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【ぶろまが】世界を描き始めた「テンプリズム」
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【ぶろまが】世界を描き始めた「テンプリズム」

2014-12-05 12:00
    【ぶろまが】世界を描き始めた「テンプリズム」

    曽田正人とはどういう作家か。
    少年チャンピオン、月刊マガジン、ビッグコミックスピリッツというメジャーな場所で「シャカリキ」「カペタ」「昴」を描いてヒットさせてきた、まっすぐな作家というイメージでしょう。
    その作品の主人公たちは天才でありながら悩み努力し、勝利して行く王道の内容でありました。彼らはしかし、ある一定の場で勝利を得るものの、世界に出ることはありませんでした。
    唯一「昴」は世界に羽ばたきました。が、作品中で最大にわくわくさせてくれたファーストコンタクトを描くことはありませんでした。
    (ダンスでファーストコンタクトと言うのは実はありえるもので、「スターダンス」というファーストコンタクトSFの傑作も存在します)
    「シャカリキ」は才能が頂点に達した主人公が世界に目を向けた瞬間に終わりました。「カペタ」はその競技の特性上、国の外での戦いまで視野にあるかとも思いましたが、「世界」を描くことがありませんでした。
    そんな曽田正人が手がける新作が「テンプリズム」です。
    これは一言で言えば、王道と言われるファンタジーです。これは小道具の一切までを「創作」しなければならない、つまり世界の一切を創作する非常に作家のエネルギーを使うジャンルです。
    例えば、その世界の文明レベル。例えば生活習慣。例えば食べ物。例えば政治形態・・・。現代劇や時代劇では脳裏によぎらせる必要すらないものを考えるということです。
    これはつまりはデザイン能力が非常に重要になってくるということです。
    デザインとは狭義の意味でも「意匠」であり、広義の意味でも「計画」「設計」と言う意味も持ちます。
    つまり世界をデザインする。
    映画「スターウォーズ」が脚本や演出に粗があっても傑作である理由がこのデザインにあります。
    ライトセーバー、ミレニアムファルコン号、ダースベーダー卿・・・それぞれがアイコンになる力を持つデザインでした。
    漫画なども同じく、デザインに優れたファンタジーが傑作が残ります。
    脚本はスキル=お勉強でカバーできるところも多々あります。演出が下手でもいいデザインを見てるだけで人は感心できます。
    つまりデザインこそ「創作」すると言うことだとも言えます。
    そして人間は文明が出来る遥か前から、月から人が降りてくる物語を「創作」したり、神が住まう山や神殿を「創作」してきました。
    この創作をする動物であるところの人間だからこそ、文明を作り、世界を作って来れたのです。
    世界を作らんと言う想像力にこそ、「創作」と言う言葉はふさわしい。

    ひるがえって「テンプリズム」とはなにかといえば、それは曽田正人と言う王道の漫画を描いてきた人間の王道の漫画表現で描かれていると言うことです。
    漫画の表現として曽田と言う作家は奇をてらわない。まっすぐに天才を描くことで天才と言うキャラの感情もまっすぐ読み取ることが出来たわけです。
    しかしながら個々のデザインが優れた漫画や映画は表現もデザイン的=抽象的になることで世界観をより強化します。
    つまりまっとうな演出と言うものから飛翔する場合が多々あります。
    ファンタジーを読む快感のひとつに、異世界のそこにいるという感覚を得る、非日常の体感をするエンターテイメントでもあると言うことです。
    前述したデザイン主体のファンタジーは実はこの体感と言うものが、そのデザインの高さによる語り口によって「体感」より「俯瞰」するに近いものになります。
    そこで曽田正人は、凡人には理解できない「天才」の感覚を「体感」させることの出来る作家が、今度は天才がたどり着かなかった「世界」を「体感」させようとしているのが「テンプリズム」だと言えるのです。
    だからこそひねること無く真っ正面にファンタジーを描く「テンプリズム」が素直に楽しいと思えるのです。

     
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