週刊 石のスープ
定期号[2012年2月19日号/通巻No.29]
今号の執筆担当:西村仁美
※この記事は、2012年2月に「まぐまぐ」で配信されたものを、「ニコニコ・チャンネル」用に再配信したものです。
前号の続きです。
■心療内科にかかるほど精神的ダメージを受けた母親
いじめが発覚してから約2カ月後、ゆう子のお母さんから話を聞くことができた。この頃にはゆう子は西居院からお母さんの元に戻り、学校にも復学して通っていた。お母さんは、ゆう子が自宅のある建物から飛び降りようとしたことにショックを受けていて、すぐに取材できるような状態ではなかった。病院の心療内 科にもかかった。
一度、冒頭のやんちゃ和尚の話にあった教育委員会には取材を申し込んで、同行させてもらってはいるが、こちらの事情もあり顔を合わせる程度で終わっていた。
その時のゆう子のお母さんの印象は、意志の強そうな人に見えたが、体格的には小柄で細身の方だった。そのため、「どこにこんなに小さな体の中に二人の子どもを女手一つで支えいく力があるのだろう」と不思議に思ったものだった。
ところで当日、仕事の合間に時間を作ってくれたお母さんと喫茶店に入った。
現在大手の飲料水関係の会社で働いており、聞けば仕事の内容は相当ハードだ。飲料水を扱っている飲食業関係の店のサーバーメンテナンスが主な仕事のようだが、営業などをかけることもあるという。女性社員は非常に少なく、営業は「10件かけて、2件仕事がとれればいい方」と聞く。そんな頑張り屋のお母さんが女手一つで育てて来たのがゆう子だった。ゆう子には6歳上の兄弟もいる。
「仕事がバタバタしていたこともあり、和尚さん(廣中さん)が『ママの手伝いをやってあげなさい』などとゆう子にアドバイスしていたようなんですね。ゆう子は和尚さんに私が(仕事に忙しく)自分のことでめいいっぱいと言っていたようです」
いじめの件も先にも書いた通り、最初にゆう子から相談を受けたのは廣中さんだった。今回の件はお兄ちゃんが家を離れ、ゆう子と親子二人で向き合い始めた矢先の出来事だった。4階から飛び降りようとしていた当時の様子を次のようにポツリポツリと話してくれた。