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日本の事業支援体制
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日本の事業支援体制

2016-02-01 16:23
    前回のコラムでは、資源安やインバウンド減少を理由に売られた銘柄の中でボトムを探す時期が近いかも知れないとの感想で書きましたが、株式市場全体を見渡すと、昨年の(日経平均で)20,000円近くの株価イメージが残っている為か?銘柄のどれもが安く感じてしまいます。

     改めて今月3週間の値下がりは凄まじかったですね(汗)。


     需給要因だけですから、良くも悪くも何か材料が出ると(中には当たり前と言った程度の数値などでも)関連しそうな銘柄を含めて一斉に売りや買いが増えて 一方通行になるのですから。何とも無味乾燥なつまらないマーケットですが、ここ最近は想定外に(機械的に?)売られ過ぎと感じたものは少し仕入れていま す。
     既に「買っても良いかな?」と考えていたものが一緒に連れ安するのですから、「冬物大セール」に行ってみたら偶然掘り出し物を探し当ててしまったような感覚です。楽しみながら投資を続けられるよう工夫しています(^^)


     ところで、ここ数年は倒産件数が減っていますが、その理由を結論から申し上げれば、景気回復の恩恵もそれなりにあるものの超低金利が続いていることと共 に(政府の介入もあり)銀行の貸出姿勢がリーマンショック後から今に至っても余り変わらず、結果としてゾンビ企業が生き延びているだけとも言えます。

     銀行は融資残高の減少を回避したいことや行政からの圧力もあり既存の貸出先には甘い審査がされますが、不動産向けなどの一部を除いて、こと新規事業への貸し出しとなると途端に腰が引けてしまうと言う分かり易い事例がありました。


     仕事仲間の紹介で、ある飲食店経営者が新しいカテゴリーの店舗を出店し、運転資金の調達で相談に来られた件です。

     昨年の夏過ぎに開店したのですが、面白い工夫をした店舗作りが奏功し初月度から黒字になりました。小職も話を聞いて「これは良いかも」と感じた次第で す。間もなく拡充が必要な状況になり設備投資とともに運営費や人件費も増加が見込まれたため外部からの調達をと考えて来られた訳です。

     金融機関に提示する数値資料や説明資料を充実する作業とともに、色々と話し合った結果、足元の状況などを勘案すれば現時点では公的融資を受けるのが良いでしょうとなり、資料を整えた上でこの経営者は某公的金融機関に融資の申し込みに行きました。

     最初の面接時には、事業内容も明瞭であり既に黒字が出ているくらいだから審査は通るだろうとの前向きな回答を得たとの報告を受けました。新規の融資とは言っても1,000万円弱の少額の運転資金中心の融資案件です。

     さて3週間後に次回の面接の約束となり、途中の電話のやり取りでも担当者とは色良い雰囲気だったそうですが、面接の1週間ほど前になって急に「新規融資 は難しい」との連絡を受けたそうです。その理由とは、まだスタートして1年も経っていないので年度の決算書も無いし担保も無い。しかも数か月程度の月次試 算表だけでは資金繰りの安定性が評価できないために上が審査を渋っていると言うものでした。

     もともと担保になる不動産など無くアイデア一つで頑張ってきた方ですから、在り来たりの民間銀行での融資は受け辛いだろうからと公的融資を選んだのですが・・・。

     その後の面接でも、まだ開店して間もないのだから決算書など出せる訳も無く、少額ではあるが黒字であり資金も廻っている中で、この融資はとても重要であ ると訴えても、お茶を濁したような回答に終始したそうです。結果としてこの融資は見送りとなり1年後にまた来てくださいとなりました。


     この時点では公開やM&Aなどを考えられるステージではありませんから、リスクマネーによる調達は出来たとしてもクラウドが考えられる程度で手間の割に 期待出来ません。もちろんエンジェル投資家を探すといった事業でもありません。もう少し大きくなれば売掛債権を利用した融資を受けるなども考えられます が、通常は小口の融資がこのような事業の支援には欠かせないはずです。

     ところが担保(不動産)が条件であったり、数年以上の資金繰りや実績が掴める案件でなければ普通の銀行は融資してくれません。そのために新規事業や中小 企業の支援を目的に公的金融があり、大々的に「支援します!」と謳っているのですが、机上のお役所仕事の限界と言うか、銀行同様に目利きが出来ないと言う べきか、これでは幾ら安倍政権が旗を振っても起業を増やすことは難しいと感じた事例でした。


     もちろん省庁毎に事業支援制度(もちろん似た内容でも全て縦割り)による補助金や融資制度があるため、その省庁が押している事業イメージに近しい事業で あれば幾らか支援を受け易いのですが、ここ数年はその補助金目当てに見栄えの良い計画書を描いて事業を立上げ、補助金を受けて間もなく潰れた、または逃げ た・・・なんて案件が続出したため急に慎重になった省庁窓口もあります。
     何せ春先になると翌年度の支援概要や予算などが省庁毎に公表されるため清濁入り乱れて補助金獲得に殺到する訳ですから、本当に必要なところには金が廻ら ず、一方で、補助金を出したらトンズラしちゃったなんて案件もあったために担当者は腰が引けてしまったと言った話しも聞きます(苦笑)


     金の匂いがするところには不審な輩がわんさと集まりますから、さもありなんと言ったところですが、相変わらずの担保主義と事業評価が出来ないニッポンの金融という構図でしょうか。

     これから来年度の助成金、融資などの新たな条件が出てくる時期です。公的融資などでの資金調達をお考えの経営者の皆さまは、この辺りの彼らの思考形態を考慮した上で成功に繋げてください(^^)


     日本の金融業界には思想改革が必要です。いつまでも過去の成功体験にしがみ付いている限り、また役人が排他的組織(縦割り)のまま障害となっている限 り、起業数の増加は望めないのでしょう。「七転び八起き」とは良く聞きますが、これはほんの一握りの成功者の話しです。現実には「一転び二起き」でさえ至 難であることは、仕事自体に夢が持てなくてもサラリーマンや公務員を目指す(または続ける)現実を見れば明らかです。


    (街のコンサルタント)


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)
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