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自滅に向かう?!中国を巡る情勢の変化|THE STANDARD JOURNAL
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自滅に向かう?!中国を巡る情勢の変化|THE STANDARD JOURNAL

2014-05-30 16:50



    おくやまです

    
    
    「アメ通」読者の皆さんならば、
    すでに薄々とはお気付きかとは思いますが、
    どうやら、世界情勢の潮目は確実に変化しているようです。
    
    「おくやまさん、今回は唐突になんですか!」
    というツッコミが飛んできそうですが、
    このところ、ずっと話題にしております、
    ルトワック氏に会って、ディープな話をたくさん聞いて、
    やはり、そうか・・・という感を抱きました。
    
    その中でも、特に、アメリカの安全保障コミュニティーが
    中国に対する警戒をかなり強めているという話があり、
    それを証明するような出来事が数日前にあったようです。
    
    それは何かというと、
    かの有名な外交評議会(CFR)にて行われた、
    アメリカの元国防長官ロバート・ゲーツ氏の講演です。
    
    「アメ通」読者の皆さんには
    もはやご説明する必要もないとは思いますが、
    このゲーツ氏は、前ブッシュ政権とオバマ政権で
    アメリカの国防長官を4年半にわたって務め、
    それ以前にはブッシュ(父)の政権でもCIA長官を務めた大物です。
    
    ▼Robert Gates|huffingtonpost.com
     China, Russia Are Becoming Aggressive
      As They Perceive U.S. Pulling Back
    
      http://goo.gl/NRAb3b
    
    この講演でゲーツ氏が何を言ったかというと、
    中国はここ2年くらいで「かなり侵略的になった」ということであり、
    この変化の一端は、中国(とロシア)が
    「アメリカが世界から手を引きつつあるぞ!」
    と感じているから、その穴を埋める形で起こったということです。
    
    また、ゲーツ氏は、
    尖閣周辺が「非常に危険になっている」
    と言っておりまして、
    「数年前まで本物の軍事衝突が起こるとは思わなかったが、
    今は起こりそうな状況になっている」
    と懸念を表明しております。
    
    また、最近では、米中間で
    サイバー空間をめぐる争いも激化しておりまして、
    10日ほど前には以下のようなニュースもありました。
    
    ===
    
    ▼アメリカが中国軍関係者5人を訴追 サイバー攻撃による産業スパイ容疑
    [ワシントン 19日 ロイター] http://goo.gl/CfBB3R
    
    米連邦大陪審は、米企業にハッカー攻撃を行い
    企業秘密を盗んだとして、中国軍関係者5人を訴追した。
    米司法省が19日、明らかにした。
    
    容疑者はピッツバーグにある原子力や
    金属、太陽光発電産業を標的にしていたとしている。
    米当局者は過去数年、サイバー攻撃によるスパイ行為が
    国家安全保障上の主要懸念の1つとしていた。
    だが米国が実際に、サイバー攻撃による企業へのスパイ容疑で
    海外の政府当局者を訴追したのは今回が初めて。
    
    ===
    
    このニュースについても、ゲーツ氏はコメントしており、
    彼によれば今回のアメリカ政府側の「訴追」の発表の狙いは、
    以下のように3つあるとしております。
    
    1,米国の企業に対して「ネットからの秘密漏洩を気をつけるように!」と警告する。
    
    2,中国側に対して「米政府はこの件に関して本格的に問題視し始めたぞ!」と警告する。
    
    3,米国民に対して「政府はこの問題に真剣に取り組み始めましたよ!」と知らせる。
    
    ここで興味深いのは、この3つの狙いのうちの2つは、
    アメリカの国内向けに(企業と国民に対して)発せられたという点です。
    
    結局のところ、中国という大国との対決や
    「冷戦」のような大戦略の転換を伴うものについては、
    アメリカ政府でさえも国内からのある一定の支持や理解がなければ、
    その政策は実行不可能であるということを現しております。
    
    政府のトップとして仕事をしてきたゲーツ氏のような立場の人物が、
    このような事実をよく認識しているというのが興味深いところです。
    
    また、ゲーツ氏は同じ講演の中で、
    
    「東南アジアの国々はアメリカと共に
     一致団結(band together)して
    中国の侵略に対抗して行くべきだ」
    
    とまでコメントしております。
    
    これはつまり、中国に対する周辺国同士の
    「バランシング同盟」(balancing coalition)
    の結成を示唆しているわけです。
    
    そして、この発言の背景には、
    前述のニュースにもある、中国とのサイバー関連の事案であり、
    加えて、最近大きな話題となった
    中国とロシアの30年間に渡る天然ガスの供給契約締結のニュース
    などがあることは間違いありません。
    
    この講演会で司会者を務めたのが、
    ファリード・ザカリア氏という、その筋では有名な方だったのですが、
    この講演の感想を以下のように書いております。
    
    http://goo.gl/w4B3FH
    
    「米中の天然ガスのニュースでもわかるように、
    伝統的な地政学はまだ生き続けていることがよく分かる。
    ただし米政府は同盟国と共に世界をどう動かしていくかはわかっているが、
    サイバーによるスパイ活動というのは全く新しいフロンティアであり、
    誰もこの領域の問題をどう解決していけばいいのかわかっていない」
    
    というやや悲観的なコメントで締くくっております。
    
    -:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-
    
    さて、ご存知のように、日本では集団的自衛権の行使をめぐって
    国会で論戦が始まっております。
    安倍政権が積極的に取り組んでいる、
    法律的な議論や形式論は、もちろん非常に大事ですので、
    私はこれを期に徹底的に議論を闘わせるべきだと考えております。
    
    そして、それのみならず、同時進行でしっかりと認識しておくべきことがあります。
    それは、われわれを取り巻く国際環境は、
    すでに「米中冷戦」とでもいうべき「大国政治」が始まっており、
    もはや、日本もこの大きな潮流に巻き込まれていかざるを得ないということ。
    
    ここで重要となってくるのは、
    アメリカのような大きな「パワー」もった国、
    そのトップたちの「世界観」です。
    
    「大国政治」をコントロールせんとしている
    トップの人間たちが、
    いかなる「世界観」を持っているのか?
    
    このことが世界全体の政治の流れに
    大きな影響を与えることになるのです。
    
    今回、私がどうしてゲーツ氏の話題を取り上げたのか?
    これで、ご理解頂けたと思います。
    
    ゲーツ氏の警告は、アメリカのトップたちの「世界観」
    が確実に変化していることを教えてくれます。
    
    そして決して、露骨に「敵視」などはしていませんが、
    アメリカが中国(とロシア)に対して警戒を強めているのは、
    紛うことなき事実なのです。
    
    最近のプーチン大統領の"獰猛な"行動を目の当たりにして、
    多くの日本人もさすがに気が付いたのではないでしょうか。
    今こそ、「大国政治」について学び・考える時なのです。
    
    ( おくやま )

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