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日米中を例に具体的に「バック・パッシング」を考えてみた。|THE STANDARD JOURNAL
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日米中を例に具体的に「バック・パッシング」を考えてみた。|THE STANDARD JOURNAL

2014-02-18 14:41


    おくやまです。

    前回は「バック・パッシング」という
    大国が頻繁に使う戦略について述べてみましたが、
    今回も引き続きこれについて書いてみたいと思います。
    
    この「バックパッシング」というのは、
    一体どのような場合に行われるのでしょうか?
    
    私が翻訳したミアシャイマーの『大国政治の悲劇』では、
    単なる「バック・パッシング」の歴史上の使用例だけでなく、
    これが使用される際には4つのパターンがある、
    ということを説明しております。
    
    実際にこの本の第5章に書かれていることをまとめると、
    以下のようになります。
    
    1.バックパッシングする側(バック・パッサー)は、
     侵略的な国と良い外交関係を保とうとする、
     もしくは、少なくとも刺激しないようにする。
    
    2.バック・パッサーは、バック・パッシングされる側(バック・キャッチャー)
      との関係を疎遠にする。
    
    3.バック・パッサーは、いざという時にそなえて、
      自国の力を増強しようとする。
    
    4.バック・パッサーは、バック・キャッチャーの国力増強を支持する。
    
    おわかりいただけるでしょうか?
    
    ただしこれだと「パッサー」とか「キャッチャー」という言葉が出てきて
    少々わかりづらいかもしれないので、
    より具体的な例に当てはめて考えてみましょう。
    
    -:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-
    
    まずはキャラクターの設定です。
    
    登場人物はアメリカ、日本、中国としましょう。これはいいですよね。
    
    そして、
    
    ●バック・パッシングする側、つまり「バック・パッサー」をアメリカ。
    
    ●バック・パッシングされる側、つまり「バック・キャッチャー」を日本。
    
    ●「侵略的な国」を中国。
    
    ということで考えてみましょう。
    
    これを上の4つのパターンにそのまま当てはめてみると、
    とても面白いことがわかります。
    
    1.アメリカは、中国と良い外交関係を保とうとする、
      もしくは、少なくとも刺激しないようにする。
    
    2.アメリカは、日本との関係を疎遠にする。
    
    3.アメリカは、いざという時にそなえて、
      自国の力を増強しようとする。
    
    4.アメリカは、日本の国力増強を支持する。
    
    ううむ、なんだかこれは
    現在の東アジアの状況に当てはまっているとは思えませんか?
    
    たとえば(1)は、まさにオバマ政権が
    習近平政権に対して行っている行動そのものであり、
    最近の防空識別圏の問題へのあいまいな対応などは
    その典型です。
    
    (2)ですが、これは安倍政権とオバマ政権との関係を
    そのまま表していると言えるでしょう。
    
    これは、もはや周知の事実となっているように、
    中国が日本とアメリカの間にくさびを打ち込むべく、
    様々な活動を行なっている・・・という影響もあるかと。
    
    (3)ですが、すでにアメリカの軍事力は圧倒的でありながら、
    財政危機による軍事費削減があるくらいですから、
    実際にはこれに当てはまらないと言えるかもしれません。
    
    しかし少なくともアメリカの国防省は
    「エアシー・バトル」という作戦構想や、
    「オフショア・コントロール」という軍事戦略が
    議論されていることから、いざとなったら「対中国」で
    軍備をさらに増強する可能性も大いにあります。
    
    (4)ですが、これは主にアメリカの共和党や国防省が
    日本に対して行っている行動に当てはまると言えます。
    
    また、アメリカが「アベノミクス」を容認して評価していることも、
    これに当てはめて考えてもいいかもしれません。
    
    いずれにせよ、このミアシャイマーの
    「バック・パッシング」のメカニズムについての4つのパターンは、
    東アジアの国際的な状況を見るときに
    色々なヒントを教えてくれるものである、というのは
    間違いないところだと言えるでしょう。
    
    -:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-
    
    ここで覚えておかなければならないのは、
    上のいずれのパターンも、アメリカが中国という脅威に
    直接対決したくないために行う、
    実に「利己的な動機から行われる行動」である、
    ということです。
    
    そしてそれは、アメリカ自身の国益に最もかなったものなのです。
    
    前回と同じことの繰り返しになりますが、
    国際関係というのは危険なビジネスです。
    
    日本は、アメリカによって中国へとぶつけられずに
    国力を上げることができるのか・・・・
    
    これは日本だけでなく、中国とアメリカという
    他のプレイヤーの思惑もかかってくるために、
    外交面でかなりのスキルが必要になってくることは
    言うまでもありません。
    
    日本の現状において、ミアシャイマー教授を始めとする
    「リアリズム」学派の学者や知識人達が説く主張からは、
    現実政治を読み解く上で、多くの示唆を得ることが出来ます。
    
    こうして「アメ通」を読み続けている皆さんでしたら、
    国際政治に関する様々な学説などは既にご存知でしょう。
    
    しかし、この「リアリズム」という学派が、
    日本でどれほどの人から認識されているのか?と想うと、
    正直に言って、非常に心許ないものを感じるのも事実です。
    
    もちろん、私自身が多くの翻訳をした、ということもありますが、
    この「リアリズム」という学問から得られる知見を
    もっと多くの人に知って頂きたいと想っております。
    
    
    ( おくやま )

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