内向き議論の遠因
2012/10/30(火) 10:12
日本と関わってそろそろ30年になりますが、未だに納得できない言葉があります。
それは農耕民族と島国根性です。
13年前、組織営業を助けるシステムを営業する際、よく言われたのは「我々が農耕民族だから・・・」です。この場合、その続きは間違いなく「そんなシステムは要らない」ですので言い始めたらもう結論が分かります。
当時、根性と勘に頼る個人営業を、ネットに繋がる携帯電話システムで組織的営業に変えることは、全く新しい試みでした。理解できない、もしくは理解できてもチャレンジしたくない方々が居るのは普通のことですが、私が嫌だったのはその言い訳でした。
「農耕民族だ」は構いません。「必要がない」も構いません。しかし、この二者を繋げるところがとても強引且つ傲慢に感じました。言っている本人は正々堂々でしたが、提案に来ている私も農耕民族であることを忘れています。
「お前の考えは納得できない。帰ってくれ」と言うならば何の問題もありません。営業は所詮、ニーズのあるところに行かないとダメですから、理解できないからと言ってしつこく説得する暇はありません。
ところがいい年の良い立場にいる方が礼儀正しく私を立派な応接間に招きながら、「農耕民族」の特性を長々語るのは耐え難いものがありました。その方々の多くは都会生まれ都会育ちの方々で、ベランダにある奥さんの花に水をやったこともありません。
それにも関らず農耕民族の属性から心情まで語るとはどういう神経とどういうロジックを持っているかが不思議でした。「私も農耕民族だけど」と言う気にもなりませんでした。ただただこの人と一緒になりたくない一心で早く逃げ出したい気持ちでした。
この「農耕民族」とほぼ同じ頻度で出てくる言葉がもう一つあります。
それは「島国根性」です。どちらも「自分も良くないと思うが、仕方がない」というニュアンスで使われます。「君が正論だが、我々ニッポン人には無理だ」という理屈です。
考えてみればイギリスも島国ですし、台湾もオーストラリアも島国です。各大陸も実は大きな島に過ぎません。世界の陸地は全部島です。日本は大きな島でもなく小さな島でもありません。ゆえに島としての特殊性は何一つありません。
ましてや数十年前から情報化とグローバル化が進んで来た結果、北朝鮮のような国を除けば世界中に「島」となる国はもう存在しないのです。
今日になれば、スマートフォンなどを使った営業支援システムが当たり前になりました。ソフトブレーンの社員はどこに行っても、もう「農耕民族だから」とか「島国だから」と言われなくなりました。それだけITに支えられる組織営業が当たり前になってきた証拠です。
しかし、新しいものは常に生まれます。今日から新しいものを提案する人達は、きっと間違いなく「農耕民族だから」「島国だから」と言われるでしょう。
「日本には資源がないから」という台詞も多かったです。それは事実としても、資源のない国は他にもたくさんありますし、「だから製造業にいつまでも拘る」という結論に必ず結び付くロジックはおかしいです。
ディベートを学ばない日本の学校から、ディベートの基本を知らない大人を輩出させるのです。因果関係がしっかりしていないのに強引にその因果関係を使って勝手な結論を導き出す。本来、このような議論の仕方は相手によって指摘されます。
偉い方に反対意見を言うと「無礼だ」と思われる日本では、基本的なロジック破綻も指摘されないのです。それが無理なロジックと定説が蔓延する土壌となります。
そろそろ立場や属性で議論することを止めるべきです。内向き議論の遠因になっています。
それは農耕民族と島国根性です。
13年前、組織営業を助けるシステムを営業する際、よく言われたのは「我々が農耕民族だから・・・」です。この場合、その続きは間違いなく「そんなシステムは要らない」ですので言い始めたらもう結論が分かります。
当時、根性と勘に頼る個人営業を、ネットに繋がる携帯電話システムで組織的営業に変えることは、全く新しい試みでした。理解できない、もしくは理解できてもチャレンジしたくない方々が居るのは普通のことですが、私が嫌だったのはその言い訳でした。
「農耕民族だ」は構いません。「必要がない」も構いません。しかし、この二者を繋げるところがとても強引且つ傲慢に感じました。言っている本人は正々堂々でしたが、提案に来ている私も農耕民族であることを忘れています。
「お前の考えは納得できない。帰ってくれ」と言うならば何の問題もありません。営業は所詮、ニーズのあるところに行かないとダメですから、理解できないからと言ってしつこく説得する暇はありません。
ところがいい年の良い立場にいる方が礼儀正しく私を立派な応接間に招きながら、「農耕民族」の特性を長々語るのは耐え難いものがありました。その方々の多くは都会生まれ都会育ちの方々で、ベランダにある奥さんの花に水をやったこともありません。
それにも関らず農耕民族の属性から心情まで語るとはどういう神経とどういうロジックを持っているかが不思議でした。「私も農耕民族だけど」と言う気にもなりませんでした。ただただこの人と一緒になりたくない一心で早く逃げ出したい気持ちでした。
この「農耕民族」とほぼ同じ頻度で出てくる言葉がもう一つあります。
それは「島国根性」です。どちらも「自分も良くないと思うが、仕方がない」というニュアンスで使われます。「君が正論だが、我々ニッポン人には無理だ」という理屈です。
考えてみればイギリスも島国ですし、台湾もオーストラリアも島国です。各大陸も実は大きな島に過ぎません。世界の陸地は全部島です。日本は大きな島でもなく小さな島でもありません。ゆえに島としての特殊性は何一つありません。
ましてや数十年前から情報化とグローバル化が進んで来た結果、北朝鮮のような国を除けば世界中に「島」となる国はもう存在しないのです。
今日になれば、スマートフォンなどを使った営業支援システムが当たり前になりました。ソフトブレーンの社員はどこに行っても、もう「農耕民族だから」とか「島国だから」と言われなくなりました。それだけITに支えられる組織営業が当たり前になってきた証拠です。
しかし、新しいものは常に生まれます。今日から新しいものを提案する人達は、きっと間違いなく「農耕民族だから」「島国だから」と言われるでしょう。
「日本には資源がないから」という台詞も多かったです。それは事実としても、資源のない国は他にもたくさんありますし、「だから製造業にいつまでも拘る」という結論に必ず結び付くロジックはおかしいです。
ディベートを学ばない日本の学校から、ディベートの基本を知らない大人を輩出させるのです。因果関係がしっかりしていないのに強引にその因果関係を使って勝手な結論を導き出す。本来、このような議論の仕方は相手によって指摘されます。
偉い方に反対意見を言うと「無礼だ」と思われる日本では、基本的なロジック破綻も指摘されないのです。それが無理なロジックと定説が蔓延する土壌となります。
そろそろ立場や属性で議論することを止めるべきです。内向き議論の遠因になっています。
早く言う勇気
2012/10/16(火) 11:32
尖閣問題で大規模デモが発生した翌日の夜、私は上海のレストランで日系企業の現地トップと会食しながら対応をアドバイスしていました。その時、家内が慌てて電話をしてきました。
なんと、息子が日本語で先生にショート・メールで「バカ野郎」と送り付けたため、先生がカンカンに怒っているとのことでした。息子は間違って送ったと言っていたのですが、先生はある理由を挙げて「わざと送った」と言っているらしいのです。
「子供が自ら説明し謝るべきだ」と一瞬考えたのですが、反日デモの雰囲気を考えるとすぐ先生に電話することにしました。
「たけお君が私の携帯にメールを送った。気付かないでいると、彼はわざと私に電話をかけてきた。電話に出られなかったが、着信を見て彼だと気づき、その時、彼は私の顔を見て笑った。後で日本人生徒に聞いて人をバカにする言葉だと知った。」
「たけお君は間違って送ったと言うが、その後わざと電話をかけて見るように催促した。それで挑発と悪意を感じた。」
大人の先生がわざと事実関係を偽ることはないと確信があるので、私はこう言いました。
「この流れを聞けば、確かに息子がわざと送ったと考えざるを得ません。まず親として謝罪します。我々が子供に先生を尊敬するように教えていることを信じてください。息子が酷い悪戯をしたことは過去にもありました。ちゃんと叱って結果を報告します。」
以上の言葉を聞いた先生はすぐ声が柔らかくなりました。「でもお父さん、たけお君を叱っていいですが、殴ってはいけませんよ。」
これで私は落ち着いて息子に経緯を聞きました。しかし、息子はとにかく一生懸命「僕はごめんなさいと言ったよ」と繰り返しました。
「たけお、謝らなくていいから、落ち着いて今日のことを最初から教えて」と言うと、息子が以下のように言いました。
「今日、携帯を変えたの。使い方がよく分からなかった。山田君と喧嘩したからショート・メールで「バカ野郎」と送ろうとしたら、間違って山田君の上にある電話番号を押した。それが先生の番号かもと心配して電話してみたが、先生は電話に気付かなかった。その後先生が電話の着信を確認して僕の顔をみた。僕は怖かったから何も言わないで少し笑った。」
「じゃ、先生に間違ったメールを送ったと分かったね?」
「うん。」
「なぜすぐ『間違えました』と言わないの?」
「僕は怖くて言えなかった。」
・・・
これでやっと事情が分かりました。ポイントは息子が先生と視線を合わせた時、ミスと言えず逃げたことにあります。息子は怖くて黙ったのですが、先生には「早く見ろよ」という挑発に見えたのです。
「たけお、君はミスを確かめるつもりだが、先生はメールを気付かせる催促だと思った。すぐ言わないとどんどん誤解されるよ。」
私の指導の下で息子がメールの経緯、自分がなぜ電話してなぜ黙って笑ったかの説明文を作って先生にメールしました。その20分後、息子が先生に電話してもう少し説明しようとしましたが、先生は明るい声で「よく分かったよ。もう誤解していないから」と。
息子は大変な思いをしましたが、面と向かって言いにくいことが言えないことへの代償を知りました。
我が家の隣の日本大使館にいる丹羽さん、都の尖閣購入について「日中関係の危機になる」と言ったため解任が決まりました。そろそろ帰路に着く彼の気持ちを想像すると泣きたくなりますが、唯一の慰めは彼の勇気が本物だと証明されたことです。
誤解のリスクは常にありますが、早く言う勇気が誤解を解くカギです。
昨日、反日デモがなくなりスクールバスが一週間ぶりに玄関に来てくれました。
その先生がバスに乗ってきて子供達を笑顔で迎え入れてくれました。
なんと、息子が日本語で先生にショート・メールで「バカ野郎」と送り付けたため、先生がカンカンに怒っているとのことでした。息子は間違って送ったと言っていたのですが、先生はある理由を挙げて「わざと送った」と言っているらしいのです。
「子供が自ら説明し謝るべきだ」と一瞬考えたのですが、反日デモの雰囲気を考えるとすぐ先生に電話することにしました。
「たけお君が私の携帯にメールを送った。気付かないでいると、彼はわざと私に電話をかけてきた。電話に出られなかったが、着信を見て彼だと気づき、その時、彼は私の顔を見て笑った。後で日本人生徒に聞いて人をバカにする言葉だと知った。」
「たけお君は間違って送ったと言うが、その後わざと電話をかけて見るように催促した。それで挑発と悪意を感じた。」
大人の先生がわざと事実関係を偽ることはないと確信があるので、私はこう言いました。
「この流れを聞けば、確かに息子がわざと送ったと考えざるを得ません。まず親として謝罪します。我々が子供に先生を尊敬するように教えていることを信じてください。息子が酷い悪戯をしたことは過去にもありました。ちゃんと叱って結果を報告します。」
以上の言葉を聞いた先生はすぐ声が柔らかくなりました。「でもお父さん、たけお君を叱っていいですが、殴ってはいけませんよ。」
これで私は落ち着いて息子に経緯を聞きました。しかし、息子はとにかく一生懸命「僕はごめんなさいと言ったよ」と繰り返しました。
「たけお、謝らなくていいから、落ち着いて今日のことを最初から教えて」と言うと、息子が以下のように言いました。
「今日、携帯を変えたの。使い方がよく分からなかった。山田君と喧嘩したからショート・メールで「バカ野郎」と送ろうとしたら、間違って山田君の上にある電話番号を押した。それが先生の番号かもと心配して電話してみたが、先生は電話に気付かなかった。その後先生が電話の着信を確認して僕の顔をみた。僕は怖かったから何も言わないで少し笑った。」
「じゃ、先生に間違ったメールを送ったと分かったね?」
「うん。」
「なぜすぐ『間違えました』と言わないの?」
「僕は怖くて言えなかった。」
・・・
これでやっと事情が分かりました。ポイントは息子が先生と視線を合わせた時、ミスと言えず逃げたことにあります。息子は怖くて黙ったのですが、先生には「早く見ろよ」という挑発に見えたのです。
「たけお、君はミスを確かめるつもりだが、先生はメールを気付かせる催促だと思った。すぐ言わないとどんどん誤解されるよ。」
私の指導の下で息子がメールの経緯、自分がなぜ電話してなぜ黙って笑ったかの説明文を作って先生にメールしました。その20分後、息子が先生に電話してもう少し説明しようとしましたが、先生は明るい声で「よく分かったよ。もう誤解していないから」と。
息子は大変な思いをしましたが、面と向かって言いにくいことが言えないことへの代償を知りました。
我が家の隣の日本大使館にいる丹羽さん、都の尖閣購入について「日中関係の危機になる」と言ったため解任が決まりました。そろそろ帰路に着く彼の気持ちを想像すると泣きたくなりますが、唯一の慰めは彼の勇気が本物だと証明されたことです。
誤解のリスクは常にありますが、早く言う勇気が誤解を解くカギです。
昨日、反日デモがなくなりスクールバスが一週間ぶりに玄関に来てくれました。
その先生がバスに乗ってきて子供達を笑顔で迎え入れてくれました。
本物のグローバル化と偽のグローバル化の違い
2012/10/04(木) 10:54
キヤノン中国の設立15周年記念パーティーに招待されました。中国アジアを統括するキヤノン中国のトップの小澤さんと友人なので、個人として招待されました。
招待客の多くは地元の代理店の方々で中国人が多かったです。丹羽さんも御手洗さんも来られた盛大なパーティーですが、感心したのは小澤さんのスピーチでした。
「私は中国が好きで過ごしてみてもっと長く住みたいと思いました。しかし、私は御手洗会長と2017年までに100億ドルを売る約束をしました。これを達成できない場合、首になる。皆さん、どうか私が好きな中国に居られるように、どんどんオーダーをください。」
発音こそ標準ではなくどこかの田舎の伯父さんの方言に聞こえるのですが、スピーチ自体は流暢でユーモアに溢れていたため、会場から笑い声と拍手が湧きあがりました。
「15年経ち、その間、中国のGDPが6倍になり、日中貿易額が5倍になりましたが、キヤノン中国の売上は14倍になりました」。司会の女の子の説明にまた会場から歓声が上がりました。
丹羽さんが「日中関係が困難な時期だからこそ、地味な努力が大切だ」とスピーチした時、私は目頭が熱くなりました。
15年の間に、靖国神社問題、船長逮捕問題などなど、いろいろとあって現場の苦労は多々ありましたが、キヤノンは地味にそして確実に中国とアジアの売り上げを伸ばし、今やキヤノン全体の売上の3割ほどに伸し上がりました。
15年前のことを思い出すと、あの頃もっと元気な日本企業はたくさんありました。意気込をもって中国に進出してきた著名会社も多かったです。キヤノンとの差はどこにあるでしょうか。
私が最初に小澤さんに会ったのは私の北京自宅で開いた質素なホームパーティーでした。親交の長いキヤノンマーケティング会長の村瀬さんのご紹介もあって前からお会いしたかったのですが、たまたま我が家での食事会に誘うと小澤さんが気楽に来られました。
第一印象は辛口でした。不愉快にならないのですが、聞いていると普通の日本人がなかなか言う勇気のないことを平気でいうのです。表情が明るく、迷うことがなく言うから少しも悪意を感じず、かえって好感を持ちます。
ある日、北京空港で飛行機を待っていると、目の前のスクリーンに小澤さんがカメラ目線で話しながら歩く姿が飛び込んできました。なんとご本人がジェスチャーしながら中国語で話しているのです。
こんなことをする中国法人の外人社長は日本人だけではなく、欧米人も含めて珍しいです。本人に言っていないのですが、一層彼への敬意が深まりました。
小澤さんがこうだから、当然彼の部下たちも中国語が上手な人が多く、地元のパートナーとの関係が当然強くなり、当然それが業績に反映されます。
小澤さんは米国にも長く居て英語も流暢です。彼は御手洗さんや村瀬さんなどのキヤノンの先輩たちと一緒に米国市場を開拓してきた功労者でもあるのです。
その彼が米国から中国に転戦し、中国語を覚え、中国の友人を作り、中国社会に溶け込み、キヤノンの業績を伸ばしてきました。
海外の売り上げがゼロに等しい企業の日本本社で公用語を英語にするパフォーマンスをする企業がある一方、静かに海外の売り上げを8割以上に増やしたキヤノンのような本物グローバル企業もあります。
本物のグローバル化と偽のグローバル化の違いはどこにあるでしょうか。私はグローバル人材の量と質に差があると思うのです。グローバル人材の育成には長い道のりとぶれない戦略が必要なのでパフォーマンスと思い付きではできないからです。
P.S.
このメルマガを書いた直後に、尊敬している経営者の先輩、岡野さん(スタッフサービスの創業者)からお電話をいただきました。「宋さん、俺が今何をしていると思う?・・・「宋文洲猛語録」を読んでいるよ。今まで読んだ本の中で最高のビジネス本だよ、これ。電話したのはこの感動を伝えるためだよ。」
・・・そういえば先月「宋文洲猛語録」を出版しました。ツイッターでのつぶやきを抜粋、整理したものです。9月10日発表の八重洲ブックセンターの週間売上ランキングでは1位にもなりました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4478083207/
どんな感じかを示すために、昨日(9月10日)のつぶやきをサンプルとして下に表示しておきます:
・実現方法について異なる意見をいうのはいいが、企業方針に異論を唱える社員は辞めるとよい。
・どんな立派な企業理念を持っても、生きるためにまず環境変化に対応する必要がある。だから経営者が言うことが変わる。経営者の変化についてく努力は環境適応の努力でもある。
・やりたいことをやって給料をもらうなんて甘いよ。給料の大半は慰謝料と思え。
・俺は人の方針に従いたくないから自分で創業した。しかし、創業の苦労から人の方針に従うことの大切さを理解した。従うか従わないかは重要ではない。
自分のしたことを、自分で始末することが重要なんだ。
・その発言はゴールを目指すための発言か、それとも自分を正当化するための発言かは、社長には一瞬で分かる。だから組織の目標を意識しないサラリーマンの発言はトップに嫌われる。すぐ言わないが・・・
・そこにリーダーらしい人がいないならば、そこに部下らしい人もいないはず・・・弁証法の原理。
(終わり)
招待客の多くは地元の代理店の方々で中国人が多かったです。丹羽さんも御手洗さんも来られた盛大なパーティーですが、感心したのは小澤さんのスピーチでした。
「私は中国が好きで過ごしてみてもっと長く住みたいと思いました。しかし、私は御手洗会長と2017年までに100億ドルを売る約束をしました。これを達成できない場合、首になる。皆さん、どうか私が好きな中国に居られるように、どんどんオーダーをください。」
発音こそ標準ではなくどこかの田舎の伯父さんの方言に聞こえるのですが、スピーチ自体は流暢でユーモアに溢れていたため、会場から笑い声と拍手が湧きあがりました。
「15年経ち、その間、中国のGDPが6倍になり、日中貿易額が5倍になりましたが、キヤノン中国の売上は14倍になりました」。司会の女の子の説明にまた会場から歓声が上がりました。
丹羽さんが「日中関係が困難な時期だからこそ、地味な努力が大切だ」とスピーチした時、私は目頭が熱くなりました。
15年の間に、靖国神社問題、船長逮捕問題などなど、いろいろとあって現場の苦労は多々ありましたが、キヤノンは地味にそして確実に中国とアジアの売り上げを伸ばし、今やキヤノン全体の売上の3割ほどに伸し上がりました。
15年前のことを思い出すと、あの頃もっと元気な日本企業はたくさんありました。意気込をもって中国に進出してきた著名会社も多かったです。キヤノンとの差はどこにあるでしょうか。
私が最初に小澤さんに会ったのは私の北京自宅で開いた質素なホームパーティーでした。親交の長いキヤノンマーケティング会長の村瀬さんのご紹介もあって前からお会いしたかったのですが、たまたま我が家での食事会に誘うと小澤さんが気楽に来られました。
第一印象は辛口でした。不愉快にならないのですが、聞いていると普通の日本人がなかなか言う勇気のないことを平気でいうのです。表情が明るく、迷うことがなく言うから少しも悪意を感じず、かえって好感を持ちます。
ある日、北京空港で飛行機を待っていると、目の前のスクリーンに小澤さんがカメラ目線で話しながら歩く姿が飛び込んできました。なんとご本人がジェスチャーしながら中国語で話しているのです。
こんなことをする中国法人の外人社長は日本人だけではなく、欧米人も含めて珍しいです。本人に言っていないのですが、一層彼への敬意が深まりました。
小澤さんがこうだから、当然彼の部下たちも中国語が上手な人が多く、地元のパートナーとの関係が当然強くなり、当然それが業績に反映されます。
小澤さんは米国にも長く居て英語も流暢です。彼は御手洗さんや村瀬さんなどのキヤノンの先輩たちと一緒に米国市場を開拓してきた功労者でもあるのです。
その彼が米国から中国に転戦し、中国語を覚え、中国の友人を作り、中国社会に溶け込み、キヤノンの業績を伸ばしてきました。
海外の売り上げがゼロに等しい企業の日本本社で公用語を英語にするパフォーマンスをする企業がある一方、静かに海外の売り上げを8割以上に増やしたキヤノンのような本物グローバル企業もあります。
本物のグローバル化と偽のグローバル化の違いはどこにあるでしょうか。私はグローバル人材の量と質に差があると思うのです。グローバル人材の育成には長い道のりとぶれない戦略が必要なのでパフォーマンスと思い付きではできないからです。
P.S.
このメルマガを書いた直後に、尊敬している経営者の先輩、岡野さん(スタッフサービスの創業者)からお電話をいただきました。「宋さん、俺が今何をしていると思う?・・・「宋文洲猛語録」を読んでいるよ。今まで読んだ本の中で最高のビジネス本だよ、これ。電話したのはこの感動を伝えるためだよ。」
・・・そういえば先月「宋文洲猛語録」を出版しました。ツイッターでのつぶやきを抜粋、整理したものです。9月10日発表の八重洲ブックセンターの週間売上ランキングでは1位にもなりました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4478083207/
どんな感じかを示すために、昨日(9月10日)のつぶやきをサンプルとして下に表示しておきます:
・実現方法について異なる意見をいうのはいいが、企業方針に異論を唱える社員は辞めるとよい。
・どんな立派な企業理念を持っても、生きるためにまず環境変化に対応する必要がある。だから経営者が言うことが変わる。経営者の変化についてく努力は環境適応の努力でもある。
・やりたいことをやって給料をもらうなんて甘いよ。給料の大半は慰謝料と思え。
・俺は人の方針に従いたくないから自分で創業した。しかし、創業の苦労から人の方針に従うことの大切さを理解した。従うか従わないかは重要ではない。
自分のしたことを、自分で始末することが重要なんだ。
・その発言はゴールを目指すための発言か、それとも自分を正当化するための発言かは、社長には一瞬で分かる。だから組織の目標を意識しないサラリーマンの発言はトップに嫌われる。すぐ言わないが・・・
・そこにリーダーらしい人がいないならば、そこに部下らしい人もいないはず・・・弁証法の原理。
(終わり)
宋文洲
85年に北海道大学大学院に国費留学。天安門事件で帰国を断念し、札幌の会社に就職するがすぐに倒産。学生時代に開発した土木解析ソフトの販売を始め、92年28歳の時にソフトブレーンを創業。98年に営業など非製造部門の効率改善のためのソフト開発とコンサルティング事業を始めた。 2000年12月に東証マザーズに上場。成人後に来日した外国人では初のケースとなる。 2005年6月1日には東証1部上場を果たし業界最大手に成長。 2006年8月31日ソフトブレーン会長退任、経営から退く。 現在は、経営コンサルタント経済評論家として北京と東京を行き来する。
http://www.soubunshu.com/
メール配信:ありサンプル記事更新頻度:不定期※メール配信はチャンネルの月額会員限定です