期待で始まり失望に変わり、怒りに変わるのがIPO相場の典型パターンですが、なぜこんなことがわかっていながら、天井だろうと思っても買ってしまいがちになるのですから不思議です。
怒りまで行く前に会社からもう少し投資家に夢と希望を与えてくれると良いのですが、多くの発行体は上場して資金が集まれば知らないふりをするのが通例です。
それでも中には投資家のことを考え、真剣にかつ積極的に説明会を開催しながら啓蒙活動に努める企業もありますが、企業によっては業績を向上させることがミッションなのに余計な手間がかかってしまうと考える経営者もお見えになるのかも知れません。
忙しい経営者であれば、これは仕方のないことなのかも知れませんが、今の時代、メディアが発達していますので、自ら情報発信することだってできるのですから、自社サイト内に情報発信のメディアを置くぐらいのことをしても良いのではないかと思います。
余りにひどい株価下落を見るにつけ、なぜ発行体企業の経営者はこうも体たらくしてしまうのかと思ってしまいます。
理不尽な株価の下落は経営者にとっては通信簿に×がついてしまってもおかしくないと考えるぐらいの気持ちを持つべきではないでしょうか。
自社株価を語るのは御法度と思う経営者もお見えかも知れませんが、自ら語ることが投資家や株主と一体感を持つことにつながります。
株価の変動は結果として時価総額の変動につながります。10億円の利益を上げていれば時価総額は100億円で良いという理論的な関係を持つ経営者であれ ば、そうした状況下で時価総額が仮に50億円だった場合はもっと株価を上げるためにアピールしても良いのではないかと思います。
これはCEOではなく、むしろCFOの役割かも知れませんが、多くのCFOは決算の数字面の内容を棒読みしているだけで、その内容が株価にどう反映されるのかを含めて株主や投資家にアピールする説明でないと意味がありません。
さて、このように成長期待でIPO直後に買われた銘柄もその後の成長期待の剥落や予想外の事業停滞などの要因に加え、VCなどの売却による需給の悪化から大幅な下落につながるケースが見られます。
短期投資家の投げに対して長期投資家の買いが入ることで株価は落ち着くのですが、それでも年末には特有の節税対策の見切り売りが重なり想定以上の下落に見舞われるケースも出て参ります。
IPO企業が数多く上場市場とするマザーズ市場にはそうした期待感をもって投資家の人気を博した銘柄がたくさん登場して参りますが、期待が高ければ高いほど期待外れになった場合の下落は大きくなってしまいます。
それでもよく見ればそうした大幅な下落トレンドに見舞われた銘柄の中には意外な成長企業が見出せる可能性もあります。投資家の皆さんは、短期指向で今人気化している銘柄に目が向きがちですが、しっかりとIPO後の下落トレンド銘柄にも関心を持って頂きたいと思います。
10月28日に決算説明会が開催されたVoyage Group(3688)も昨年7月のIPO直後から下落トレンドを描いてきた典型的な銘柄と言えます。
上場後の高値4335円は、公募価格2400円に対して80%上昇した水準ですが、ここから一気に本年8月25日の安値1470円まで66%の下落を見たのですが、その背景はゲーム業界向けの広告収入が伸び悩んだことなどが考えられます。
前期実績もやや市場の期待よりも低かったですし、今期の見通しも幅をもたせて表現しており、その下限値では減益になってしまうという印象からやや消極的な印象が持たれています。
投資家はそうした姿勢にネガティブな印象をもった可能性があります。
それでも会社側は東証1部上場を実現させ、初めての配当を実施したほか10万株の自社株買いを発表するなど企業価値向上に向けた施策を打ち出すなど、株価のこれ以上の下落を食い止めようと図っています。
投資家は前期決算発表を見て売りをぶつけた結果、引けてみれば前日比18%も株価が下落してしまいました。業態がやや理解しにくいので幅広い個人投資家 層が買い出すには更にIR(メッセージの発信)に努めないとなりませんが、企業側から個人投資家にもっとわかりやすいメッセージを発して頂くことが、多く の個人投資家のファンづくりにもなるかと思われます。
投資家の皆さんは同社のような成長性は底流にあっても長期下落トレンドを継続している企業が発するIRに今後、注目して頂く必要があります。
PER、PBR、配当利回りなどの指標を冷静に眺めながら下値の目途をどこに置くかを検討した上であくまでも長期的な視点で取り組まれることが肝要です。
企業が発信する情報から成長性を見出していくことを日常の投資活動の基本として頂くことを切望します。
このほか、ALBERT(3906)、アライドアーキテクツ(6081)などIT系銘柄には長期下落トレンドの事例が数多く見出せますが、現実に業績のトレンドが悪い企業から発せられますIR情報は心なしか元気がないように感じられます。
それでもビジネスモデルなどを十分に吟味して未来の成長の姿を想像しながら投資にあたられると結果としてリターンも上げやすいと考えられます。
(炎)
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