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親から子へ、価値あるものを継承したい。パドラーズコーヒー・松島氏プロデュースのリノベ物件(調布市)|みんなの部屋
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親から子へ、価値あるものを継承したい。パドラーズコーヒー・松島氏プロデュースのリノベ物件(調布市)|みんなの部屋

2021-08-04 14:00
    お気に入りのカフェに行って、こう思ったことはありませんか?

    「コーヒーもおいしいし、テーブルも椅子も扉も照明も全部好き。こういう家に住めたら最高だろうなぁ」

    そんな夢を実現した空間が、今回伺った塩野さんご一家の住まいです。

    名前(職業):塩野尚之さん(美容院経営)、ミエさん、お子さま2人(小学校5年生、2年生)、猫
    場所:東京都調布市
    面積:81.54m²
    物件購入金額:約3,000万円
    リノベーション費用:1,300万円前後
    築年数:約30年(リノベーションして3年)
    間取り図:

    内装や家具のアドバイザーはPADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)代表の松島大介さん、造作家具はパドラーズコーヒーの什器や建具を製作しているMOBLEY WORKS(モーブレーワークス)の鰤岡力也さん、設計施工はリノベる。が手がけた、カフェ好きな人にはたまらないリノベーション物件です。

    好きなものを集約したセンスのいい空間をつくり上げた背景には、親から子へと継承していく価値あるものを子どもたちに知ってもらいたいという塩野さんご夫婦の思いがありました。




    お気に入りの場所

    パドラーズコーヒー・松島さんのアドバイスが反映されたリビング

    玄関を入って廊下を進むと目に入ってくる印象的な木の扉。これがモーブレーワークスの扉です。

    その扉を開けて一歩中に入ると、そこには各所にパドラーズコーヒーのセンスが散りばめられたリビングがありました。

    「パドラーズコーヒーの空間が好きで、いつかモーブレーワークスの鰤岡さんに扉一枚だけでもつくってもらいたいと思っていました。それがリノベーションのスタートなんです」(尚之さん)

    そんな念願の扉と並んで存在感を放っているのは、同じくモーブレーワークスに製作を依頼したダイニングテーブル、本棚。

    さらに、松島さんが立ち上げに携わったBULLPEN(ブルペン)の家具や、パドラーズコーヒーの松島さんがセレクトした照明などとともに、ミエさんのご実家で使っていたフロアライトやラグ、幼少期に遊んでいた木馬などもあって、新旧が共存しながら調和し、とても居心地のいい空間が生まれていました。

    「リビングに統一感が出たのは、前の家で使っていたものをほぼ捨てて持ち込まなかったからかもしれません。それはガッツポーズですね!

    テレビの前のソファもブルペンで買い換えたり、本棚やテーブルもモーブレーワークスさんにつくってもらったり。

    あとは、実家にあったものの中からこの家に合うものはちょこちょこ持ってきて置いているんです」(ミエさん)

    「亡くなったお義父さんはとてつもない審美眼があった人で、僕らではなかなか手に入らないような作家ものなど、すごくいいものをたくさん残してくれました。この木馬もそのひとつです。

    松島くんが選んでくれたものや、モーブレーワークスの鰤岡さんのような家具作家さんに製作を依頼することで、お義父さんがしてくれたのと同じことが僕たちの子どもにもできるんじゃないか。残したいものは残していこうよという思いで、この家をリノベーションしました。

    お義父さんが買い集めていたものを引き継いで使っているように、モーブレーワークスの家具や松島くんが選んでくれたものを子どもたちに残すことができるのはリノベーションだからこそだと思っています」(尚之さん)

    この部屋に決めた理由

    以前は幡ヶ谷で戸建ての賃貸物件に住んでいた塩野さんご一家。

    「夫は幡ヶ谷から職場のある仙川まで自転車で通っていたんですが、甲州街道沿いを行くので危険と隣り合わせだと思って心配だったんです。

    それで家を購入したいと話をしたら、マンションのリノベーションならいいと。当時、子どもは小学校2年生だったので、高学年になる前に引っ越して住居を構えたいという思いもありました。

    そんな中、2018年の春に大好きなパドラーズコーヒーとリノベる。のコラボイベント(Concept Making, Art Direction:AUTUMN)があると知って、話を聞いてみようと参加したんです。これはモーブレーワークスの鰤岡さんとも知り合えるチャンスかもしれないとも思って。

    そこで家を購入してリノベーションをしたいと話したら、そのままとんとん拍子に決まっていきました」(ミエさん)

    物件探しは3日間で9件ほどを内見したそう。その中でいいと思ったのが、この調布の物件でした。

    「リノベる。さんに伝えた条件は、『広さは80㎡くらい』、『子どもがいるので、足音を気にしなくていい1階』。

    その条件をもとにいくつか物件を見たのですが、担当の方が調布出身……というかうちの斜め向かいの物件に住んでいるんですけど、この物件を紹介してくれたときに『調布はいいですよ!』って、テンションが上がってたんですよ」(ミエさん)

    「ということは、イコール調布は住みやすいってことじゃないですか。だから信用できると思って決めました」(尚之さん)

    確かに、実際にそこで暮らしている人の言葉なら重みがありますね。実際に住んでみて、調布での暮らしはどうですか?

    「公園や深大寺、布多天神社など、絶対的になくならない場所が徒歩圏内にある地域なので安心感があります。もともと緑が好きなので落ち着きますし、住んでよかったですね」(尚之さん)

    リノベーションのポイント

    コラボイベントに参加後、数ヶ月で物件探しをスタートし購入を決定。そこから、具体的な話に進んでいきました。

    「戸建ては無理だけど自分たちの好きなものにお金をかけよう。どうせなら好きな空間をつくろうよってモードになっていました」(ミエさん)

    「打ち合わせは、リノベる。のデザイナーさんの提案に松島くんがアドバイス・ディレクションをしていくスタイルでしたね。

    たとえば、照明ひとつにしても、『同じ値段だったらこっちのほうがカッコよくないですか?』っていう感じで、松島くんが店をつくった経験を活かしながら、リノベる。さんと共にいろいろ提案してくれるんです。

    ドアノブも松島くんが選んでくれましたし、扉のガラスを何枚にするかとか、タオルハンガーをどうするかなど、細かいところもディレクションしてくれました。

    玄関の土間には、パドラーズコーヒーと同じデザインのパーケットフローリングを埋め込んでいます」(尚之さん)

    「ちょうど、ブルペンのオープンとうちのリノベーションのタイミングが同じだったということもあって、ソファ、コーヒーテーブル、椅子などはモーブレーワークスにお願いしました」(ミエさん)

    ここまで聞いていて、気になったのが予算のこと。提案をすべてOKしていたら、かなりの金額になりそうですよね。

    「リビングの床はパドラーズコーヒーでも多く使われているオークなんです。本当は寝室や子ども部屋もそうしたかったのですが、かなりお金がかかるので子ども部屋はタイルカーペットにしたり、キッチンやお風呂はシンプルにしたり。

    家族で過ごす時間が長いリビングを最優先に、他はコンパクトにしました」(尚之さん)

    尚之さんが、「パドラーズコーヒーの松島くんとモーブレーワークスの鰤岡さんのタックは強い」と絶賛するリノベーションは2018年12月に終了。なんと、クリスマス当日に入居したそうです。

    「結果的に、家がクリスマスプレゼントになりました」(ミエさん)

    「という形になりましたが、たまたまそこしか休みがなかったんです。でも、なかなかできることじゃないでしょ!?」(尚之さん)

    尚之さんとミエさんが大好きだというパドラーズコーヒー。改めて、そのよさを伺いました。

    「まずおしゃれだし、松島くんというブランド力もある。あの空間とあの街をつくったという点でリスペクトしています。細部にまでこだわっているところもいいですよね」(尚之さん)

    「おしゃれだけど落ち着くところですかね。あとは、コップ1つとっても選んだ理由があって、石鹸にしてもトイレにしても、“なんでもいい”じゃないところです」(ミエさん)

    残念なこと、気になるところ

    子ども部屋の窓が少ない

    長方形の間取りになっている子ども部屋は窓が手前にしかなく、奥は日が射し込まないため年中暗いといいます。

    「子ども部屋の窓問題は住んでみてはじめてわかりました。窓側に勉強机、窓のない奥にベッドを置いているんですが、それを反対にすればお日様と一緒に起きることができてよかったかもしれないです」(ミエさん)

    お気に入りのアイテム

    モーブレーワークスのハンガーラック、本棚、扉

    尚之さんのお気に入りは、モーブレーワークスに製作を依頼した本棚や扉、ハンガーラックです。

    「モーブレーワークスといえばこのハンガーラックが有名で、これをリビングの壁につけようと思っていました。

    テーブルの天板や扉にあるように、モーブレーワークスはエッジの削り出しに特徴があるんです。

    今はその価値がわからなくても、この『THE 鰤岡さん』というのを子どもたちに教えたいんですよね。本棚も鰤岡さんが設計してくれました。

    建て付けではなく、6つに分割できるので将来引っ越すことになったとしても持ち出すことができるんです。

    お金はかかりましたが、とにかく図面がかっこよかった! 家宝です」(尚之さん)

    大切に育てている植物

    リビングにある植物は尚之さんのお気に入りです。猫にとって毒性のある植物は躯体あらわしの天井にフックを掛けて吊るしています。

    「仙川の植木屋さんや、調布のグリーンホビーで買っています。選ぶ基準ですか? そうですね、草が僕を呼んでる感じですかね。

    まじめに答えると、空間に合うものを買っています(笑)」(尚之さん)

    「このコウモリランはお風呂に入れるんですよ!」(ミエさん)

    え? 植物をお風呂に入れるって、どういうことですか?

    「浴槽にお水をためて植物をつけるんです。最初、私もびっくりしたんですが、彼は『植物との共生です』って」(ミエさん)

    自転車に乗せて持ち帰ってきたという、床に置いてある大きな植物もすくすく育っていました。

    レオナール・フジタの絵

    リビングの壁に飾られている絵は、レオナール・フジタ(藤田嗣治)氏の作品。これはミエさんのお父様が所有していたそうです。

    「幼少期には不気味で嫌いだったのですが、大人になってから好きになって、『これ欲しい』って実家から持ってきました」(ミエさん)

    父親から引き継いだコーヒーミルと赤いポット

    真っ赤なレトロなデザインのポットと、無機質ながらも存在感のあるコーヒーミルが目を引くキッチン。どちらも価値ある逸品といった雰囲気を醸し出しています。

    「CAFE DE L’AMBRE(カフェ・ド・ランブル)」と書いてあるこのポットは、ミエさんの思い出とともにあるお気に入りアイテムです。

    「日本にコーヒーを広めたと言われる銀座の老舗のコーヒー屋さんのポットは、父が若い頃に買ったもの。もったいなくて使ってなかったみたいなんです。私はそれをもらって使う方を選びました。

    私は20歳で上京したのですが、時々父が東京に来て、『おいしいものを食べさせてあげる』といろいろなところに連れて行ってくれました。選択肢の中にコーヒーもあって、『おいしいコーヒーが飲みたい!』と言うと、『CAFE DE L’AMBRE』に連れて行ってくれたんです。

    実家は飲食店をやっていて、リビングに置いてあるカイ・ボイスンの木馬など、父の審美眼で選んだ作品を扱って販売していました。今は姉夫婦が引き継いでいますが、父が残したものがあって、それをいくつかもらってこの家で使っているんです。

    このコーヒーミルも実家に眠っていたもので、捨てるというのでもらってきました。イタリアのもので、50年以上前のものじゃないですかね?」(ミエさん)

    「毎朝、これでコーヒーを入れているんですが、この家に引越しする直前になって急に動かなくなったんです。

    ビジュアルが素敵だし、捨てようかどうしようかって悩んだ挙句、最後にコンセントを入れてスイッチを入れてみようって試したら動いたんですよ。お義父さんの怨念じゃないかと思うくらい。びっくりしました」(尚之さん)

    今となっては“超”がつくほどレアな作品や製品ばかり。それらを引き継いで大切に使っているとは、天国のお父様もきっと喜んでいますね!

    洗面所の鏡

    パドラーズコーヒーを感じる洗面所の鏡は、ミエさんのお気に入りです。

    「ブルペンで買ったこの鏡をぜひ入れたいと希望しました。真鍮のタオル掛けや洗面台も、掃除しやすくて気に入っています」(ミエさん)

    ミエさんが手掛けた「書」

    本棚には書道に関する本がたくさん。それらはすべてミエさんのものでした。書道にゆかりがあるのですか?

    「小学校5年生のときに書道を始めました。東京に出てきて師匠がいなかったので、父の知り合いに石川九楊先生を紹介してもらって、教えていただいていました。妊娠を機に先生のお教室はやめてしまったのですが、今でも家で書いています」(ミエさん)

    写真のミエさんの作品は、梶井基次郎の『檸檬』を書いたもの。いわゆる書とは一線を画す作品は絵のような躍動感があって引き込まれます。

    このほかの作品はInstagramで見ることができます。イベントの題字なども手掛けられていますよ。

    これからの暮らし

    「私たちは地方出身者で、子どもたちは東京で育っているので感覚が違うだろうけれど、ずっと家にいて欲しいというよりは早く自立してほしいと思っています」(ミエさん)

    「子どもがいなくなる前提で話してますけど、そうなると子ども部屋をどう使おうかという楽しみはありますよね。

    ここは1階でエレベーターや階段を使わないし、深大寺や公園もあって環境的に恵まれていると思うんです。蕎麦屋だらけだし。だから、終の住処になればいいなぁとは思っています」(尚之さん)

    古きよきものと、新しくていいもの。それぞれがそこに住む人のセンスによって選ばれ、絶妙なバランスで共存している。塩野さんご一家の住まいは、そんな妥協のない空間を体現されていました。

    親から子へ、代々引き継がれるものは、とかく幼いころにはその価値が分からないもの。その価値がわかる年齢になったときにはじめて、恵まれた環境にいた感謝の気持ちが湧いてくるのではないでしょうか。

    子どもの頃に過ごした環境は大切だと知っているからこそ、残したいものがある。そんな塩野さんご夫婦のメッセージを受け取った取材でした。

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