1987年の晩秋。

Xという可能性の塊のようなバンドに対して、僕が最初に「イメージ力」を正しく使ったのは、初めてリーダーのYOSHIKIと2人で会い、会話をした時だった。




今でもそうだけれど、僕は大切な打ち合わせをする時、実際に話す瞬間まで、あまり細かい準備をしないことが多い。

大切であればある程、その傾向が強くなる。

打ち合わせする相手の想いや、その打ち合わせの瞬間に生まれるエネルギーなどを最大限引き出すためには、準備よりもその時に生まれるインスピレーションの方が大事だ、と知っているからだ。

準備可能な考えや情報・知識などよりも、本能や直感、そして潜在意識などの方が、ずっと力を持っている・・・そんな真実を、当時の僕はエレファントカシマシとの出会いを始めとするいくつかの大切な経験から、既に会得していた。

だからこの時も、僕はやはりそう考えて打ち合わせに臨んだ。

現段階でのバンドの細かい情報などを特別調べることもなく、また、その頃の僕がXというバンドをどう捉えているのかを整理したりまとめたりすることもせず、ただひたすら感覚だけを研ぎすませて、YOSHIKIが現れるのを待っていた。