「アメ通」運営です。

番組中ではこれまで何度も
そもそも「リアリズム」とは何なのか?
という解説・説明はしてきましたが、
このところまた、「リアリズム」が
話題に上がることが多くなってきましたので、
改めて、以前、奥山博士にお願いして
書いて頂いたテキストが簡潔で
ツボを押さえているので、再度ご紹介します。

▼「リアリスト」とはそもそもどういう考え方をする人達なのか?

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日本で「リアリスト」というと、あえて大雑把にいえば、
いわゆる「現実派」というイメージになります。
汚い仕事からも目をそらさず実行するという
「実務派」という意味でとらえられがちです。

これはアメリカでも同じであり、
政治信条などを度外視して、生臭い権力闘争や、
利権の力学で政治をおこなう実務派たちを
「リアリスト」と呼ぶことがあります。
例えば、チェイニー元副大統領などがその代表的な人物であり、
血の通わない冷酷な人物である、とみられがちです。

しかし、ここで解説したい「リアリスト」というのは、
そういった政府の「実務派」といった意味合いではなく、
「国際関係論」(International Relations)という学問の中の
「リアリズム」という理論を信じる学者たちのことになります。

▼「リアリズム」とは何なのか。

「リアリズム」といえば、美術などの分野では
「写実主義」のような意味になりますが、
国際政治を理論的に分析しようとする「国際関係論」という学問では、
ズバリ!「国際関係を、主に『権力(パワー)』という要素にしぼって
分析、予測する理論」ということです。

つまり、「リアリズム」とは、
「国際政治というのはすべて権力の力学による闘争なのだ!」
と現実的(realistic)に考える理論です。
よってリアリズム(現実主義)となるわけです。

さて、この理論の中核にある
「権力=パワー」というコンセプトがまずクセものです。

「リアリズム」学派では、伝統的に、

「権力=パワー」というのは、主に「軍事力」によって支えられる

と考えられています。よって、彼らにとってみれば、
国際政治を動かす「パワー(power)」というのは、
「軍事力による脅しや実際の行動(攻撃)によって、
相手の国を自国の意思にしたがわせる能力」
ということなのです。

究極的にいえば、「リアリズム」では、
この「パワー」こそが国際社会を動かす唯一最大の要素なのです。
ですから、ここに注目してさえいれば、
概ね相手の動きは読めてしまう、ということなのです。

このような考え方は、平和信仰の強い日本人にしてみれば、
「なんとえげつない理論だ」と思われることでしょう。

ところが欧米の国際関係論の学界では、
この「リアリズム」という概念が
一番説得力のある強い理論だとされており、
あえて刺激的な言い方をしますと、
これを知らない、いや、知っていても認めないのは、
アカく染まった日本の学者や
知識人たちだけとも言える状況なのです。

国際関係学においては、
「リアリズム(現実主義派)」と「リベラリズム(自由主義)」
がメジャーな存在ですが、その他にも、
「マルクス主義」や、「コンストラクティビズム」などがあります。

※これを日本の政界の状態と照らし合わせてみると、
リアリズムは自民党、リベラリズムが民主党(旧社会党)、
そしてその下にマルクス主義の共産党、フェミニズムが社民党、
そして最近発達が目覚ましいコンストラクティビズムが公明党。
多少強引ではありますが、このような図式になりそうです。

リアリストたちが「国際社会はパワーの闘争によって動かされている!」
と考えていることはすでに述べたとおりですが、その彼らにすれば、
「平和」というのは単なる「闘争の合間の小休止」、
もしくは「軍事バランスがとれていて、お互いに手出しできない状態」
ということになります。

よって、軍事バランスがくずれれば、
世界の国々はいつでも戦争をおっぱじめる、
というのが彼らの言い分なのです。

では、国際社会を「平和」に保つためにはどうしたらいいのか?
彼ら「リアリスト」に言わせれば、そんなことは単純明快。

「軍事バランスを保つこと」。

より具体的に言えば、
世界中のライバル国家たちに軍事力でバランスをとらせて、
お互いに手出しさせないようにしなさい。ということなのです。

( 奥山真司 )