最近、労働環境が改善しています。
労働環境といっても、オフィスの椅子がよくなったとか、残業が減ってワークライフバランスが良くなったということではありません。むしろ、その辺りは悪化しているかも(笑)。というのは、労働市場が逼迫してきているからです。
求人のタイミング
企業は、景気がよくなって売り上げが伸びてくると、まず今いるスタッフに残業させて生産量を増やそうとします。
それで間に合わなくなると、パートタイムの人を増強して一時的に雇用を増やすようにします。正規労働者はコストが高いうえに、いざ景気が悪化したときにもおいそれとはクビに出来ず、生産縮小のための機動性に欠けるからです。
ただ、パートの増員は人手の増強には役立ちますが、先端的な開発その他のスタッフとしては使いにくいでしょう。その辺の労働力も不足してきたり、パート市場が底をついてくると、仕方がないので正規労働者を増員します。
その辺を確認するために、政府統計をみてみましょう。
この図は、厚生労働省が発表している、有効求人倍率です。季節調整という補正をおこなった数値でみています。
有効求人倍率(出典/厚生労働省)
有効求人倍率は、職安での求人と求職の比率を示したものです。求人が求職を上回ると1を越えてきます。例えばこの数値が2だとすると、二つの会社が一人の求職者を取り合うということになります。それは労働が売り手市場になるということです。
過去、高度成長期の終わり頃や昭和末期のバブル経済の時期を除くと、だいたい上限が1.5くらいであることがわかります。現状で、その上限水準になっています。
では、総務省の労働力調査で公表されている、完全失業率をみてみましょう。
完全失業率(出典/総務省)
日本の失業率は、80年代から徐々に悪化傾向にありました。一時的に2000年のITバブルの頃に下がっていますが、ITバブルの崩壊に合わせるようにまた悪化しています。
これは、労働力人口が増加するなかで、生産のオートメーション化や海外シフトが進んだこと、バブル崩壊後の長いバランスシート調整のなかで人員整理も進み、労働のミスマッチが悪化したことなど様々な理由が考えられます。
さらに、2007年から2008年にかけて「サブプライムショック」「リーマンショック」「ユーロ危機」と続いた世界的な景気後退の悪影響もあり、2011年まで失業率は悪化の一途をたどっています。
それが、2012年になって反転しました。ちょうど、「アベノミクス」の時期と重なっています。
とはいえ、この時期は世界的な金融緩和の影響で、各国景気が持ち直してきた時期でもあり、アベノミクスだけが理由かどうかはわかりません。
労働市場では、それ以前に、構造変化は始まっていました。日本は少子高齢化。労働力人口自体が2006年くらいから減り出しているのです。これは要するに社会全体として人手不足になりがちな状況だということです。
それが、リーマンショックによってマスキングされて目立たなくなっていたところに、景気拡大が起こって、急に人手不足が表面化したという感じです。
常用雇用も含めた有効求人倍率も、バブルの時期を目指す勢いです。人の取り合いが起こりそうです。
ということは。
給料が上がるかもしれません。有利な転職ができるかもしれません。懐が暖かくなれば、消費も伸びるでしょう。それは更に景気の拡大要因になりそうです。
今回は、ちょっと明るいお話でした。