今年も10月に入り、四半期が残されるのみになりました。今年も、様々な事象に振り回された市場でしたが、継続的に最も注目されてきたのが米国の金利正常化でした。

 金利正常化は、金融引き締めというよりも、将来の金融政策の幅を確保するためにも必要と考えられてきました。
 9月の政策決定会合でも利上げ決定は見送られ、先週発表された米雇用統計の9月のみならず、前月までの数字の下方修正もあり、利上げの来年以降へのずれ込みを予想する向きを増やしました。


 世界は全て解釈で動いていると言われますが、先週末発表されたた米国の雇用統計への反応はまさに諸刃の解釈による反応でした。

 市場は、まず失望でリスクオフに解釈して始まり、次に金融相場が続くとの解釈でリスクオンの株高、債券安、ドル安&円安に動いて週を終わり、直後の反応を見て眠った人たちにとっては土曜日の朝起きて見たクロージング値には目を疑ったものと思います。

 為替市場では、一時ドル円相場が119円を割り、サポートの118.80水準を試す場面がありましたが、終わってみれば120円台。また、250ドル以 上の下げた株価も大幅に上昇して引け、週明けの市場は世界的に安定した動きを見せ、荒れた8月9月から、そろそろ底入れに?とも思わせる動きも感じます。


 米国の利上げが遠のいたという予想が多くなるにつれて、これまで売り込まれていた新興国通貨の多くが買い戻されています。

 10月月初から本日までの対米ドル通貨パフォーマンス(拡大主要通貨)を見ると、売られたのはアルゼンチン・ペソ(-0.2%)日本円(-0.07%)で、他の通貨はほぼ対ドルで上昇(ドル安)で動きました。
 最も上昇したのが、インドネシア・ルピア、次にロシア・ルーブル、マレーシア・リンギットなど、これまで大きく売られていた通貨です。
 また、日本人投資家にも人気があるブラジル・レアルやトルコリラも大きく売り込まれていましたが、ここへ来て底値から反発しています。

 このあたりにも市場の不安感が和らいできた印象があります。


 ところで、9月に利上げを見送った際に、市場の一部からは、FRBには強気派のタカ派柔軟なハト派に加えて超弱気なチキン(議長のこと?)が加わったと揶揄されました。
 リスクを恐れ過ぎて利上げの時期を逸してしまったのではないかとも言われますし、また、「決められない当局」としてFRB当局への信頼感の低下を指摘する声もあります。

 FRB議長は、「今年中の利上げ」について米国の経済指標次第とコメントしてきましたが、9月のFOMC終了後の議長会見の中では 「中国などの国外経 済の不透明さ」にも言及しました。一国の中央銀行が海外要因まで持ち出すことに違和感もあり、「いつになっても利上げは決められない」というコンセンサス につながります。


 さて、このところ、119円から121円でのレンジ取引が続いているドル円相場ですが、米国の利上げが遠のいた予測から、ドル円を支えるドル高要因は薄 れる一方で、円安要因となるのは、需給要因である海外投資の他に、引き続き日銀による追加緩和期待、或いは、物価目標達成の遅れによる異次元緩和の長期化 リスクが挙げられます。


 本日7日に終了した日銀の政策決定会合では、事前予想通り現状維持が決定され、終了後の記者会見で黒田日銀総裁は、現在の政策は功を奏しており、追加緩和についてはコメントはされませんでした(コメントするわけはないのですが)。

 10月は、30日にもう一度政策決定会合があるので、追加緩和期待は続き、株買い、円売りの理由の一つにされるのではないかと思います。


 先月25日、安倍首相と黒田総裁は会食(ランチ)会談をされたと報道された際に、日銀に追加政策要請があったのではないか?との憶測を呼びました。当然 ながら総裁により否定されはしましたが、もし現在の安倍政権の掲げる政策に即した金融政策要請をするとしたら、どんな政策になるのでしょうか。不明点が多 くあります。

 安全保障関連の法整備という野望を果たした安倍政権が、支持率挽回のためもあってか、新しい目標2020年「名目GDP600兆円」を掲げてきました。
 一方、新しい3本の矢は、強力な金融緩和や財政政策出動、成長戦略ではなく、「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」に替わり、企業経済色から家計、国民受けを狙った印象を受けます。
 企業への利益重視から家計重視へと移るとすれば、物価高騰の一犯人である円安、資産家重視の株高政策はNGと解釈できないこともありません。
 一方で、「600兆円GDP」を達成させようとすれば、マネーを膨らませる政策が必要になるでしょう。

 本日、内閣改造が行われた安倍政権の掲げた政策がどのような形で実行されていくのか、よく見て行く必要がありそうです。


 年末が意識されるころとなり、投信や企業の決算に関連した動きも出てくることでしょう。引き続き、乱高下も予想されます。

 チャンスを丁寧に拾えるように、マーケットに付き過ぎず、離れ過ぎず、資金管理を万全にしつつ、冷静につき合っていきたいものですね。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


*10月7日18時執筆
 本号の情報は、主に10月7日のロンドン市場始値水準を引用しています。
 なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。


式町 みどり拝


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)