THE STANDARD JOURNAL
おくやまです。
先日のことですが、ヨーロッパの政治を専門に研究されている
大学教授の方と少し話をするチャンスがありました。
この方は私が翻訳した『大国政治の悲劇』の原著者である
ミアシャイマー教授の講演をどこかで聴講したようで、
ミアシャイマーの議論には説得力があることを認めつつも、
「彼の理論はアナクロニズムの冷戦思考から抜けきっていない」
と極めて批判的でした。
要するにミアシャイマー教授のリアリズムの理論は
「時代遅れだ」と言いたいらしいのです。
どうやら話を聞いていると、この先生はヨーロッパの政治
(とくにEUのそれ)が専門なため、
ここで行われている政治は完全にボーダーレスであり、
その政治プロセスが「進化」していて、時代の最先端を行っている、
という認識らしいのです。
ところがミアシャイマー教授の議論は、
このような「新しい政治」の話ではなく、
あいかわらず安全保障を巡ってあらそっている大国というイメージです。
この先生に言わせれば、そのような「大国政治」が展開されていたのは
冷戦以前の古い時代の話であり、冷戦後の、とりわけヨーロッパでは、
このような安全保障をめぐる争いは恐竜のように死に絶えたという
認識なのです。
したがって、ヨーロッパの政治は進んでいて、
その性質も完全に変化しており、
そのような状態を考慮しない
ミアシャイマーは時代遅れだということになるわけですね。
たしかにこのような議論には一理あると思うのですが、このような
「時代は変化した、古い理論は間違いだ」
という議論にたいして、私はどうも懐疑的です。
というのも、リアリズムや戦略研究を勉強してきた人間の目からすれば、
このような「政治が変化した」という議論は幻想である
という感覚が拭えないからです。
戦略研究の分野から、一つの例を挙げてみます。
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