歳を取ったとき楽しい毎日を過ごすために趣味をもて、と無責任きわまるアドバイスをする人がいる。わたしもその一人だった。
そもそもわたしは「楽しい」とは何かということも分かったためしがない。子どもが芋ほりや潮干狩りをした後感想を求められると「楽しかった」と言うし、わたしもそう言ったと思うが、苦痛ではなかったということ以外、楽しいとはどういうことか、何も分かっていなかった。たんに「おはよう」「ただいま」と同じ決まり文句だと思っていた(こうやって無責任な発言が培われるのだ)。
大人になると、「楽しむ」と言えるような落ち着いたものとは無縁になった。