人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
 キャバクラに初めて行ったのは30代初めの頃。席に着いたキャバ嬢はしばらくして、
「じゃ、私の似顔絵を描いてみてよ」
 と、僕に紙のコースターを1枚、差し出した。
 新しいものならまだしも、それまで水割りのグラスに敷いてあったやつだ。
 水気を含んで表面が少しブヨブヨしてた。
 バカにすんな! 何で描かなきゃなんないんだよ。
 僕は、
「ペンがないから無理」
 と、やんわり断った。 
週刊文春デジタル