北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第42回)
『ラーメンの憂鬱』〜ラーメン屋の仕事の範疇とは(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜ラーメン店の方向け 立地問題ケーススタディ その2~(山本剛志)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『限定ラーメンの意義』北島秀一
「限定」にも本当にいろんな状況がある。通常の店舗が自分自身の限定として出す物もあれば、他店と協力してのコラボ、各種イベントでの限定品、考えようによってはいわゆる二毛作も限定の変形だろう。あまり幅を広めても支離滅裂になるので、今回は「お店が自分の店舗で、単独で出す限定品」に話を限ってみる。
「限定の意味」は提供側とお客側にそれぞれある。提供側から見ると、話題性の喚起や創作意欲の発揮、マスコミやメディアとのタイアップ、季節に合わせた品の提供などが主な所か。お客側から見ると、好きなお店の様々な面が見られる・スペシャル試作品的な限定だとある程度儲け無視のハイレベルな物が楽しめる・コレクター魂が癒される・ラヲタ仲間との話題性と言ったあたりだろうか。
私自身は、基本的には限定ラーメンには好意的だ。特に作り手側が引き出しを増やし、腕を磨いて行くには実際に作り、販売提供し、お客の生の声を聞くのが最適だと思うのが一番の理由。実際に「限定」を経てから二毛作やネクストブランド、新店などに至るケースも少なくないし、あるいは限定を任された店長・副店長・若手クラスがその後その限定品を引っさげ独立するケースもある。また直接その品がその後に広がらなくても、限定を出す上で勉強した事がその後のレギュラーに活かされると言うのもよく聞く話だ。
ただ、最近ちょっとこじんまりした限定が増えて来ていないかな、との思いが少しあるかな。全部でせいぜい10~15杯程度を仕込み、長くても2~3日で売り切ってしまう。当然ながら広くは認知されず、しょっちゅうそのお店に行く常連や、たまたま寄ったファンの間でのみ消費され、謂わば「身内誉め」で終わってしまう品のケースがしばしば耳に入る。まあこれはFBやTwitterなどの発達でそう言う情報がより広く拡散されるようになっただけなのかも知れないが。もちろん、たまたま手に少量手に入った食材を使い切りたいとか、実験的に仕込んだ物を消費するだけのケースもあるんだろうけど、あまりに小規模な限定ばかりの連発は、どうもあまり見ていて良くは思えない。折角だから広く提供してこそより意義のある物になるんではないか、と思ったりもする。
あと、これは全く私事による物だが、一ラヲタとしての北島にとっては、現在の限定はあまりに多くなりすぎた。昨年以来大幅に食べられる数を減らしている自分にとっては、限定ラーメン自体をほぼ全部カットせざるを得ない。ただ、逆にそうやって改めてレギュラーを中心にラーメンを食べる事で、各お店の物の考え方、ラーメンへの思いやあり方などを考えるキッカケになったと思う。
ラーメンの食べ方は人それぞれで本当にいろんな楽しみ方があるが、例えば一度、過去一ヶ月ほどの自分の食べたラーメンを「新店」「限定」「既存店のレギュラー」に分類してみて、自分の食べ方を分析してみると面白いかも知れない。(ラーマガ004号より転載)
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は今年6月に待望の東京初進出を果たした「長浜ナンバーワン」の「長浜らーめん」を山路と山本が食べて、語ります。