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無印良品の名作を観察しまくったら、無印デザインのフィロソフィーが見えてきた
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無印良品の名作を観察しまくったら、無印デザインのフィロソフィーが見えてきた

2019-10-13 12:30
    暮らしにまつわる道具って面白いですよね。

    良い道具を手に入れると、使わないときにもしみじみその造形を観察してしまったりすることがあります。

    最近、無印良品の「ソーラークッキングスケール」を手に入れたのですが、ソーラーバッテリーで電池が切れにくかったり、シンプルかつ使い勝手のよい造形だったり、しみじみ良い道具だな〜と思っています。

    そんなクッキングスケールを観察していたとき、あることに気づきました。

    無印なのに「タニタ」?

    何気なく裏面のシールを見ていたら、製造元:株式会社タニタ秋田という表記を発見。

    なるほど、このスケールはタニタが製造して無印良品が販売しているんですね。

    こういう仕組みのことを「OEM」といい、無印良品に行くと他にもそうした製品がちらほら見つかります。

    OEMとは?
    メーカーが他社ブランドの製品を製造すること。今回のケースでは、タニタ(メーカー)が無印良品(他社ブランド)の製品を作っているという形になります。

    つまるところ、メーカーの生産力と無印良品のデザイン力をかけ合わせた、良いとこ取りなものづくりの形、ということですね。

    ここである疑問が浮かびました。

    もしこのクッキングスケールを、無印がデザインしなかったらどうなっていたんでしょうか?

    「無印デザイン」じゃない製品たち

    実は、タニタにも一つだけ、ソーラーバッテリーを搭載したクッキングスケールがあります。

    並べてみてみると、形やサイズ感、ソーラーパネルやボタンの位置まで似通っていますね。

    型番もタニタの「SD-004」に対して無印良品の「SD-005」と類似していて、機能的にも軽量範囲(1g〜2kg)は同じです。

    あくまでいち消費者としてわかる範囲の情報だけでは断定できないので推測でしかありませんが、製造過程で何か共通の要素を持った製品だとしても不思議ではありません。

    ちょっと大げさかもしれませんが、無印がデザインした製品と、無印以外の企業がデザインした製品を比較して細かく観察していけば、無印良品が製品のデザインにおいて何を大切にしているのか? といったことが見えてくるのではないか……?

    そんなことを考えて今回は、家で使っている無印良品の製品をじっくり観察する、日用品の自由研究みたいな記事を書いてみることにしました。

    クッキングスケールをじっくり観察

    ということで、まずは無印良品の「ソーラークッキングスケール」と、タニタの「デジタルソーラークッキングスケール」を比較してみましょう。

    まずタニタのほうから。

    丸っこいフォルムが特徴で、どこか親しみを感じさせますね。

    視認性の高いオレンジのボタンを採用するなど、だれにとっても使いやすいデザインに仕上がっています。
    (カラーリングはオレンジとグリーンの2種類があります。)

    何キロまで測れるのか? どこの会社の製品なのか? といった情報に、パッと見た瞬間にアクセスできるような、文字情報の多いデザインも特徴的です。

    表面をしっかりカバーできるトレイも付属しています。

    このおかげで、戸棚やシンク下などに収納する時に立てて収納することができたり、クッキングスケールの上に軽いものを置いたりもできるようになりそうです。

    一方、無印良品のスケールはシャープなイメージ。

    全体がほぼ長方形、ものを載せるスペースがきれいな円形になっていることで、全体的に幾何学的でシンプルな印象がありますね。

    色はタニタのものよりも明るい白で、まさに無印という感じのミニマルな印象にまとまっています。

    品番や計量範囲などのデータも、表面の見える場所からは省略している点も興味深いですね。

    品番は常に必要な情報ではないし、計量範囲も使っているうちに覚えるので、こちらのほうが見た目をスッキリさせられるという配慮を感じます。

    ちなみに、カットされた情報は裏面のシールにまとめられているのでご安心ください。

    こちらがタニタのスケールの裏面。

    表面に情報が集約している分、かなりサッパリしています。

    無印のソーラークッキングスケールには、タニタのスケールにはない機能がいくつかあります。

    まずひとつが、計量パーツが着脱可能なこと。

    汚れたらこのパーツを単独で洗えるほか、蓋を裏返せばスティック状の食品を計量できるようになります。

    もうひとつが、S字フックなどでハンギング可能なホールが空けられていること。

    収納可能な場所が広がりそうですね。

    それぞれ別々の製品なので当たり前ではありますが、本当にたくさんの違いがあり、目指している方向性も異なっていることがわかりますね。

    ここで無印良品のデザインが目指している狙いとは、一体何なんでしょう?

    わたしが推察するに、クッキングスケールをもっと身近なものにしよう、ということなのだと思います。

    料理が大好きな方は別として、多くの人にとってスケールは、必要なときに戸棚やシンク下から取り出すような、いわば特別な道具だと思います。

    タニタのクッキングスケールを観ると、カバーがついているおかげで上にものを載せることができたり、隙間に立てることができたりと、収納時に役立つ工夫を随所に見ることができます。

    しかしながら、シンプルな見た目でどこにでも置いておきやすく、フックでのハンギングもできる無印良品のスケールは、いわば日用の道具という感じが強まっています。

    今までのクッキングスケールのあり方をゼロから考え直し、必要なときにだけ戸棚から取り出してきて正確に計量するための道具ではなく、いつでも出しておいて、普段の料理の何気ない調味料の計量に使う道具として再定義するような考えを見て取れるような気がします。

    あくまで推測でしかありませんが、無印良品のものづくりの思想が、ちょっとずつ見えてきた気がしますね。

    ポリプロピレン頑丈収納ボックス

    次に比較してみたいのが、無印良品のポリプロピレン頑丈収納ボックスと、トラスコ中山で見つけた「トランクカーゴ」。

    左手がポリプロピレン頑丈収納ボックス、右手がトランクカーゴ。

    トラスコ中山は「総販売元」という表記なので、製造自体は別のメーカーの可能性もある

    トラスコ中山とは?
    工具や建築資材、オフィス用品などを幅広く展開している卸売企業。2300を超えるメーカーから製品を仕入れ、国内外の小売店やディーラーに高品質な製品を供給しています。

    様々な仕様が異なっていたスケールと違い、形状はもちろん、取っ手の細かいつくりまで同じように見えますね。

    観察してわかったのは、色の違いのみです。

    それなのに、イメージがぜんぜん変わってくるのが面白いですね。

    トラスコ中山のトランクカーゴは、色からして「インダストリアル」や「アウトドア」といった印象を持ちます。

    この無骨でいかにも頑丈そうな感じ、屋外に置くと様になりますね。

    ガレージにおいて工具やなんかを収納したり、キャンプに持っていくアウトドア用品の収納なんかで活躍してくれそうです。

    対して無印の「ポリプロピレン頑丈収納ボックス」は、白くてスッキリとして印象。

    外に置くにはちょっと汚れが気になるけど、家の中に置いておいても生活感の気にならない見た目をしています。

    自分も愛用しているアイテムなのですが、自宅でちょっとしたスツールのように使ったり、天板を載せてローテーブルのような使い方をしたり、収納だけではなく簡易な台のような活用をしています。

    こうした使い方ができるのも、家の中に置いてあっても違和感のない、この色のおかげというわけですね。

    無印良品自身が説明で「簡易的な腰掛けとしてもご使用頂けます。」と謳っていることからもわかるように、ただ無印っぽいカラーにしているというわけではなく、こうした用途に使えるということを見越してこのカラーリングを施し、無印良品の製品として完成させている、と見ることができそうです。

    これと似た例を、もう一つ見つけました。

    スチール工具箱

    左手が無印良品のスチール工具箱。右手がトラスコ中山の山型工具箱。

    次に注目したのは、スチール工具箱。

    これも形状がほぼほぼ一致していて、大きな違いは色です。

    天面をみると、無印良品のほうではメーカー名の刻印も消されているのがわかります。

    文字通り、「無印」良品というブランドを端的に表しているようにも見えますね。

    山型工具箱は完全にプロユースという佇まい。

    もし倉庫やガレージに置くならこちらを選ぶと思います。

    一方で、無印良品の「スチール工具箱」は、家やオフィスなどにしっくりくる雰囲気。工具箱というより道具箱という感じがします。

    極端にいえば枕元に置いても違和感がないぐらいです。

    色が違うだけでここまで印象が変わるとは……。

    ROOMIEの過去の記事を観ても、救急箱や裁縫セットとしての使い方をしている人が多い印象です。

    工具箱という名前で販売されていますが、スチール製の汎用ボックスとして活用されているということですね。

    ここでもわずかに手を加えることによって、工具箱というものの立ち位置をグッと生活に身近なところに引き寄せて、新しい使い方、新しいラフスタイルを提案するような試みが見て取れます。

    見えてきた「無印のデザイン」

    ふとしたきっかけではじめた調査でしたが、思った以上に収穫がありました。ふたつの商品を比較することで、なかなか言語化しにくい「無印っぽさ」が浮き彫りになって非常に面白かったです。

    往々にして「デザイン」と聞くと、あくまで見た目だけ、印象だけを刷新するような行為のことを想像してしまいがちです。

    しかし今回の比較で見えてきたのはむしろ、クッキングスケールとは何か? 収納ボックスとは何か? ツールボックスとは何か? といった、それぞれのもののあり方をゼロから考えなおす行為です。

    その製品がどうしたらかっこよくなるか? 無印っぽくなるか? といった上辺の基準ではなく、生活全体を見つめなおしたときに、暮らしの中でこの製品はどうあるべきなのか? という、もっと深い問いとの格闘の痕跡を見ることができたように思います。

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    MUJI無印良品さん(@muji_global)がシェアした投稿 – 2019年 9月月12日午後11時30分PDT

    いまや無印良品は、家の中で使う製品や衣服だけのブランドではなくなってきていますね。

    無印良品の家、無印良品の小屋、MUJI HOTEL、さらにはフィンランドで運行される自動運転バスのデザインしたりなど、とても手広い範囲に事業を拡大している印象があります。

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    MUJI無印良品さん(@muji_global)がシェアした投稿 – 2019年 5月月19日午後7時00分PDT

    ちょっと前まで、無印良品がなんでそんなことをやるの? と疑問に感じていた部分がありました。

    服や雑貨を作っていた企業が、家や小屋、ホテルやバスを作るなんて、それまで聴いたこともありませんでした。

    しかしながら今回のちょっとしたリサーチを経て、そうした活動も全部地続きなんだなということを実感することができた気がしています。

    無印良品がやっているのは、シンプルな日用品や衣服を作ることではなく、今を生きる人類にとって良い暮らしとは何かを考え、そのために必要な道具や場所や機会を提供する、ということなのではないでしょうか。

    クッキングスケールを観察することからはじまったちょっとしたリサーチですが、色々なことを知ることができました。

    やっぱり道具って、観察すればするほど面白いですね……。

    無印良品のアイテムは著名なプロダクトデザイナーが関わってるものも多く、意外なところに工夫の痕跡を見ることができたりします。

    当たり前に使っているものでも、じっくり観察してみると新たな発見があるかもしれませんよ。

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