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ギリシャの債務問題、中国の株下落が当面落ち着き、為替市場は、利上げが予想される唯一の国、米国と、一方で金融緩和の続行が予想される他の国々という対比によるドル高に戻りました。
6月末比での対米ドルでの主要通貨パフォーマンスは、4%以上下落した豪ドルを筆頭に、カナダドル(-3.6%)ノルウエイクローネ(-3.3%)と資源国通貨の下落が目立ちます。日本円は、主要通貨の中では下落幅が最小でした。
資源価格下落は、ドル高期待からなのか、資源価格が下落したことがドル高に繋がっているのか?相互作用とも思えますが、7月に55~60ドル水準で落ち着いていた原油価格が50ドル台に下落、1100ドル台で推移していた金価格も1100ドルを割ってきました。
米国の利上げ期待による下落だけでなく、世界全体の需給緩和、背景には景気減速も指摘されます。原油価格で言えば、今年3月につけた49ドル台の下値で踏みとどまれるか、数年来の下値圏に入ってきましたが、ここで買えるかどうか、価格動向に要注目しています。
商品価格の動向は、物価に影響を与えます。日銀の黒田総裁が21日、今後物価上昇が加速して目標である2%を達成するとの趣旨の発言をしたことで、追加緩和期待が萎み、124円台だったドル円相場は123円台へ戻しました。
ただ、資源価格の下落が更に進んだ場合には、物価上昇の目標達成は遠のく可能性も高まります。円相場を見る上でも、資源価格の動向からは目が離せません。
6月月初にドル円相場が125円台を示現したときの日銀・黒田総裁発言、その直前に伝わったオバマ米大統領発言。どちらも、ドル高を牽制する発言として 解釈され、相場は調整しました。以来、125円から上のドル高円安は、いわゆる「黒田シーリング」と呼ばれることになりました。
昨日も、125円に近づいたところで、シーリングが意識されたのか、上値が重くなったところで、黒田総裁の物価動向についてのコメントで123円台に戻されました。
昨日の総裁発言は多分、意識的に相場水準牽制を目的された発言ではないと思われます。むしろ市場参加者が、「黒田シーリング」を過剰に意識しているのかもしれません。或いは、意識させるように仕向けられたかもしれません。
とは言え、今更ですが、金融政策のトップが「今年中に利上げはする方向」としている米国FRBと、期限未定で年80兆円の金融資産を買い続けている日本銀行の立つ位置の違いは、やはり歴然としています。「シーリング」の効用は、いつまで続くのか?
徐々にシーリングの重さにも慣れきってしまう日も近いかもしれません。
日本サイドの材料で気になるとすれば、安倍内閣の不支持率が支持率を上回ったことです。アベノミクスという単語も忘れそうなほど、アべポリテクスで安保 法案に集中した政権、さらにオリンピック施設の過剰予算でも支持を低下させました。今後、さらに支持率が大きく低下した場合、日本の脱デフレ政策への不信 が株式市場、為替市場に影響する可能性もあります。
経済に力を入れる安定政権への海外からの信認が低下すると、これまでの構図が崩れるリスクも想定しておく必要がありそうです。
ギリシャ救済問題は、関係者の妥協により何とか当面の問題解決をして、ギリシャのデフォルト、ユーロ離脱を避けられました。その後、通貨ユーロは、弱含 みで推移しています。ドル高という要因もありますが、ギリシャ問題の後の注目が欧州中銀の量的緩和に戻ったこともあります。
欧州中銀のドラギ総裁は、先週の政策決定会合後に、量的緩和の徹底、長期金利の上昇を抑制していく趣旨の発言をしました。ユーロ圏の量的緩和政策の徹底を印象づけた発言も、ユーロ売りに繋がっているでしょう。
また、中期的には、ギリシャの問題の根深さも意識され、いづれ問題が再び起こるという懸念もユーロ安に影響しているでしょう。
米国の利上げは、9月より12月の可能性が高いとされます。9月は30%程度とされています。利上げは織り込み済とも言われますが、現実的に開始されるということになれば、ドル高方向への動きは加速するものと思います。
シーリングは、破られるためにあるのかどうか?
今後の推移を見ていきたいところです。
猛暑が続きます。読者の皆様には、お元気で、良い夏をお過ごしください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*7月22日14時執筆
本号の情報7月21日の米国市場始値水準を主に引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
6月末比での対米ドルでの主要通貨パフォーマンスは、4%以上下落した豪ドルを筆頭に、カナダドル(-3.6%)ノルウエイクローネ(-3.3%)と資源国通貨の下落が目立ちます。日本円は、主要通貨の中では下落幅が最小でした。
資源価格下落は、ドル高期待からなのか、資源価格が下落したことがドル高に繋がっているのか?相互作用とも思えますが、7月に55~60ドル水準で落ち着いていた原油価格が50ドル台に下落、1100ドル台で推移していた金価格も1100ドルを割ってきました。
米国の利上げ期待による下落だけでなく、世界全体の需給緩和、背景には景気減速も指摘されます。原油価格で言えば、今年3月につけた49ドル台の下値で踏みとどまれるか、数年来の下値圏に入ってきましたが、ここで買えるかどうか、価格動向に要注目しています。
商品価格の動向は、物価に影響を与えます。日銀の黒田総裁が21日、今後物価上昇が加速して目標である2%を達成するとの趣旨の発言をしたことで、追加緩和期待が萎み、124円台だったドル円相場は123円台へ戻しました。
ただ、資源価格の下落が更に進んだ場合には、物価上昇の目標達成は遠のく可能性も高まります。円相場を見る上でも、資源価格の動向からは目が離せません。
6月月初にドル円相場が125円台を示現したときの日銀・黒田総裁発言、その直前に伝わったオバマ米大統領発言。どちらも、ドル高を牽制する発言として 解釈され、相場は調整しました。以来、125円から上のドル高円安は、いわゆる「黒田シーリング」と呼ばれることになりました。
昨日も、125円に近づいたところで、シーリングが意識されたのか、上値が重くなったところで、黒田総裁の物価動向についてのコメントで123円台に戻されました。
昨日の総裁発言は多分、意識的に相場水準牽制を目的された発言ではないと思われます。むしろ市場参加者が、「黒田シーリング」を過剰に意識しているのかもしれません。或いは、意識させるように仕向けられたかもしれません。
とは言え、今更ですが、金融政策のトップが「今年中に利上げはする方向」としている米国FRBと、期限未定で年80兆円の金融資産を買い続けている日本銀行の立つ位置の違いは、やはり歴然としています。「シーリング」の効用は、いつまで続くのか?
徐々にシーリングの重さにも慣れきってしまう日も近いかもしれません。
日本サイドの材料で気になるとすれば、安倍内閣の不支持率が支持率を上回ったことです。アベノミクスという単語も忘れそうなほど、アべポリテクスで安保 法案に集中した政権、さらにオリンピック施設の過剰予算でも支持を低下させました。今後、さらに支持率が大きく低下した場合、日本の脱デフレ政策への不信 が株式市場、為替市場に影響する可能性もあります。
経済に力を入れる安定政権への海外からの信認が低下すると、これまでの構図が崩れるリスクも想定しておく必要がありそうです。
ギリシャ救済問題は、関係者の妥協により何とか当面の問題解決をして、ギリシャのデフォルト、ユーロ離脱を避けられました。その後、通貨ユーロは、弱含 みで推移しています。ドル高という要因もありますが、ギリシャ問題の後の注目が欧州中銀の量的緩和に戻ったこともあります。
欧州中銀のドラギ総裁は、先週の政策決定会合後に、量的緩和の徹底、長期金利の上昇を抑制していく趣旨の発言をしました。ユーロ圏の量的緩和政策の徹底を印象づけた発言も、ユーロ売りに繋がっているでしょう。
また、中期的には、ギリシャの問題の根深さも意識され、いづれ問題が再び起こるという懸念もユーロ安に影響しているでしょう。
米国の利上げは、9月より12月の可能性が高いとされます。9月は30%程度とされています。利上げは織り込み済とも言われますが、現実的に開始されるということになれば、ドル高方向への動きは加速するものと思います。
シーリングは、破られるためにあるのかどうか?
今後の推移を見ていきたいところです。
猛暑が続きます。読者の皆様には、お元気で、良い夏をお過ごしください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*7月22日14時執筆
本号の情報7月21日の米国市場始値水準を主に引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)