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京都というのは本当に不思議な土地だなあと訪れる度に思う。歴史ある神社仏閣が徒歩圏内にごろごろと鎮座し、御所の石を踏めばその音は千年前から変わらぬよう。その一方で、河原町の商店街はあっという間に店並びが変わり、学生たちは後ろ髪を引かれながら順番に旅立っていく。変わらないようでどんどん変わりゆくその街は、いつしか思い出の中とはどこか決定的に違うものになってしまった。変わらぬものなどないのだと、無情にも無常を突きつけてくるようなその街だからこそ、ローズの心をこんなにも揺り動かしたのだろう。『薔薇が咲くとき』には、そんな京都の風情が、諦観が、美しさがぎゅっと詰まっている。
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