絶えず強風が吹きつける日本海沿岸。大地震が生んだ亀裂や陥没の目立つ道路を進むと、その姿がフェンス越しに見えてくる。
 灰色の空に伸びた二本の煙突を頂く建物には、ブルーとホワイトの鮮やかな配色がほどこされているが、冬の日本海沿岸ではくすんだように映る。
 ともに停止中の一号機と二号機を擁し、北陸電力にとって唯一持つ“虎の子”でもある志賀原発。地震発生後も、堅牢そうな発電所の外観は一見、平時となんら変わりなかった。
「外部への放射能の影響はありません」
 地震発生後の一週間、北陸電力は繰り返しアナウンスしてきた。
 だが、フェンスの向こう側では、異様な緊張が続いている。敷地内部では次々と、異常な事象が発生しているのだ。 
週刊文春デジタル