『とてつもない可能性とオリジナリティに満ちた、全く新しい存在』・・・

1987年当時に僕がそれを希求していた理由は、やはり現状打破への強い想いだったと思う。

音楽シーンの中で、自分がどのような役割を果たしていくのか、まだ漠然としてはいたけれど、欧米のシーンと比べてモノマネ程度のレベルの低い作品がまかり通る現状を、自分の力で打破していきたい、という想いだけはとても強かった。

当時の僕がその想いを実現できる一番良い方法は、過去にはない、全く新しいものを創り出していく素晴らしいアーティストに出会うことだった。




面白いことに、音楽業界に携わる人達が新人アーティストと接する場面では皆、僕と同じことを口にしていた。

例えばコンテストやオーディションなどの審査員は、大抵「一番大切なのは、オリジナリティなんですよね」といった発言をする。あるいは「完成度は求めていませんよ。荒削りで良いので、その人にしかない何かが欲しいですよね」などと語る・・・。

ところが実際に受賞アーティストを選んだり、合格の決定を下したりする際になると、その一番大切であったはずのオリジナリティはどこかへ消えてしまい、一般的な実力やテクニックなどが、評価されていく。

僕は当時、ソニーミュージックの新人発掘を一手に担う仕事をしていたから、様々なコンテストやオーディションに顔を出していた。