Model: 蘭舞ユウ
元々、広角レンズが装備されているスマホのカメラは、通常の光学レンズが作り出す画角の考え方から離れた方がよいと自分は考えます。広角レンズで撮ることの重要さは、構図の中にどれだけの情報量を詰め込めるか?なのです。この1枚もモデルの蘭舞ユウさんをメインで狙っているのですが、そこそこ近づいてスマホを構えてみても、これだけの情報量が構図に入ってきます。
まず、上のインベーダーを構図に取り込みたいなと考え、この立ち位置にして、画面の右を空けて、通行人を入れ込んでドキュメンタリー的な要素を盛り込みます。
3つのモノを構図に組み込んで、複雑にして、一見すると関係のないそれぞれのエレメントが有機的にリンクを張ってくれるように見立てます。こうすることで写真を見る者が様々なストーリーを勝手に考えはじめます。そんなことを狙った1枚。
これは、典型的なワイドショットですが、このロケーションの面白いところは、手前にパイロンがあって、被写体が立っていて、壁のグラフィティがあり、そのまた後にも階段のある風景が続いてゆくことです。
3つのものが重なることで、パースペクティブ=遠近感が生まれます。自分が考える写真のパース(ペクティブ)の効果が出てくるのは、最低3つのものがレイヤーで重なることが条件です。なかなか起こりませんが、レイヤーが4つ重なったら最高です。
そんな遠近感を楽しむことも広い画角の醍醐味なのです。
では、この1枚はどうでしょうか?
さきほどの写真とは打って変わって、被写体の周りが真っ白で空白のスペースがたくさんあります。一見、さみしい雰囲気ですが、情報量がない空白の部分とポツンと立っている被写体との差を、茶道の世界でいうところのお茶を一杯いただく前に茶器をグルリと廻して凹凸や焼いた時にできた模様を愛でるような、あの感覚で見方を変えて楽しんでみます。
これも広い画ならではの楽しみ方の1つといえます。ネガティブ(負=何も意味を成さない)・スペースを意識して撮るということも写真撮影の楽しみ方です。
いかがでしたか? 何も考えずにデフォルトでスマホを構えて撮ると、散漫な印象になりがちです。でも、何をどう入れ込んで構図を作るのか? を考えながら画作りをすると、キャンバスの広さのお陰で楽しさは倍増します。これは、スチーム・パンクなイメージでパシャリ♪ では、同じこの立ち位置で離れて撮ってみます。
通行人から歩道の様子まで写り、先ほどとは違ったドキュメント的な1枚となりました。
写真は、このように画角を変えていくことで、同じ場所で撮っていても詰め込める情報量と画像が持つ意味合いが劇的に変わります。
では、また来週をお楽しみに!
Have A Nice Shot!