北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■ラーメン活動月報(9月)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『百年続くという意味』山本剛志
福岡県久留米市で「とんこつラーメン誕生祭 久留米で生まれて80年」が開催された。これは、久留米の南京千両が創業してから80年を記念したイベントで、九州各地から集まった豚骨ラーメンに参加者が列をなし、完売する人気ぶりに驚いた。だが、この「80周年」には前史がある。私はその日、西鉄久留米駅構内の食堂街に入っている「光華楼」を訪問した。ここは1917(大正6)年創業で、今年で創業100周年を迎えている。「南京千両」のご主人も光華楼を訪れ、豚骨スープのヒントをチャンポンに得たと言われている。
「創業100年」という言葉はただごとではない。先日、東京の製麺所として知られる「大成食品」が創業100周年を記念して記念式典を開催した。私も会場に伺わせていただいたが、現在の鳥居憲夫社長は三代目。当たり前だが、事業を100年続けるためには三代続かなければならない。しかも、その間には戦争と戦後の物資不足、高度経済成長やバブルに伴う職業感の変遷が次々とある。近年では、人手不足による廃業も相次いでいて、それらもくぐり抜けた上での100年には大きな意味があると思う。
銀座の老舗「萬福」は1929(昭和5)年創業で、今年で88年。創業者の孫が、三代目として暖簾を守っている。日本で一番古いと言われる、尼崎の「大貫本店」は1912(大正元)年創業で、今年で105年。こちらの店主は四代目。どちらも、単に店を継いだわけではなく、創業者からの想いを受けつぎ、同世代を生きる我々に、自分の店の味を提供している。もちろんその味は同じではなく、時代に合わせながら、これまでの客を裏切らないように改良されている。
日本におけるラーメンの歴史は、「浅草来々軒」の創業から数えても107年。この業界で100年続く老舗は稀有な存在である。これからの店が100年続くためには、少なくとも三代、人と味を伝承できるようになっていなければいけない。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は8月にオープンした話題の新店「豚骨麺 あの小宮」の 「らーめん」を、山路と山本が食べて、語ります。