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11月6日に発表された10月の米雇用統計が予想をはるかに上回る数字であったことから、一気に米国の金利正常化(利上げ)への予想が高まり、為替市場では米ドルが上昇。
米ドルの対主要通貨(貿易規模等を勘案した比率で構成されたバスケット通貨)であるドル指数は、直近で2014年3月の高値100.30台に迫る99.70台まで上昇しています。
雇用統計発表前に比べて、直近でドル・円相場は121円台から123円台へ、ユーロ・ドル相場は1.10台から1.06台までのドル高水準です。
ただ、ドルの利上げを織り込んできた現時点のドル・円相場123円後半水準は中国の景気懸念で世界的にリスク回避の動きが高まった8月21日の高値水準 であり、その後は抜けていない上値が重い場所ですし、その上には黒田ラインと言われる125円が控えてはいます。それぞれを抜けていくには、更なる追加材 料が必要でしょう。
一方のユーロ・ドルも、1月の量的緩和策開始後に、長短金利が過剰に低下した3月、4月につけた安値1.0458に接近しつつあり、やや下落スピードが緩やかになっています。
今週明けの16日のマーケットは、パリでの大規模なテロ事件に対して、株も為替もリスク回避の動きから始まりました。今回のようなテロ事件が起こり、軍 事的緊張も高まった場合、為替市場の反応は、一般的に、それが「どこで」起こり、「どんな国々が絡んでくるのか」、また、その国の通貨が「どのような状況 にある」と解釈されているかにより異なります。
今回の事件ですと、ユーロを売りに対して中立国スイスのフランを買う。また、安全面と流動性から日本円を買う、と言った行動を思い起こします。
しかし、現在のスイスの金融政策は、スイスフラン高を回避するために、対ユーロでの一定水準死守政策を行っています。したがって、今回の場合は殆どリス ク回避の対象にはならず、今回ユーロ売りの対価になった主要通貨は米ドル、カナダ・ドル、英ポンドあたりでした。その後、時間が経ってくるに従い、マー ケットはそれまでの地合いに戻り、それぞれの国の金融政策が材料になりました。
ユーロに関しては、欧州中銀による12月の追加緩和の公言もすでにありますが、テロ事件により、クリスマス、新年に向けて消費低迷が懸念されるようだ と、緩和規模が大きくなることも期待されてくることも考えられます。今年春の安値1.0458を意識した、もう一段のユーロ売りの材料になる可能性は高い と見ています。
12月の米金融政策決定会合(FOMC)で金利を上げる確率が高まったとの思惑から、ドル金利が上昇しています。
10年物国債利回りは、雇用統計発表直後2.35%水準まで上昇、テロ事件も含めてリスクの高まりから質への逃避で2.2%台まで反落しましたが、金融 政策の変更を最も反映すると言われる2年物国債利回りは、雇用統計発表直後には0.89%、直近でも0.86%と、年初来の平均0.63%を大きく上回る 水準にあります。
また、年末を控えている特殊要因もあると思いますが、3か月~6か月といった短期金利が上昇しています。年初来平均、約0.57%だった6か月物のドル 金利は13日には一時0.93%まで上昇しました。短期金利は今年に入ってから少しずつ上昇してきましたが、8月末頃から目立ってきました。
今朝の日経新聞にも、ドル調達コストの上昇についての記事が掲載されていました。
年末にかけて、一般的にドルのデポジット市場はタイトになること、今年は特に金利先高観が強まっていることもあり、ドル調達金利の上昇がドル高をサポー トする要因として働く可能性は高いと思います。為替を見るうえでも株式を見る上でも、金利動向には気をつけておきたいところです。
本日18日と19日は、日銀政策決定会合が行われています。
10月末に高まった追加緩和期待はすっかり影を潜め、追加緩和予測が激減しているとメディアでは報道されていました。前回の政策決定会合の後、日銀は物 価目標達成時期を来年2016年前半から後半に延期しましたが、黒田総裁は原油安要因を除けば、目標達成に悲観的な見方は示していませんでした。
一方、日本の債券市場の見方は違っているようです。
10年物国債(固定金利)と同期間の物価連動債の利回り格差から算出する予想インフレ率は、今後10年平均で0.76%の物価上昇率に過ぎず、今年5月から下落を示しています。ちなみに、米国とドイツの予想インフレ率は下げどまりから上昇を示しています。
米国、欧州と異なり、長期間続いてきた日本のデフレ体質は、そんなに簡単には脱せないかもしれません。期待が萎んでいる日銀による追加緩和ですが、今回はないとしても、近未来的に実施の可能性は未だ残っているように思います。
125円以上の黒田ライン(シーリング)が意識される水準になり、ここからの上値の重さを指摘する声もありますが、じわじわとドル高円安傾向の流れは続いていくものと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*11月18日13時執筆
本号の情報は、主に11月18日の東京市場正午のレートを引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
米ドルの対主要通貨(貿易規模等を勘案した比率で構成されたバスケット通貨)であるドル指数は、直近で2014年3月の高値100.30台に迫る99.70台まで上昇しています。
雇用統計発表前に比べて、直近でドル・円相場は121円台から123円台へ、ユーロ・ドル相場は1.10台から1.06台までのドル高水準です。
ただ、ドルの利上げを織り込んできた現時点のドル・円相場123円後半水準は中国の景気懸念で世界的にリスク回避の動きが高まった8月21日の高値水準 であり、その後は抜けていない上値が重い場所ですし、その上には黒田ラインと言われる125円が控えてはいます。それぞれを抜けていくには、更なる追加材 料が必要でしょう。
一方のユーロ・ドルも、1月の量的緩和策開始後に、長短金利が過剰に低下した3月、4月につけた安値1.0458に接近しつつあり、やや下落スピードが緩やかになっています。
今週明けの16日のマーケットは、パリでの大規模なテロ事件に対して、株も為替もリスク回避の動きから始まりました。今回のようなテロ事件が起こり、軍 事的緊張も高まった場合、為替市場の反応は、一般的に、それが「どこで」起こり、「どんな国々が絡んでくるのか」、また、その国の通貨が「どのような状況 にある」と解釈されているかにより異なります。
今回の事件ですと、ユーロを売りに対して中立国スイスのフランを買う。また、安全面と流動性から日本円を買う、と言った行動を思い起こします。
しかし、現在のスイスの金融政策は、スイスフラン高を回避するために、対ユーロでの一定水準死守政策を行っています。したがって、今回の場合は殆どリス ク回避の対象にはならず、今回ユーロ売りの対価になった主要通貨は米ドル、カナダ・ドル、英ポンドあたりでした。その後、時間が経ってくるに従い、マー ケットはそれまでの地合いに戻り、それぞれの国の金融政策が材料になりました。
ユーロに関しては、欧州中銀による12月の追加緩和の公言もすでにありますが、テロ事件により、クリスマス、新年に向けて消費低迷が懸念されるようだ と、緩和規模が大きくなることも期待されてくることも考えられます。今年春の安値1.0458を意識した、もう一段のユーロ売りの材料になる可能性は高い と見ています。
12月の米金融政策決定会合(FOMC)で金利を上げる確率が高まったとの思惑から、ドル金利が上昇しています。
10年物国債利回りは、雇用統計発表直後2.35%水準まで上昇、テロ事件も含めてリスクの高まりから質への逃避で2.2%台まで反落しましたが、金融 政策の変更を最も反映すると言われる2年物国債利回りは、雇用統計発表直後には0.89%、直近でも0.86%と、年初来の平均0.63%を大きく上回る 水準にあります。
また、年末を控えている特殊要因もあると思いますが、3か月~6か月といった短期金利が上昇しています。年初来平均、約0.57%だった6か月物のドル 金利は13日には一時0.93%まで上昇しました。短期金利は今年に入ってから少しずつ上昇してきましたが、8月末頃から目立ってきました。
今朝の日経新聞にも、ドル調達コストの上昇についての記事が掲載されていました。
年末にかけて、一般的にドルのデポジット市場はタイトになること、今年は特に金利先高観が強まっていることもあり、ドル調達金利の上昇がドル高をサポー トする要因として働く可能性は高いと思います。為替を見るうえでも株式を見る上でも、金利動向には気をつけておきたいところです。
本日18日と19日は、日銀政策決定会合が行われています。
10月末に高まった追加緩和期待はすっかり影を潜め、追加緩和予測が激減しているとメディアでは報道されていました。前回の政策決定会合の後、日銀は物 価目標達成時期を来年2016年前半から後半に延期しましたが、黒田総裁は原油安要因を除けば、目標達成に悲観的な見方は示していませんでした。
一方、日本の債券市場の見方は違っているようです。
10年物国債(固定金利)と同期間の物価連動債の利回り格差から算出する予想インフレ率は、今後10年平均で0.76%の物価上昇率に過ぎず、今年5月から下落を示しています。ちなみに、米国とドイツの予想インフレ率は下げどまりから上昇を示しています。
米国、欧州と異なり、長期間続いてきた日本のデフレ体質は、そんなに簡単には脱せないかもしれません。期待が萎んでいる日銀による追加緩和ですが、今回はないとしても、近未来的に実施の可能性は未だ残っているように思います。
125円以上の黒田ライン(シーリング)が意識される水準になり、ここからの上値の重さを指摘する声もありますが、じわじわとドル高円安傾向の流れは続いていくものと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*11月18日13時執筆
本号の情報は、主に11月18日の東京市場正午のレートを引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)