閉じる
閉じる
×
花村康一(はなむらこういち)が最初に異変に気がついたのは、ゴールデンウィーク明けのことだった。
研究室の扉の横の照明のスイッチボタンの上に、直径一センチほどの赤いシールが貼られていたのを見つけた。それまでなかったものだったが、気には止めなかった。老朽化した建物内に設けられた映画学科の研究室は教授四人の相部屋で、誰かが何かの目印で貼ったのだろうと思っていた。
翌週の月曜日、午前中の講義を終えて研究室に戻ると、同じ赤い丸シールが花村の室内履きの右足の甲の上についているのを見つけた。黒の合皮の室内履きは花村の机の下に置いているもので、研究棟から外に履いては出ない。花村は照明スイッチの上のシールが剥がれて室内履きに貼りついたのかと思ったが、入り口脇のスイッチを見ると、赤いシールは変わらず貼られたままだった。
この記事は有料です。記事を購読すると、続きをお読みいただけます。
入会して購読
チャンネルに入会して、購読者になればこのチャンネルの全記事が読めます。
入会者特典:当月に発行された記事はチャンネル月額会員限定です。
週刊文春デジタル
更新頻度:
毎週水,木曜日
最終更新日:2024-11-21 05:00
チャンネル月額:
¥880
(税込)
ニコニコポイントで購入
この記事は月額会員限定の記事です。都度購入はできません。