フィンセント
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言わずもがな、19世紀オランダの巨匠
フィンセント・ファン・ゴッホが名前の由来だ。
19世紀後半、ヨーロッパの絵画界では
ジャポニスムと呼ばれる日本文化ブームが巻き起こっていた。
ヨーロッパの画家たちの多くが
葛飾北斎などの日本の浮世絵を見て感激したと言われ、
マネ、モネ、ルノワール、ゴーギャンなど名だたる画家たちとともに
ゴッホもその1人であった。
ホクサイから多大な影響を受けたと言われるフィンセントの名が
筆ブキの後輩の名前につくというのはなかなかに面白い。
ちなみに先ほど、ゴッホのことを「巨匠」と言った。
きっと皆さんもそれを何の違和感もなく読んだことであろう。
実際今では知らない人を探すほうが難しい有名人であるし、
西洋絵画に全く理解のない方でもゴッホという名前くらいは聞いたことがあるはずだ。
そしてその巨匠の絵となればとてつもない高額で取り引きされる。
これまでのゴッホの絵画における最高落札価格は
『医師ガシェの肖像』の約124億円だ!
他にも100億円前後で取り引きされた絵が何枚もあり、
ゴッホは高額絵画界隈におけるトップランカーである。
こうした話を聞くと、ゴッホは生前
さぞかし巨万の富を築いて我が世の春を謳歌していたことだろうと
当然のように思ってしまう。
しかし、実際にはそうではなかった。
ゴッホの絵で彼が生きているうちに売れた絵はなんとたったの1枚。
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ゴッホは貧しい生活を長く続け、失意のうちに亡くなったのである。
驚くべきことに、
今50億だ100億だと価格がつけられる絵を次々と生み出していた人物を
同時代の人たちは全く評価しなかったということだ。
ゴッホは言った。
「俺の絵が売れないのは、世の中の連中の目が腐っているせいだ。」
自分の非を認めず、なんでもかんでも世の中のせい、環境のせいと言うというのは
いわゆる世に出回っているビジネスハウツー本などでは真っ先に否定される発言だろう。
ただそんな本の著者も、
100億円男の発言となれば態度を改め、例外として認めざるを得ないかもしれない。
現に皮肉なことに、
ゴッホの死後すぐに彼の絵はかなりの額で取り引きされ始めた。
画家たちの中には、なぜゴッホの才能にみな気づかないのだろうと嘆く者もいた。
本物は本物を見抜く、ということだろうか。
いやしかしどうなのだろう。
ゴッホの絵が高額で売れたというのはその後の商業的な結果であり、
絵画の美術的な価値とはなんら関係のないものであるはずだ。
「売れれば良いものなのか。売れなければ悪いものなのか。」
私自身こういうことを考え始めるとキリがない性分であり、
ゴッホとは並ぶべくもない者ではあるけれど、
同じような悩みと戦い続けているこの10数年である。
自信家が過ぎるとまた別の問題が起きてしまうので
そのバランスは慎重に取るべきではあるが…
世の常として、
本当に価値あるものが即座に評価されないということは往々にして起こり得ることである。
そしてそれは、
決してそのものを作った人が悪いわけではないことが多い。
形は違えど、ものづくりに関わる者として
このゴッホの教訓は精神安定のために自家薬籠中としておきたいものである。
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