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孫子を理解する鍵は「道」(Tao)の思想!?|THE STANDARD JOURNAL
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孫子を理解する鍵は「道」(Tao)の思想!?|THE STANDARD JOURNAL

2015-05-08 19:56




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    おくやまです

    以前、私のブログでも紹介した、
    デレック・ユエンの『孫子解読:兵法の読み方』
    という本をご紹介します。

    Deciphering Sun Tzu: How to Read the Art of War 
    by Derek M. C. Yuen 

    その内容は彼の博士号論文を元にしたものであり、
    西洋の読者に対して孫子の兵法を解説しつつ、
    その文化的・哲学的な背景を、
    西洋の戦略思想と比較しながら炙りだしていくというスタイルです。

    まず目次は以下の通り。

    1, 中国戦略思想のシステム
    2,「兵法」が生まれるまでの話
    3,孫子から老子へ:中国戦略思想の完成
    4, 兵法解読
    5, 西洋の孫子の継承者:ボイドとリデルハード
    6 中国の戦略文化について

    著者は第一章で、古代中国にも西洋の戦略思想のベースとなっている
    階層的な考えがあったことを指摘しつ、
    中国の戦略思想には体系的に四つの学派が存在したとして、

    1,戦略学派(権謀)
    2,作戦戦術学派(形勢)
    3,陰陽学派
    4,技術学派:(技巧)技術、テクノロジー

    と分類しております。

    実際のところ、3を除けば
    西洋の戦略思想にもそれに当てはまるものはあるわけですが、
    決定的に欠けているのが3の「陰陽学派」。

    それに中国の戦略思想には「天地人」という三つのレベルがあり、
    それを全般的に理解するためのカギになるのが
    「道」(Tao)の思想だと分析します。

    第二章と第三章では、
    実は老子(の書物:道徳経)が
    孫子の影響を受けてまとめられたことや、
    その成立までの道教的な思想的背景について解説しております。

    おそらく本書の白眉は第四章の
    西洋の戦略思想との比較から特徴をあぶり出すところであり、
    孫子が西洋のもの(とくにクラウゼヴィッツのもの)と較べて
    大戦略レベルを扱い、同時により包括的な視点をもっていることや、
    有名な格言についてそれぞれ解説しているところです。

    ここで指摘されるのは、
    孫子は戦略の心理学的な部分を強調していたという点であり、
    それが「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」や
    「上兵は謀を伐つ」という格言に活かされていて、
    それをよくわかっていたのがボイドとワイリーだという指摘をしております。

    そして第五章でボイドとリデル・ハートとの比較をさらに行い、
    第六章では中国の戦略文化に関する指摘として、
    西洋では「孔孟戦略文化」と「戦闘的戦略文化」の二つがあることを
    理解できている学者が少ないことを挙げており、
    一般的に西洋における
    中国の戦略文化の研究が浅いことを指摘しております。

    たしかに西洋では中国の「三国志」や「漢書」、
    それに四書五経などについての知識はほぼ皆無に近く、
    孫子そのものについてもそこまで深く理解されているとは言えず、
    その点では日本はこの分野においては
    相当有利な立場にあることがわかります。

    ただし本書の最大の「売り」は、
    なんといっても現在の中国系の戦略思想をわかる人間が、
    西洋の戦略思想をダシにして
    それをわかりやすく伝えようとしているという点ではないでしょうか。

    本文自体は180頁ほどと短いのですが、
    書かれている内容はとても濃密。
    これを読むことによって逆に
    西洋の戦略思想のいくつかの特徴もわかるという意味で、
    大変有用であると思います。

    似たような本としては西洋人側からの視点による
    「孫子とクラウゼヴィッツ」という本(というかモノグラフ)がありますが、
    むしろ本稿で紹介している本のほうが
    中国側の思想に迫っているという意味で
    日本人的には興味深いと思われます。

    以下は本書の中で私が気に入った文の引用です。ご参考まで。

    ●戦争はすべて完全に「複雑系」なわけではないが、
    人間的な面が支配的な一つの「複雑系」ではある。

    ●孫子は合理的な力と非合理的な力が
    戦争に存在することを理解していたために、クラウゼヴィッツと比較して、
    戦争をそこまで予測不可能なものとはみなしていない。

    ●孫子は戦争を「マインド・ゲーム」であると見ていた。

    ●クラウゼヴィッツは「己」を知っているのかもしれないが、「彼」を知らない。

    ●孫子がよく強調する「正と奇」であるが、この核心にあるのは「謀を伐つ」、
    つまり敵の思考を攻撃するということであった。
    そういう意味で、戦争というのは、常にその本質から心理的なものである。

    ●孫子の最大の課題は、戦争や戦闘に勝つことではなく、
    すべてを「天下の元に(中国によって)治める」ということであった。

    ●戦略では、それがどう受け取られるかがすべてだ。
    結果的に、相手の知覚を操作することが戦略のエッセンスなのだ。

    ●中国の戦略思想では、腕力やテクノロジーよりも
    「脳力」のほうに重きを置いており、そのために軍事紛争よりも
    大戦略面での争いのほうがより「正統的」な紛争の形である
    と認識されている。

    以上

    ( おくやま )
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