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荒れ果てた庭を野菜とハーブ畑に。四季を感じる、築50年賃貸一軒家のふたり暮らし(八王子)|みんなの部屋
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荒れ果てた庭を野菜とハーブ畑に。四季を感じる、築50年賃貸一軒家のふたり暮らし(八王子)|みんなの部屋

2022-09-17 14:00

    Photographed by Motoki Adachi

    最強の「身軽セット」でバッグのゴチャゴチャを解消!

    都心から約40km。東京都の南西部に位置し、新宿からJR線や京王線に乗っておよそ40分のところにある八王子駅。

    ここからさらに車で10分ほどの場所で暮らしているのが、今回ご紹介するcanoさんとテツヤさんご夫婦です。

    名前:canoさん(グラフィックデザイナー)、テツヤさん(医療従事者)
    場所:東京都八王子市
    広さ:92㎡(1階) + 440㎡(庭)
    家賃:11万円
    住宅の形態:築50年 2階建て一軒家
    間取り図(1階):

    編集部作成

    その住まいは、一般的な不動産情報には出てこない築50年の一軒家。

    近所の人が公園と勘違いして、ふらりと足を踏み入れてしまうという庭をゼロから開墾して畑にし、季節の野菜やハーブを育てていらっしゃいます。

    東京にいながら東京ではないような、穏やかでていねいな時間を味わいつくしているおふたりの暮らしには、おうち時間が増えた今だからこそ大切にしたいヒントがたくさんありました。


    ■目次
    1. この部屋に決めた理由
    2. お気に入りの場所
    3. お気に入りのアイテム
    4. 残念なところ
    5. 暮らしのアイデア
    6. これからの暮らし

    この部屋に決めた理由

    以前は世田谷に住んでいたcanoさん。テツヤさんとの結婚を機に八王子に引っ越しされました。なぜ引っ越し先として八王子を選んだのですか?

    「旦那さんが八王子の病院で働いているんです。私も大学生のときに八王子に住んでいたので、縁のあるエリアでもあって。

    このあたりは知人の紹介があれば物件を紹介してくれるという、ちょっと特殊なエリアなので不動産情報にもあまり出てこなくて。

    私たちはたまたまこのエリアに住んでいる友達がいたので、仲介してもらって物件を何軒か紹介してもらうことができました」(canoさん)

    それはラッキーでしたね! 都内で畑ができるほど広い庭のある一軒家にはなかなか出会えないと思うのですが、おふたりはどのような条件で探したのでしょう?

    「いつか畑をやってみたいなぁと思っていたので、広い庭付きの一軒家が第一条件でした。

    この家は玄関を入ってすぐに広い部屋があって、縁側もあって、庭も広かったので即決でした」(canoさん)

    4〜5年も空き家の状態が続いていていたそうで、おふたりが入居したばかりの頃、お庭は雑草だらけだったそう。

    「住みはじめた当時の庭は畑要素ゼロ。森みたいな状態だったので、雑草を抜いたり、柿の木を切ったり。庭に切り株がいくつがあるのですが、それは全部木を切り落とした跡なんです。

    最初の頃は小さい区域で畑をはじめて、雑草を刈ったらそこも畑、という感じで徐々に増えていきました。その結果、今は全部畑です」(テツヤさん)

    お伺いした日、庭先には収穫したばかりのトマトやオクラが。

    それ以外にも茄子、ディル、ローズマリー、レモングラスなど、ありとあらゆる野菜やハーブが元気いっぱいに育っていました。

    そのお庭の様子は思わず、「農家さんですよね?」と質問したくなるほど。それはあながち間違っていなかったようで。

    「やるからにはちゃんとやったほうがいいと思って、半年くらい八王子の農家に修行に行ったんです。週末だけ通って知識を得て、家の畑で実践しています」(テツヤさん)

    どうりで。

    「私の母親が『つるなしいんげんからはじめなさい』と言うので、最初はそれから育てはじめたんですよ。

    ちょうどコロナがはじまる前にここに引っ越してきたので、畑をはじめたのと同時におうち時間が増えたこともあって集中できました」(canoさん)

    今年でこの家に住みはじめて3年目を迎えたcanoさんとテツヤさん。畑をはじめてから生活スタイルも変わったといいます。

    「以前は週末は絶対出かける生活だったんですが、野菜を育てるようになってから家にいる時間が増えましたし、2人で料理をするようになりました」(テツヤさん)

    「収穫した野菜を毎日食べています。夏野菜はたくさん育つので、夏は食費が安いんですよ!」(canoさん)

    願っていた生活ができていると話すcanoさんとテツヤさん。おふたりの楽しそうな様子は、このお部屋全体の空気そのものを明るくしていました。

    お気に入りの場所

    古家具があるキッチン

    canoさんのお気に入りの場所は、益子の古道具屋さんで買った食器棚のあるキッチンです。

    「この食器棚は益子の『仁平古家具店』で買いました。奥行きがそこまでなく圧迫感がなさそうだなと思って即決。買ってよかったです!

    細々とした置き物が好きで、拾ってきた石や買ったものなどを合わせて棚の上を小さなギャラリーにしています。ものが多いので色んなところに飾りたくなるんですが、なるべくここに集約しています」(canoさん)

    食器棚の向かい側には広々としたテーブルも。これも同じく仁平古家具店で買ったのだとか。

    「作業台みたいな感じで気を使わずに使えるテーブルが欲しくて。染みが気になってしまうものは性格上合わないですし、友達がここで何かをこぼしても許せるようなテーブルがよかったんです。

    このテーブルは上に乗っても壊れないくらい丈夫で気に入っています」(canoさん)

    スパイスやお茶が並ぶシンク周りもとても素敵です。

    「シンクの上は奥行きがあったので、てっちゃん(テツヤさん)の実家にあった板をもらってスパイス棚を作ってもらいました。

    カレーを作るのが好きなのでスパイスをよく使うんですけど、以前は全部引き出しに入れていたんですね。そうするとどれがどれかわからなくなっちゃうし、何がなくなったかわからないので、いつも見えている状態にしたくて。

    そのお題のもと、スパイス棚を作ってくれたんですが、すごく使いやすくなって気に入っています。瓶は100均とかAmazonとかその時々であるものを使っています」(canoさん)

    針葉樹で板張りした、ウッドデッキのある12畳の部屋

    テツヤさんのお気に入りの場所は、日当たりと風通しのいい12畳の部屋。虫の音が気持ちよく響いて、ここが東京だということを忘れてしまいそうなほど。

    「この部屋はもともと畳で、縁側は模様の入ったクロスのシートが貼ってあり、一般家庭によくあるサッシがついていたんです。

    間取りを変えなければ現状回復しなくていい物件なので、それらを全部取っ払ってDIYしました。木目のラインが外につながっていくようにしたくて床は板張りして、縁側をウッドデッキにしたんです。

    庭には育てた野菜があるので、その成長を縁側に座って眺めるのが好きなんです」(テツヤさん)

    この家に住みはじめてから本格的にDIYをはじめたというテツヤさん。そうとは思えないほど床板の張り方がきれいで、お部屋全体も統一感があってとても素敵です。

    何か参考にしたものはあったのでしょうか?

    「山登りが好きで、よく山小屋に泊まって過ごしていたので、そのイメージがどこかにあったかもしれないですね。

    床の板は針葉樹の角材を買ってきてビスで打ち込んだだけ。木の垂直と並行の線がすごく好きなので、その感じを出したかったんです。

    特にこだわったのは、色です。『BRIWAX(ブライワックス)』を調合して、オリジナルの色を出しました。色見本を何十色も作って、これ!という色を決めたんです」(テツヤさん)

    色にこだわったというだけあって、築50年の柱や梁などと馴染んでいて違和感がありませんでした。

    そのほかにも、テツヤさんのDIYによる工夫が随所に見られます。床の間を改造したスペースは、書斎として使っていました。

    「書斎では山登りに使うロープワークをするので、サイズをしっかり測って棚を作りました。

    書斎脇のスペースは元々襖で廊下にアクセスできるようになっていたんですが、ここから出入りはしないので有孔ボードをつけて壁にしました」(テツヤさん)

    書斎の反対側に目を移すと、レコードがずらりと並んだ棚が。こちらもテツヤさんが作ったものです。

    「もともと洋服ダンスだったところにレコード棚を作りました。音楽が好きで仲間とDJの催し物をやったりしているのでレコードが多いんです」(テツヤさん)

    ポイントポイントで配置された家具も素敵なものばかり。

    「テーブルの天板にしているのは、おばあちゃんが使っていた雨戸か何かで、それをもらって脚をつけてテーブルにしました。

    結婚する前に作ったもので、これが初めてのDIYです」(テツヤさん)

    「この家に引っ越してくる前から2人とも古家具が好きだったので、今の家とも馴染みました。

    国立にある『レットエムイン』によく行きます。日本の古家具を取り扱っているんです」(canoさん)

    日常で四季を感じられる庭の畑

    「大工の祖父と、日曜大工や畑仕事が趣味の父親のもとで育ったこともあって、僕もいつか畑ができたらいいなと思っていました。この家を見たときに、“いつか”と思っていたことがやれる!と思ったんです。

    土いじりは山に行かなくても庭で四季を感じられるのでどんどんはまっていきました。

    テツヤさんが好きだというオクラの花。「野菜の花でこんなに色鮮やかな花は見たことがありません」(テツヤさん)

    「農家の研修で印象的だったことがあるんです。

    マルシェなどに出店したときに野菜をただ作って売るだけじゃなく、『今年は長雨で野菜の成長が悪かったんですよ』と作ったときのエピソードを話したり、『この野菜はサラダでも美味しいけど、火を入れても美味しいですよ』と調理の仕方が想像できる話をしたり。

    『新聞紙でくるめば野菜室で何日間保存できますよ』と買う人の気持ちや立場になって、買った後のことが想像できる話を農家さんがしている姿もすごく印象的でした。

    僕もそういうことがしたくて、『ベジバーベキュー』と題して自分で作った野菜を調理して友達などに振る舞っています。そのときにさっきの農家さんみたいな話をしているんです。

    おもてなしが好きなので、友達が楽しんで帰ってくれるのも嬉しいですし、自分が楽しんでいることを他の人と共有できるのが幸せで、畑に思い入れがあるんです」(テツヤさん)

    「去年自分たちで10個くらいニンニクを作ったらすごく美味しくて、これは人にあげたら喜んでもらえると思って、来年はニンニクを大量に作ろうと庭とは別で畑を借りました。そこは自然農法をやっていた畑で、その土壌がどんなものか知りたいんです」(canoさん)

    あ〜、そのニンニク、絶対美味しいんでしょうね! 話を聞いているだけで、私も食べたくなっちゃいました。

    お気に入りのアイテム

    1920年代のトーネットチェア

    「福岡のお店のオンラインストアで買いました。以前からトーネットチェアに憧れていて、いつか買おうと思っていたんです。

    これは1920年代のものですが状態がいいですし、好きな色合いなので大事に使おうと思っています」(canoさん)

    テツヤさんが作った杉とヒノキのデスク

    canoさんの仕事部屋にも、テツヤさんお手製の家具がありました。

    「もともと机を2個並べていたんですが、それぞれの高さが違って使いにくかったんです。それをフラットにできたらいいなぁと、てっちゃんに相談して作ってもらったのが、この机です」(canoさん)

    「幅は260センチで、天板は杉、脚はヒノキを使っています。杉ならではのやわらかい肌触りが気持ちいいんです。

    なるべく金具を使いたくなかったので、脚は木で組んでいます。今年の1月は1ヶ月間ずっとこれを作っていました」(テツヤさん)

    インテリアとも相性がいい塩壺

    八田亨さんという作家さんの壺で、雑誌で見ていいなぁとずっと思っていたものです。インターネットで見つけて買いました。

    蓋は屋久杉なので、部屋とも相性がいいなと。これを使うようになってから、塩に手が伸びる頻度も増えました」(canoさん)

    canoさんにこの塩壺の話を伺っていたら、隣にいたテツヤさんがこんな話をしてくれました。

    「うちの奥さんは日常で使うものをすごく大事にしていて、いいものを使うんです。僕は結婚前、週末に生きている男で、山に行ったり、出かけたりするのにお金をかけていました。

    奥さんと結婚して一緒に過ごすようになってから、週末より日常の方が大事だと考え方が変わってきて、日々使うものにお金をかけて気持ちよく過ごしたいと思うようになりました。

    仕事柄、緊張する場面が多いので、休みの日はなるべく非日常の場所、自然とか音楽を聞いたり、そういうことをすごく大事にしているのですが、日常を充実させると生活がすごく豊かになります。

    今は、朝、野菜を収穫して、料理をして、という些細なことがすごく楽しいです」(テツヤさん)

    竹細工のコーヒードリッパー

    「長野県戸隠の竹細工でできたコーヒードリッパーです。以前は通販でしか買えなかったんですが、大人気すぎて今は通販では買えず、店舗のみでの販売になりました。それで3年くらい前にわざわざ買いに行ったんです。

    使いはじめは竹の香りがコーヒーの遠くにいる感じでした。使ったら水で洗って軽く水切りして終わりなので手入れも簡単です。

    コーヒーをドリップするときって、ちょっと儀式的な感じがしませんか? そのときにこのドリッパーを使うとより気分が高まりますよ」(テツヤさん)

    残念なところ

    梅雨の時季はカビが生える

    「引っ越して1年目の梅雨が長くて、カゴや革製品、まな板など、ありとあらゆるものがカビてしまったんです。

    知識がなくて、雨が降っているときに窓を開けっぱなしにしているのがよくなかったみたいで湿気がどんどん入ってきちゃったのが原因で。

    それが大ショックで、フックを活用して掛けられるものは掛けるようにしました。ひっかけていると満遍なく使えるし、便利でもあるんですよね。次の年には除湿機を買って、窓を閉めたらカビ問題は解消されました。

    ほとんどのものがカビてしまったとき、ヒノキだけカビなかったのでヒノキに絶大な信頼を寄せています」(canoさん)

    キッチンの日当たりがイマイチ

    「日本家屋は、お客様が来るところは日当たりがよくできていて、台所は夏に暑くなりすぎないように日当たりがよくない場所にあると聞いたことがあります。

    最近の家は日当たりがいいので、この家のキッチンにいて暗さを感じることがあるんですが、夏は暑くないので助かってはいます」(canoさん)

    暮らしのアイデア

    日々使うものは目に入りやすくする

    市販のプロテインや雑巾などの表に出したくないものは、カゴに入れて収納

    「ものが多いんです」というcanoさん。そうお話しされるものの、ごちゃごちゃした感じが一切ありません。何か工夫されていることはあるのでしょうか?

    「食器棚の食器は、手前と奥とで2列になっていると奥のものは使わなくなるので、1列で済むようにしています。

    それに加えて、下の方にあるものが使いにくくならないように、なるべく重ねないようにもしているんです。大きなお皿はIKEAの食器ラックに紐を巻いて滑りにくくしました。

    お茶も棚の奥に入れてしまうと忘れるので、見える範囲のものを見える範囲で使えるようにしています。茶筒に入れ替えているんですが、今ある茶筒の数だけと決めていて、今は、緑茶、ほうじちゃ、加賀棒茶、紅茶、レモングラスの5種類に絞っています」(canoさん)

    これからの暮らし

    「この家が5年契約なので、最低5年は住む予定です。そのあとも家を借りるのか、買うのか、どっちがいいか日々悩んでいますが、今はひとまず賃貸で」(canoさん)

    自然とともに暮らし、庭の畑で収穫した野菜やハーブを日々楽しんでいるcanoさんとテツヤさん。

    日々の暮らしをていねいに、楽しいことを思う存分、味わい尽くす。そうした時間が生活を豊かにしてくれると教えてもらった、とてもいい時間でした。

    来年育てはじめるニンニク、楽しみにしています!

    築50年の戸建てを、観葉植物と木のぬくもり溢れる空間にリノベーション。

    家の中と外がつながり、季節に合わせて変化する住まいとは?

    RSSブログ情報:https://www.roomie.jp/2022/09/872180/
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