週刊文春デジタル
「今日、午後から渋谷の年金事務所に行ってまいります」
朝、秘書のセトが言った。
「えー、年金事務所?」
「ハヤシさん、忘れたんですか。来月から年金もらうのー、ってこのあいだ言ってたんですよ」
そうだった。本来は六十五歳からもらえる年金であるが、七十歳まで我慢すると支給額が増える。そんなわけで今年まで待っていた。さらに税理士さんに言われた。
「七十五歳まで待てば、さらにぐっとアップしますよ」
それもそうだと一度は思ったのであるが、二ヶ月ぐらい前に考えが変わった。