ストレスフリーな人生のための「忘却力」
 
私は昔初めて就職する際、とある中央省庁に入りました。
当時2001年とか、就職氷河期の時代でしたから、国家公務員になることはものすごく難しいことでした。また、年功序列制で、「当然、一生就職した企業に勤めるもの」というのが常識の時代でした。
それなのに私が最初に配属された部署は、毎日朝9時から朝の3時までサービス残業するのが当然の世界でした。つまり、ブラックです。
今から見ると信じられないだろうパワハラがありました。当時のうちの課長がパワハラ気質の人で、私が『科学する麻雀』という本を出版すること(が決まっていたこと)をすごく妬んでいたようで、毎日毎日別室に呼び出されて30分ぐらい「そんな本なんかしてる場合じゃない!」と怒鳴られまくっていたそうです。
 
ここで「そうです」と伝聞形でお話しているのがポイントで、私はそれを一つも記憶してございません。当時上司の係長だった方が、のちに異動した私と同じ部署にたまたま配属された時、「凸くん、あの時は特に大変だったね。課長からずっとずっと叱られて、可哀想だったよ」と言われ、私はそのとき「えっそんなことあったんですか?」と聞き返したのです。つまり私は、その「嫌な記憶」を完全に忘れ去っていたわけです。
言われて初めて、「あ……確かにそういえばそんな記憶もちょっとあるな……」ぐらいに思い出しました。その係長から詳細を聴いて、「そんなことがあったんですね……へええ……」と思いました。

これは嫌なことを忘却する能力だと思っています。
私はこれをすごく訓練しています。
私は思い出してみると、小中高時代には、結構嫌な思いをしたと思うんです。もちろん、覚えているものも結構あります。一部の女子からすごく嫌われたとか、時には仲間外れにされたとか。また、大学時代は自分の麻雀の研究が認められず、教授がすごい私のことをしかったりしたような記憶がちょっとあります。