した欧州株式市場に冷や水をかけている状態です。
脱ディスインフレを目指した量的緩和策は3月に実施になりましたが、発表当時の1月から起こっていたユーロ安効果や最近の原油価格反発により物価指数に 改善が見られたことから、量的緩和の早期終了→長期金利上昇の連想に繋がっているようです。早期に長期金利が上昇してしまえば、金融政策を通じての効果は 少なくなりかねません。
先日の欧州中銀理事会後の会見でも既に発表した政策は完全に遂行すると改めて確認しており、毎月600億ユーロの資産購入は当分の間続行されるものと思 います。このところの金利上昇の動きは、徹底した量的緩和の実施を予想した国債買い、ユーロ売りの投機的なポジションが膨れ上がったために起こった反動と も言われます。
また、量的緩和による中央銀行の大量の債券買いにより、債券市場の流動性は低くなっていることも、変動率を上げる要因ではないかと推察します。
一方、ギリシャ支援問題が重大な局面にきています。ギリシャの資金繰りは非常にひっ迫していると伝わっており、デフォルトリスクの高まりが心配されています。
「合意は間近」というコメントも関係者発言としてニュースを見ることも多くなりました。それは「まじか?」と聞きたくなるほど、双方から出される妥協案 の溝は深い印象です。追い詰められても、ギリシャ政府は自らのデフォルトを盾にして、大変「強気」な交渉姿勢を続けているように見受けられます。哲学の違 いかもしれません。
いづれにしろ、来週のEU財務相会議の前までに、支援問題についての合意が期待されます。6月末には、EMUの支援計画が終了するので、それまでの合意が必要です。
また、7月、8月には欧州中銀が保有するギリシャ国債が満期となり、合意なければ新規国債が量的緩和の一環として購入されないことになります。今週来週中のギリシャと債権団の交渉が注目されます。
さて、米国の予想以上に強い雇用統計が発表されると125円85銭まで上昇したドル・円相場ですが、週末に開かれたG7にてオバマ米大統領からドル高懸念発言があったという未確認情報から、124円台に反落しました。
株式相場が大きく下落した9日にはリスク回避的な動きから一時123円台に突っ込みましたが、123円台後半あたりには、ドル買い需要が強いとされまし た。これまでの118~120のレンジが一気に125円に上昇したスピードが速すぎる感はありますが、相場は動くときは動きます。
世界的な債券利回りの上昇で、日本国債10年物も先月までの0.30台後半から直近では0.49%に上昇していますが、米国の利上げ期待による米金利の上昇が勝り、日米金利差の拡大が円安要因として働いています。
来週の米国金融政策決定会合では利上げ決定はないと予想されていますが、今後開かれる会合では毎回利上げが議題になるとされていますし、6月の会合ではFRB各理事による今後の金利予想も示されるとされ注目されます。
このコラムを書いている間に、日銀総裁より「実質実効レートが円安であることから、これからさらなる円安はありそうにない」との発言があり、ドル円相場は反落。123円台から122円もつけています。
日銀総裁からも為替についてのコメントが出たことから、相場はしばらく調整される可能性があります。ただ、当面、相場を見る上で最も重要なポイントは米経済の動向だと思いますので、来週の米国金融政策決定会合に注目していきたいと思います。
最後に、世界的な債券市場の急落(利回り上昇)から、これまで投資家に人気があった高利回り低格付けのジャンクボンド(投機的格付けの債券)から投資家 の資金が流出しているというニュースがブルームバーグで報道されています。債券市場の混乱が、しばらく市場全体の波乱要因になる可能性がありますので、注 意してみておく必要があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*6月10日13時執筆
本号の情報は6月9日の米国市場始値水準を主に引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
6月5日に発表された米国の5月雇用統計が、予想範囲の上限に近い強い数字だったため、米債10年物利回りは、2.30台から2.40%へと上昇。
一方、ドイツ国債10年物は、4月につけた最低水準0.07%から5月初旬には0.8%台まで急反発。その後は低下したものの、先週行われた欧州中銀理 事会後の会見で、ドラギ総裁の「(金利の)ボラティリティには慣れておく必要がある」発言が、金利上昇容認と市場から解釈され、直近では0.94%まで上 昇。1%台乗せもあるのでは?との声も出ています。
この水準は、量的緩和策が発表される以前、昨年秋の水準です。ドイツ金利の上昇が米国金利上昇を上回っているため、米独金利差が大きく縮小しました。
通貨ユーロは主に、米欧の金利差や、ギリシャ問題の進展の如何により上下する展開です。6月月初からのユーロの対ドル相場のレンジは、1.08後半~1.13後半で、5月の大きなレンジを抜けず、やや神経質な動きが続いています。
一方、長期金利の上昇は、金融相場を囃して大きく上昇した欧州株式市場に冷や水をかけている状態です。
脱ディスインフレを目指した量的緩和策は3月に実施になりましたが、発表当時の1月から起こっていたユーロ安効果や最近の原油価格反発により物価指数に 改善が見られたことから、量的緩和の早期終了→長期金利上昇の連想に繋がっているようです。早期に長期金利が上昇してしまえば、金融政策を通じての効果は 少なくなりかねません。
先日の欧州中銀理事会後の会見でも既に発表した政策は完全に遂行すると改めて確認しており、毎月600億ユーロの資産購入は当分の間続行されるものと思 います。このところの金利上昇の動きは、徹底した量的緩和の実施を予想した国債買い、ユーロ売りの投機的なポジションが膨れ上がったために起こった反動と も言われます。
また、量的緩和による中央銀行の大量の債券買いにより、債券市場の流動性は低くなっていることも、変動率を上げる要因ではないかと推察します。
一方、ギリシャ支援問題が重大な局面にきています。ギリシャの資金繰りは非常にひっ迫していると伝わっており、デフォルトリスクの高まりが心配されています。
「合意は間近」というコメントも関係者発言としてニュースを見ることも多くなりました。それは「まじか?」と聞きたくなるほど、双方から出される妥協案 の溝は深い印象です。追い詰められても、ギリシャ政府は自らのデフォルトを盾にして、大変「強気」な交渉姿勢を続けているように見受けられます。哲学の違 いかもしれません。
いづれにしろ、来週のEU財務相会議の前までに、支援問題についての合意が期待されます。6月末には、EMUの支援計画が終了するので、それまでの合意が必要です。
また、7月、8月には欧州中銀が保有するギリシャ国債が満期となり、合意なければ新規国債が量的緩和の一環として購入されないことになります。今週来週中のギリシャと債権団の交渉が注目されます。
さて、米国の予想以上に強い雇用統計が発表されると125円85銭まで上昇したドル・円相場ですが、週末に開かれたG7にてオバマ米大統領からドル高懸念発言があったという未確認情報から、124円台に反落しました。
株式相場が大きく下落した9日にはリスク回避的な動きから一時123円台に突っ込みましたが、123円台後半あたりには、ドル買い需要が強いとされまし た。これまでの118~120のレンジが一気に125円に上昇したスピードが速すぎる感はありますが、相場は動くときは動きます。
世界的な債券利回りの上昇で、日本国債10年物も先月までの0.30台後半から直近では0.49%に上昇していますが、米国の利上げ期待による米金利の上昇が勝り、日米金利差の拡大が円安要因として働いています。
来週の米国金融政策決定会合では利上げ決定はないと予想されていますが、今後開かれる会合では毎回利上げが議題になるとされていますし、6月の会合ではFRB各理事による今後の金利予想も示されるとされ注目されます。
このコラムを書いている間に、日銀総裁より「実質実効レートが円安であることから、これからさらなる円安はありそうにない」との発言があり、ドル円相場は反落。123円台から122円もつけています。
日銀総裁からも為替についてのコメントが出たことから、相場はしばらく調整される可能性があります。ただ、当面、相場を見る上で最も重要なポイントは米経済の動向だと思いますので、来週の米国金融政策決定会合に注目していきたいと思います。
最後に、世界的な債券市場の急落(利回り上昇)から、これまで投資家に人気があった高利回り低格付けのジャンクボンド(投機的格付けの債券)から投資家 の資金が流出しているというニュースがブルームバーグで報道されています。債券市場の混乱が、しばらく市場全体の波乱要因になる可能性がありますので、注 意してみておく必要があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*6月10日13時執筆
本号の情報は6月9日の米国市場始値水準を主に引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)