お鍋が美味しい季節ですね。
私はよく「豚と水菜だけの鍋」をポン酢で食べるんですが、この鍋をやるときはいつも映画『失楽園』を思い出すんです。失意のサラリーマン(役所広司)と美しい書道家(黒木瞳)の道ならぬ恋。その2人が“最後の晩餐”として選んだのが「鴨とクレソンだけの鍋」でした。
ステーキの横にいてるだけかと思ったクレソンを鍋にするというのが、もう色気ありますよね(豚と水菜とはエラい違いです)。黒木さんは「シャトー・マルゴー」を飲んでました。そして2人ともその鍋にはほとんど手をつけずに、相手の顔だけをじっと見てるんですよね。
鴨はやってられないですよ。
「あんな風に胸がいっぱいになると、お腹は空かないもんなんやなぁ。いやぁ、不倫ってすごいなぁ!」と思いながらも、私は豚と水菜の鍋にシメの水餃子を次々と放り込むのです――。
