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ツチヤの口車 第1337回 土屋賢二「父の疑念」
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ツチヤの口車 第1337回 土屋賢二「父の疑念」

2024-04-11 05:00
     どの家にも分担がある。わたしの実家では、箏を教えることと娯楽は母の担当、残りは父が担当していた。
     子育ても父の担当だった。わたしがよちよち歩く後についていたのも父だった。
     演奏会の舞台で弾いているのが母だと分かると、わたしがお乳を求めて泣き叫ぶので、父が演奏会の合間にお乳をやってくれと母に頼むと、母は着崩れするからイヤだと断ったらしい。
     わたしがブランコに乗れないでいると、他の子をどかして乗せてくれた。本人は野球などしたこともなかったのにバットを作ってくれた。いつも父と一緒だったので、幼稚園の入園テストで、ヒヨコと一緒にいるニワトリの絵を見せられ、「これは何?」と質問されたとき「お父さんドリ!」と答えたらしい。子どもと一緒にいるのは父親だと思っていたのだ。そのとき付き添っていたのは父だった。 
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    週刊文春デジタル
    更新頻度: 毎週水,木曜日
    最終更新日:2024-10-31 06:42
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